キングダム(Kingdom)
弱くても諦めないで
ファンタジー世界を回りながら武器や防具を揃え、魔王を退治する冒険カードゲーム。1月20日に発売された『ゲームリンク』第2号の付録である。前号の付録となった川崎晋氏の『マーチャント・ギルド』と同様、単体で販売されていてもおかしくない完成度の高さである。
今回のデザイナーは『ゲームリンク』の編集長でもある池田康隆氏。『シャドウハンターズ』(2005)などで知られるが、このゲームも、バラエティに富んだキャラクターの特殊能力が楽しめるようになっている。2007年のゲームマーケットに出展された試作品『ヒーローズ・クエスト』が元になっているようなので、3年近く温めておいた作品ということになる。
はじめに「主人公カード」を1枚ずつもち、キャラクターの特殊能力が記されている。今回私が引いたのは「亡国のプリンセス」。勝利条件が緩い分、戦闘ではまず勝てない設定になっている。弱いだけでなく、神尾さんの「妖艶な踊り子」で、他の人の街に止まるたび、お金を横取りできるという能力のために貧乏だった。主人公カードは12枚入っており、組み合わせによって展開がだいぶ変わる。
ゲームは環状になったルートを回り、街で買い物をしたり、森や湖でモンスターと戦ったり、イベントを乗り越えたりして、お金を貯め、戦闘力を上げて魔王を倒すというもの。移動や戦闘は8面ダイス2個を振り(または袋からチップ2枚を引き)、好きなほうの数を使う。かつて翔企画やホビージャパンなどからこの手のカードゲームがいろいろ出ており、「懐かしいね」という声も聞かれた。
でもあれから20年、ゲームは確実に進化している。キャラクターの特殊能力だけでなく、勝利条件が3つあることで、展開に多様性が生まれ、誰も脱落しないで楽しめるようになっている。勝利条件は、魔王を倒す、紋章を集める、お金を集めるの3つで、それぞれの特殊能力に応じた戦い方ができる。
私の「亡国のプリンセス」は弱くて貧乏だったが、冒険中に紋章を1枚拾い、さらにイベントでほかの人の手札を奪えるというのが出て、2枚目もゲット。強い武器で魔王を確実に倒せるくらいにまでなったくさのまさん、お金をどんどん集める神尾さんを尻目に、一気に勝利を掴んだ。
スキルという要素もあり、イベントなどで効果を発揮することもある。くさのまさんの「慈愛のシスター」が博打や残虐など、もとのキャラクターとはかけ離れたスキルを身につけていて笑った。
勝敗もさることながら、キャラクターも楽しめるのが日本のゲームの特徴だろう。何人かのイラストレーターによるイラストも見事な『キングダム』は、日本ゲームの伝統を踏襲しながらも、強弱のバランスや展開の多様性も併せ持ったオリジナル作品である。
Kingdom
池田康隆/シュート・ザ・ムーン(2010年)
2〜5人用/10歳以上/45分
『サムライ・カードゲーム』日本語版
ホビージャパンは1月26日、日本の中世をテーマにしたカードゲーム『サムライ・カードゲーム』の日本語版を発売した。2〜4人用、12歳以上、60分、3,150円。
『サムライ・カードゲーム』は、日本にも根強いファンのいるR.クニツィアがデザインしたゲーム。1998年にドイツで発売され、ドイツゲーム賞4位などを獲得した陣取りゲーム『サムライ』に基づいている。アメリカのリオグランデ社による英語版が昨年発売され、ドイツ語版はまだ発売されていない。
ゲームは場に配置された村カードへの自分の影響力を競って、兜や田畑や仏像を獲得していく。農民や僧侶や貴族たちは、サムライにとって重要な力の源となり、名誉と尊敬に値する。プレイヤーはこれらの階級の1つから支援を受けながらも、他の2つの階級とも強力な協力関係を結ばなければならない。勝利するためには、プレイヤーがサムライの伝統に従っていくことが要求される。
カードやマーカーは言語依存がないが、箱とルールが日本語化されており、変わった和風テイストが楽しめる。
このゲームは昨年秋にボードゲーム輸入卸のニューゲームズオーダー(東京・立川)がリオグランデ版に日本語ルールを添付して販売していたが、別ルートのクニツィアゲームズから日本語版制作を決定したホビージャパンとバッティングし、これを機に手分けの協議が行われた経緯がある。英語版はすでに国内販売されており、遊んだ人たちのレポートを読むこともできる。
・ホビージャパン:サムライ・カードゲーム
・B2F Games:サムライカードをきっかけに。
・ふうかのボードゲーム日記:サムライ・カードゲーム
・遊星からのフリーキック:サムライ・カードゲーム