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ルールもレビューくらい一般的な言葉で

マックス・ウェーバーの『プロスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の新訳が出た。出版社である日経BP社の編集委員は「学者の翻訳は学問的な正確さを期すが、日本語としてはいかがか。今日の翻訳技術は格段に進歩しています。」新訳には専門領域にも詳しく、複数言語に通じ、なによりも日本語として伝わる翻訳ができる在野の実力者を選んだという(朝日新聞1/31朝刊読書欄)。哲学文献の翻訳でも、ドイツ語ルールの翻訳でも思い当たる節がたくさんある。
欲を言えば単語の一対一対応にこだわらずこなれた訳をめざしたいが、分かりやすい訳語の選択も重要な要素。学者は正確さを期すあまり、わざと一般的でない言葉を使ったり、ときには造語までしたくなる。そのため一般の人が読むと、てにをは以外全然分からないなどということも。学術論文ならそれでよいが、一般の目に触れる本ではそうはいかない。
ゆうもあのレビューでは「プレイヤー」という言葉が一般には分かりづらい専門用語として使わないことになっている。ほかにも使わないことになっている言葉として「ターン」「フェイズ」「ラウンド」「プレイ」「ドロー」「ディーラー」「デッキ」「トリック」などがある。多くの人に読んでもらうため、よい方針だと思う。
私は日本語ルール制作でも同じことを心がけていて、ラウンドとフェイズは適切な訳語が思い浮かばないのでそのまま使っているが、プレイヤー→人、ターン→手番(ワレスのゲームではラウンド)、プレイ→出す、ドロー→引くなどと日本語にしている。「シャッフル」はハサミをもってくる人がいるといけないので「混ぜる」。
しかし、レビューではあまり問題にならないが、厳密さが問われるルールでは困ることもある。プレイヤーが、ゲーム中に何か人間を複数担当している場合がそうだ(例えば『アグリコラ』)。その人間コマなのか、その人間コマを担当しているプレイヤーなのかはっきりさせなければならない。
そのためレビューでは「一番お金を儲けた人が勝ちです」が分かりやすくて望ましいが、ルールでは「一番お金を儲けたプレイヤーが勝ちです」と書かなければいけないことも。そう見ていくとプレイヤーと人の区別が必要になり、全てプレイヤーで統一することになる。
また複数の人間を担当しないゲームでも、表現上「各プレイヤーは」を「各人は」というのもしっくりこないので、「プレイヤー」はなくしづらい。
アマゾンの『ニムト』のレビューに「何回か読んでいたけど、やはりルールが理解できず遊ばずやめてしまった。説明不足すぎる。もう少しわかるように書けと言いたくなった。」というのがある。実際『ニムト』は説明しにくいところがあるが、愛好者には当たり前に思える言葉が、一般には通じないことを十分に念頭に置いておきたい。

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ドイツメーカーの改編相次ぐ

ドイツのボードゲームサイト、シュピールボックス・オンラインによると、ツォッホ出版がジンバ・トイズグループに買収され、同社のノリス傘下に入った。また、アミーゴ社とエッガート社が業務提携し、共同販売していくことになった。
ツォッホ出版はミュンヘンのメーカーで『ヴィラ・パレッティ』『ナイアガラ』など豪華コンポーネントで知られる。年間売り上げは300万ユーロ(約4億円)で、買収したジンバ・トイズは5億ユーロ(約650億円)だという。ジンバ・トイズにはノリスとゴルトジーバーのレーベルを保有しているが、ここ数年ヒット作に恵まれておらず、ツォッホ出版の企画力に期待しているようだ。ツォッホ出版のオフィスはミュンヘンのまま変わらない。
エッガート社は大人向けの重量級ゲームを手がけており、これまで販売はフッフ・フレンズ社で行っていた。アミーゴとの提携により、アミーゴの販売網を利用できるだけでなく、エッガート社の開発にアミーゴ社のノウハウを取り入れ、ライト路線も視野に入れる。
ドイツの中堅メーカーでは、ハンス・イム・グリュック出版・ドライマギア社・アドルング社がシュミット社から、そのほかの小メーカーはハイデルベルガー社から販売している。そのほか海外のメーカーのドイツ語版を手がけるフッフ・フレンズ社があり、企業連合や業務提携で効率化を進めている。
ドイツゲーム市場は子供ゲームが活発で、ドイツ・ボードゲーム専門委員会によると2009年の売上は前年比30%増となっている。上記の買収や業務提携は、各社の子供ゲームへのてこ入れの一端と見られる。
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