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グリモワール(Grimoire)

腹の探りもわーる
グリモワール
グリモワールとはフランス語で魔法の本のことである。このゲームでは、その名の通り小冊子にしおりをはさんで魔法を選び、勝利点につながる仲間や財宝を集める。画期的なギミックがしびれる。
最初に使える魔法は6つ。場札を交換できるもの、勝利点チップを得るもの、それを妨害するもの、誰かから奪うもの、それを防御するものなど、ほかの人が選んだ魔法次第で効果が変わる。これがラウンドごとに1つずつ後のページにある魔法も使えるようになって、最終的にその数は15に。後半に登場する魔法ほど効果が強くて、成長の楽しみがある。
全員がしおりをはさんで選んだら、一斉にオープン。バッティングしていない人の中で、魔法の番号が小さい人(効果が小さい人)から手番を行う。魔法を使ってから、場札を1枚取る。場札は仲間や財宝で、先手番ほど選択肢が多い。バッティングした人は後回し。
財宝はそのまま勝利点になるが、仲間は条件(手番が最初とか最後とか、財宝を全種類集めたらとか、勝利点チップを5枚集めたらとか)を満たしたときのみ勝利点になるリスクの高いカード。リスクが高い分、同じカードを2枚、3枚と集めて条件を満たせば爆発力がある。
場札とは別に、魔法の効果で取れるアイテムカードがある。ガラクタがたくさん入っているが、これもほかの人より多く集めればボーナス。ガラクタ集めはひそかな戦いだ。
財宝か仲間を誰かが10枚集めたらゲーム終了。でも10枚集めた人が勝つとは限らない。
お互いけん制が続いていたが、karokuさんが最強の魔法「奇跡の魔法」(捨て札から1度に3枚ゲット)を通して一気にリード。私は勝利点チップを奪われるのが惜しくて防御の魔法を繰り返していたのが敗因となった。
お互いの状況を見て「今攻撃してきそうだから防御しよう」とか、「ほかにやりたいことがありそうだから別の魔法でいこう」といった魔法の選択が悩ましい。一斉にオープンしたとき、裏をかいた魔法が成功すると嬉しい。これは昨年ワンドローが出した『よくばりキングダム』にも通じる複雑なじゃんけんだが、2人専用だったものが、4人まで遊べるようになって面白さは倍増したように思う。今年のゲームマーケットを代表する作品のひとつだ。
グリモワール
木皿儀隼一作/ワンドロー(2010年)
2〜4人用/10歳以上/15〜30分
ワンドロー:グリモワール

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ドイツの個人出版社

ドイツでは1人でゲームを作っていても、儲けが全然なくても、コンポーネントがチープでも、同人ではなく「出版社(Verlag)」を名乗る。そんな「小出版社」、「個人出版社」から、メジャーには及びもつかない傑作が生まれ、ドイツゲームが世界から注目され続ける。そんな小さなメーカーの話をドイツの記事から訳出。
ベルネの個人出版社のゲーム
アドホックニュース、5月19日)
ルックアウトゲームズの所在地は、ヴェーザー湿地帯ベルネ(訳者注:北ドイツ・ブレーメン近郊の街)にある田園の農家である。牧草地に囲まれ、草を食べるヒツジを見ると『アグリコラ』(ラテン語・農業)の景色が思い浮かぶ。『アグリコラ』は10万セット売れたボードゲームで、このゲームのおかげで、ハンノ・ギルケ氏が個人で経営する出版社は世界中のボードゲームファンから高い評価を得ている。
今年、この小出版社は10歳になる。この記念すべき年に10タイトルを発表したいとギルケ氏。
「私はゲームを作るのが好きです」と言う38歳の社長は、自分よりもっとすごい人がいると明かす。彼の大学の友達で、2008年にドイツゲーム賞を受賞した『アグリコラ』の作者ウヴェ・ローゼンベルク氏である。「その代わり私は別のことならうまくやれます」と統計学者でもあるギルケ氏は自信を見せる。早くからマーケットリサーチや、アメリカのゲームの翻訳の仕事に携わってきた。
ギルケ氏は短パンをはいてデスクに座っている。小さい事務所は原材料、ゲームボード、コマでいっぱいの箱で埋め尽くされている。彼の後ろの棚はゲームが並ぶ。会社を立ち上げた頃、まず作っていたのはカードゲーム、拡張、既に発売されたゲームの再版ばかりだった。2004年に最初のボードゲームを発売したのが、驚くほどの成功だったという。「その売り上げで次のゲームの資金が調達できました。」と二児の父親でもあるギルケ氏。これがなかったら、この小出版社はきっと、ガレージの趣味のままだったと、コンスタンツ出身のギルケ氏は振り返る。
これまでにギルケ氏は30タイトル以上を出版した。リビングのテーブルで思いついたアイデアがものになるまで、1年ぐらいかかるという。「1つのボードゲームを考えるとき、頭の中で1ラウンドやってみます」と社長であり編集者でもあるギルケ氏は作り方を説明する。うまく回ると思ったら、家族や友達と試す。それからイラスト、コンポーネント、ルールなど実際の仕事を始めるという。「デザイナーは知性、編集者は思慮が大事です」とギルケ氏。印刷は有名なボードゲームメーカー、販売は大きなディーラーに委託している。
この出版社はニッチ市場をターゲットにする。戦略ボードゲームは、遊ぶ頻度が高いコレクター向けである。「だいたい30歳以上の独身男性です。」でも子供の頃よく遊んで、しばらくのブランクを経て、彼女や子供たちとまた始めたという人もターゲットにしたいという。しかし愛好者はダイス運を好まない。出版社の歴史上、ダイスのあるゲームを作ったことはない。「ダイスの運は強すぎます」とギルケ氏。ルックアウトゲームズが目指すのは、幸福を自分で作り出すようなゲームだ。
「小出版社はスープの中の塩です」とエッセンで世界一の国際ゲーム祭を毎年開催しているドミニク・メツラー氏は言う。このゲーム祭は、市場が動き続けるのに役立ってきた。難易度の高い戦略ボードゲームはたいてい、大出版社の「ファミリー向きで遊びやすい」というプログラムにはそぐわない。メツラー氏によると、ドイツには700以上のボードゲーム出版社があり、これほど多いのは世界に類を見ない。そしてその半分はハンノ・ギルケ氏のようなミニ出版社だ。
「ボードゲームは前よりも遊ばれるようになりました」とメツラー氏。ボードゲームは誰であっても直接的なコミュニケーションを促すという。1日中コンピューターの前に座っている人が増えているから、晩には気晴らしがほしくなる。そこで子供と一緒に何か教育的なことをしたいと考える親が増える。
それでもギルケ氏には批判したいことが1点ある。彼が怒っているのは「ボードゲームが文化財として政治の場や文化欄で取り上げられないこと」である。「文化欄は異端の中国人が書いた三流の本やひどい映画ばかり。なのに、成功したボードゲームが無視されている。」