ルプスブルク(Lupusburg)
村人の思惑も絡み合い
『タブラの狼(汝は人狼なりや?)』は傑作コミュニケーションゲームだが、9人以上でないと遊べない。仙台・遊友会のように毎回恒例になっているところは少なく、遊びたいけど遊べないという人も多いのではないだろうか。そんな望みを叶えてくれるのがこの作品。4人いれば遊ぶことができる。
まず、ゲームマスターはいない。合図をする人はいるが、狼の犠牲になる村人は、テーブル中央にある狼の指タイルで指される。目を閉じている間に、テーブルに円形に並んだ村人カードのどこかを指しているのだ。この静かな仕掛けが恐怖感を出していてなかなかよい。
それから、各プレイヤーは2人の村人を担当する。6人で遊ぶなら12人の村人が登場するというわけだ。村人が住んでいる家は金庫ありとなしのどちらかで、人狼は必ず金庫なしの家に住んでいる。これが推理の手がかりになる。
家に金庫があるかどうかを調べるのは「泥棒」という職業だ。皆が目を閉じている間、狼が指す前に、泥棒はどこかの金庫をそっと見る。ここで得られた情報が、村人の相談で生かされることになる。このゲームでは、人狼と泥棒のほかは普通の村人しかいない。
そしてリンチは2段階選抜で、相談の後でチップを1枚ずつ置いて投票し、上位2位を決選投票にかける。誰がどこに投票したのかも、推理のヒントになるだろう。ほかに、親は誰かの村人を1枚見せてもらえる。これで少しずつ情報が絞られていく。なお、このゲームに脱落はない。村人を2人とも殺されても、人狼を予想し、投票に参加できる。
このような変更点のほかに、新たな要素も付け加えられている。それは、人狼が退治されて村人が勝ったとき、プレイヤーごとに与えられる勝利点である。どちらも村人のプレイヤーは、人狼探しと同時に、自分の勝利点を上げる努力をしておかなくてはならない。
1つは、どのプレイヤーが人狼をもっているかという予想。先にすればするほど得点が高い。でも手がかりが少ないから外れる可能性もある。もう1つは、ゲームの最初に配られる秘密の得点条件。中には村人が死ねば死ぬほど得点が高いというのもあって、人狼の味方になりたい村人も出てくる。これらの勝利点が絡むことで、人狼の割り出しも一筋縄ではいかない。
6人でプレイ。人狼はたった1匹である。今回の人狼は残虐で、容赦なく2人目の村人も殺してしまう。泥棒だった私は2人まで絞り込んだが、明言すると殺されてしまうのと、勝利点に走ったりしたことで人狼退治が遅れてしまう。予想チップの置き方でぽちょむきんすたーさんだと気付いたときには手遅れだった。人狼勝利。実はくさのまさんが最初に人狼を見つけ、口封じに殺されていたのだが、気付くことができなかった。
『タブラの狼』を少人数でも遊べるようにしたというだけでなく、勝利点という要素を加えることで、人狼の推理以外にさまざまな思惑が絡み合んで面白い。目を開けたら狼の指タイルがこちらを向いていたときのショックといったら、『タブラの狼』でも味わえないスリルがある。
Lupusburg
D.ジョルジオ/dVゲームズ(2008年)
4〜8人以上/8歳以上/20分
ゲームストアバネスト:ルプスブルク
プレイスペース広島:ルプスブルク
Family Games: The 100 Best
グリーン・ローニン社(米)は1月15日、英語のボードゲーム紹介本”Family Games: The 100 Best”を発売した。24.95ドル。
2007年に同社から発売された”Hobby Games: The 100 Best“の続編で、有名デザイナーやメーカー社長が思い入れの深いゲームについて寄稿したエッセイをまとめたもの。今回はA.R.ムーン、R.ガーフィールド、L.コロヴィーニ、J.アーネスト、R.ブリーズ、M.リーコックなどが執筆している。
モノクロで写真もないペーパーバックだが、その分安価で、400ページという分量で読み応えがありそう。
・Green Ronin Publishing:Family Games: The 100 Best