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ゲームマーケット2019秋レポート(2):注目のボードゲーム

前回の続き。ゲームマーケット大賞の終了に伴い、今回から新作ゲームリストは作成されなくなったが、出展ブース数から推定して、600タイトル以上の新作が発表されたと見られる。限られた時間の中で全てを見ることはできなかったが、その中からいくつかをピックアップ。


ゲームマーケット2019春に発表された「Kaiju on Earth」シリーズの第1作『ボルカルス(Vulcanus)』。溶岩を撒き散らしながら東京に襲いかかる怪獣を、協力して撃退する。怪獣役が1人おり、人間側のプレイヤーの相談は全て筒抜け。しかもアクション選択は砂時計の制限時間があり、思うように行かないところがリアルだ。ゲームマーケット当日は予約販売分のみで、一般発売は28日。先行予約を受け付けたクラウドファンディングでは、1167人が7,087,400円を出資し、注目されていることが分かる。前日ゲーム会でプレイできたので後日レビュー予定。
KAIJU ON THE EARTHシリーズ第1弾『ボルカルス』11月28日発売
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オインクゲームズの新作『ファフニル(Fafnir)』。握り競りで価値の高い宝石を集める。競りに使うのも宝石なので、宝石の数は増減するが、種類別にいくつ皆が持っているかによって価値が変動する。マイナスになりそうな宝石を出していきたいところだが、そう考えているのは皆も同じ。オインクゲームズはライトユーザー向けのラインナップだが、ゲーマーも楽しめるレンジの広い作品だ。
宝石で宝石を競る『ファフニル』11月23日発売
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Saashi&Saashiの『旅のあと(Remember Our Trip)』は、旅行で訪れた京都/シンガポールを振り返り、みんなで共通の思い出マップを作っていくゲーム。ランダムに組み合わせられたプレイヤー人数分のチップを選んで、カードに指定されたパターンで自分のボードに配置する。同じ種類のチップがまとまるとロケーションが確定し、中央のボードに建物や公園が置かれる。確定したロケーションと同じ場所にあるチップが得点。『オールドタウン』を想起させるロマンチックな作品だ。
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行商の時代(The Era of Traveling Marchant)』は、『航海の時代 』『狩猟の時代 』で高い評価を受けた
A.I.Lab.遊の最新作。ボード上をアクションポイントで移動して品物を集め、カードで指定された都市に届ける。届けられた品物はその都市に置かれ、ほかのプレイヤーが再利用できる。これが先の先を読んだアクションを可能にする。ボードの配置でマップを変えられるところも面白い。
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orchard ocean -海上果樹園-』は『airship city -飛行船都市-』に続くアナログランチボックスの新作。エッセン・シュピールにもヤポンブランドを通して出展された。海の上に人工島を浮かべて果樹園を作るというファンタジックなテーマと裏腹に、さまざまな得点方法があるシビアなタイル配置ゲームだ。手番順、タイルを置く方向、そして果樹園などがある島タイルを順番に取り、島タイルを自分のプレイヤーボードに配置する。島タイルから生産された果樹や魚は、販売するタイルを隣接させることで収入が入るようになる。複数の生産島と販売島をうまくつなげられるか、さらに労働者をどのように振り分けるかも考えなければならない。
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ワンモアゲーム!の『SCOUT!』は今回のゲームマーケット最大の目玉と言ってよいだろう。11月初旬に開催された先行体験会「フォアシュピール」で話題となり、ボードゲームポッドキャスト「ほらボド!」でも大きく取り上げられた。手札をはやくなくすことを目指すゲームで、順番を並び替えられないところは『シリメツレツ』と同じだが、1枚のカードが方向によって数字が変わるところと、前の人がプレイしたカードから手札に差し込める「スカウト」が新機軸だ。
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シブヤストラグル(Shibuya Struggle)』はディライトワークスの新作で、カナイセイジ氏と白坂翔氏が監修した。ギャングを並んだタイルに配置して陣取りをし、その特殊効果でパワーアップして「四天王」に挑戦。勝利すればさらに能力を上げて「KING」と戦う。
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ユーロゲーム系統で頭角を表している四等星。新作の『サン・ドニ(Porte Saint Denis)』は、パリの凱旋門で影響力を上げ、建物を建設して得点を競う拡大再生産の四人専用のワーカープレイスメントゲーム。『REFINERY』は石油王となって建物効果を使って石油を精製し、富を競う三人専用のリソースマネージメントゲーム。
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するめデイズの『プラネットプラント(Planet Plant)』は、小さな星で不思議な花を育てるカードコンボゲーム。苗を買って3ターンかけて水をやり、花が咲いたら効果が使える。この時間差をよく考えて花同士を組み合わせ、得点に結びつける。
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すべてが登米になる』は、『ハンザの女王』で世界デビューを果たしたゆるあーとの新作。平成の市町村大合併をテーマにしたエリアマジョリティで、エリアが連結することで勢力図が変わっていく。
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オーテマチスピンの『ブラウメア』は、絵のイメージを擬音や図形で伝えてペアを作るコミュニケーションゲーム。ペアを作らせないように妨害する裏切り者がプレイヤーの中に潜んでおり、早く見つけ出さなければならない。
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サークル「ちょっとずつ違う」の『1ミリ感覚』は、1mmずつ違うカードが並んでいる中で、今あるカードより1mmだけ大きいカードを探す。『いろ感覚』はパーセンテージで違う色を見分ける。
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さまざまなアイデア商品を手掛ける「ドリーム」の『グララ(Gulala)』。ぐらぐらの台の上にダイスで指定された積み木を積み重ねていって崩したら負けるバランスゲーム。
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フサフサクセス』(アクサン・シルコンフレックス)は、抜け毛カードでお題を表現して当ててもらう。抜け毛だけにカードが少なくなり、お題の表現はどんどん困難になっていく。
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爽快感』(ピルグらイム)はカード同時出しでウンコをトイレに流すゲーム。うまく流せるとカードを裏返し、「超」「爽」「快」「感」の役ができると得点が入るが、「不」「快」「感」だとマイナスになってしまう。
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うんこかとおもった』(北海道情報大学森川ゼミ)は、紛らわしいカードをめくってウンコかウンコでないかを判定するリアクションゲーム。
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今回で最後となるゲームマーケット大賞関連では、大賞を受賞した『FOGSITE』(SolunarG)、キッズゲーム賞の『ポラリッチ』(daitai)が販売されたがほどなく売り切れ。『横浜紳商伝デュエル』(OKAZU Brand)はもう在庫切れだが、英語版”Yokohama Duel”がキックスターターで製品化されることになっている。
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昨年のゲームマーケット大賞『天下鳴動』(77spiele)は、ホビージャパンから一般発売され、試遊が行われていた。
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最後に、このたび『セネターズ』日本語版をリリースしたニューゲームズオーダー/B2Fゲームズの吉田氏のお話が印象深かったので記載しておく。45~60分のミドル級作品ながら、目立った受賞歴もない『セネターズ』を日本語版にしたのは、昨今の長時間ゲーム偏向に対して、「長いことには理由がなきゃいけない」という。深いゲーム体験という視点で見たとき、ライトゲームといわれるものにもそれはあるし、長時間ゲームでもただルールをなぞっているだけではそこまで行き着くことはできない。それを考えたとき、適度なプレイ時間で深いゲーム体験ができるということはメリットのあることだ。今回のゲームマーケットでも、そのような深い体験ができる作品がいくつもリリースされている。あとはプレイヤーがどのように楽しむかだ。
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ゲームマーケット2019秋レポート

晩秋の冷たい雨が降る11月23日、東京ビッグサイト青海展示棟にて、ゲームマーケット2019秋が開幕した。東京オリンピックの開催の関係で仮設された23,240㎡の会場に、2日間合計で1063ブースで、600タイトル以上の国産新作ボードゲームが発表された。
1日目、雨にもかかわらず10時の開場時には約4000人が待機列を形成していたと見られる(Raelさん調べ)。今回は2つのホールの間から好きな方に入場できる仕組みが取られた。左のAホールはエリア・企業ブース、右のBホールは一般ブースという配置である。
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開幕一番人気は『まじかる☆ベーカリー』シリーズのMAGI。複数レジにもかかわらず行列ができた。前回に引き続きリバーシブルのバッグを無料配布。
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ゲームストア・バネストは先月に行われたエッセン・シュピールの新作を用意。特に『オルレアン・ストーリーズ』(3kg、16000円)は各プレイヤーがもつ小冊子まで日本語訳で用意された。
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ジーピーでも先月のエッセン・シュピールで発表されたばかりの『カタン 宇宙開拓編』(2kg、13200円)日本語版を間に合わせた。『オルレアン・ストーリーズ』に勝るとも劣らない大箱だが、早朝から並んでこの2つを購入した猛者もいた。
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数奇ゲームズはエッセン・シュピールの新作『テラマラ』と『アクアティカ』を日本語訳付きで、さらにブルクハルトのトリックテイキングゲーム『命中』のリメイク『地下迷宮と5つの部族』を販売。
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テンデイズゲームズは今回久しぶりに出展しなかったが、エッセン・シュピールの新作『バラージ』の日本語版はイエローサブマリンで販売された。
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今回はあちこちでマーダーミステリーの新作が見られた。スモール出版ではブームのきっかけとなったといわれる『死神は白衣をまとう(Death Wears White)』の日本語版を用意。モアイデアスでは朱鷺田祐介氏が来春発表する『加速する闇』の登場人物が発表された。
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スモール出版の『すばらしきパーティジョイの世界』(坂本犬之助+オフィス新大陸)は、シリーズ135作を網羅
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『加速する闇』の登場人物と朱鷺田氏
各ブースでは販売だけでなく、さまざまな展示やイベントが見られた。日本の代表的なボードゲーム印刷会社である萬印堂では、カードを切断する抜き型を展示。刃の周りにスポンジを付けて、押し込んだ後戻りやすくする。
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クラウンドファンディングのキックスターターでは、製作者支援として動画撮影サービスを展開。本格的な機材で撮影。
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台湾や韓国からの出展も年々増加する中、小僧ゲームズは中国・台湾・シンガポールのボードゲームを、Grain Gear Gamesはベトナムとミャンマーのボードゲームを販売した。出展者だけでなく来場者にも海外の人が目立ち、各ブースでは英語でゲームを説明している姿も見られた。
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『平遥』『海洋公園』(中国・静言思桌游)は最近日本で人気が高まっている
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『ホイアン』はベトナム、『バガンジャーニー』はミャンマーのボードゲーム
出版社を前に製作者がプレゼンする「ボドコン!」(主催・ボドゲーマ)は、3分という制限時間でゲームを紹介した後、興味のある出版社が手を挙げる。
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プレゼンしたのはA.I.Lab遊、青春工房白百合、ノンプロ、Studio GG、SolunarG。SolunarGの『FOGSITE』はゲームマーケット大賞を獲得したこともあって8社中6社が手を挙げた
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出版社側は奥からアークライト、Engames、Jelly Jelly Cafe、すごろくや、ディアシュピール、テンデイズゲームズ、ホビージャパン、やのまん
JELLY JELLY CAFEのブースでは今回もイベントを開催。昨年行われた「これはゲームなのか?展」についてニルギリ氏(するめデイズ)が解説したり、先月のエッセン・シュピール参加者がおすすめの観光スポットを紹介したりした。
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「これはゲームなのか?展2」は来月7日から15日まで3331アーツ千代田にて
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畑氏(クレーブラット)が紹介した観光スポットに苦笑する参加者たち
ディライトワークスでは新作『シブヤ ストラグル』についてカナイセイジ氏と白坂翔氏がトークショー。「よっしゃ!とこぶしを握って喜べるような”よっしゃポイント”がちりばめられたゲーム」(カナイ氏)だという。
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フードコートでは今回初めて、ラーメンWalkerとのタイアップで2つのラーメン店が出店。ホール中にいい匂いが漂っていた。
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魂麺の「みそ魂麺」を辛味噌付きで。麺や七彩の「手もみ吟醸醤油ラーメン」も捨てがたかった
注目のゲームについては明日のエントリーで。