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最も不幸な一族になりたい!『グルーム』日本語版、4月25日発売

ホビーベース・イエローサブマリンは4月25日、カードゲーム『Gloom(グルーム)―不幸な物語と悲惨な結末―』日本語版を発売する。ゲームデザイン・K.ベイカー、イラスト・M.ネフュー&J.S.リーヴス、2~5人用、13歳以上、60分、3600円(税別)。
オリジナルはアトラスゲームズ(アメリカ)から2004年に発売された作品。今回の日本語版は2014年の第二版に基づく。ほかにクトゥルフ、フェアリーテール、マンチキン、宇宙版も発売されている。社会に適応できず人間嫌いな一族のキャラクターが死亡するまで、できるだけ多くの悲劇を味わわせることを目指すマゾヒスティックなカードゲームだ。
透明なプラスチック製カードを使用し、キャラクターカードに、不幸度が記載された運命カードを重ねていく。上から見えている数値の合計が、そのキャラクターの不幸度になる。ほどよく不幸度が溜まったところで、「時ならぬ死カード」でキャラクターを死亡させ、不幸度を確定させる。
一方、他の一族のキャラクターには幸せで健康的で退屈な人生を送らせる。誰かの操るすべての一族が死亡した時点で、自分の操る一族の不幸度がもっとも高いプレイヤーが勝利。
一風変わったルールと、芸術性の高い古色蒼然としたアートが織りなす独特な世界観が魅力のゲームだ。

(写真は英語版)

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『パンデミック』デザイナーがNYタイムズ寄稿

ボードゲーム『パンデミック』のデザイナー、マット・リーコック氏がニューヨークタイムズ(2020年3月25日)に投稿したオピニオンを翻訳。


オピニオン
プレイヤー1人だけでこのボードゲームに勝つことはできない。それが『パンデミック』である。
私はみんなが一緒に遊ぶことを奨めるためにある協力ゲームを作った。Covid-19はこれまで以上に関連性が高まっている。
妻のドナと私の生活は、2月下旬に緊急事態となった。彼女の調子が悪く、インフルエンザの症状を発症したのに、4週間にわたってコロナウイルスの検査を受けることができなかったのである。結局検査を受けて、陰性だったときはほっとした。
しかし、このことはいくつかの意味で私に関わることだと感じた。ドナは2008年に発売されたボードゲーム『パンデミック』を発案し、私は彼女と遊ぶためにゲームをデザインしていたのである。
私たちは新婚時代、あらゆる種類のゲームを一緒にプレイした。うまくいったものもあれば、そうでないものもあった。特に悲惨な交渉ゲームを思い出す。私の心理的操作、執拗な競争、プレイ中の裏切りが感情が現実世界につながり、私たちの関係を悪化させた。
初めて協力ゲームを一緒にプレイしたとき、私たちは著しく異なる体験をした。課題は共有されることでいっそうエキサイティングになる。勝ったか負けたかに関係なく、私たちは一緒に行動でき、二人ともゲームを楽しんだ。
それを念頭に置いて、2004年に最初の協力ゲームのデザインを始めた。その頃SARSの流行が起こり、ウイルスはプレイヤーが直面する完璧な敵対勢力になると思った。ウイルスは容赦なく、執拗で恐ろしいものである。
私は、ゲームボード、カードのデッキ、木製のキューブを使って、ウイルスの行動の簡単なモデルを作り始めた。
その結果が『パンデミック』である。このゲームでは、4つの致命的な病気から人類を救うため、全てのプレイヤーが協力する。皆が順番に世界中を飛び回り、短期的脅威への対処として感染集団を治療し、長期目標として治療法が発見されるまで時間稼ぎをする。
各プレイヤーは異なる役割を受け持ち、独自のスキルを持っている。感染症の治療に熟練した医者や、治療法の開発のために重要な知識を共有するべく世界を駆け巡る研究者、他の専門家が都市間を移動するのを助ける通信指令員などになる。
プレイヤーは、必要に応じてお互いを理解し、承認し、挑戦できるように、自分の考えを明確かつ効果的に伝えなければならない。病気の蔓延を遅らせるのに最も効果的になるよう、計画を調整しなければならない。何よりも、協力しなければならない。プレイヤー1人だけでゲームに勝つことはできない。
『パンデミック』が発売されたとき、協力ゲームはほとんど存在しなかった。協力ゲームの人気が高まるにつれ、協力ゲームが流行するまでなぜこんなに長い時間がかかったのか疑問に思った。最近まで私たちが、なぜゲームと競争が同義であると考えていたのかも。
現在の状況を考えると、『パンデミック』いうゲームが人気があるのは驚くことではない。ソーシャルメディアの投稿を見ると、『パンデミック』をプレイしたり、『コンテイジョン』のような災害映画を見たりすることは憂鬱で、おそらく社会的に受け入れられないのではないかと心配している人が多い。しかし私にとって、そのような活動は新しい現実に対処する自然な方法である。人々が恐怖に立ち向かい、状況を理解し、大胆に巨悪を打ち負かそうとするため、いくらかはコントロールしている感覚さえも得ることができる。
しかし、リアルに人々が苦しんでいるとき、ゲームは現実の出来事に似ていたほうがいいと聞いて、不快になるのは仕方がない。
私の希望は、『パンデミック』がこの危機の時代に行動モデルを提供できることである。私たち全員が、役割を果たすために世界中を駆け巡るヒーローである必要はない。私たちはそれぞれ特別なスキルを持っており、それらを使って、街や州全体の封鎖をより安全で辛抱しやすくできる。私たちは効果的にコミュニケーションをとり、友人や愛する人に手を差し伸べなければならない。また、事実に基づいていることを確認した上で、ソーシャルメディアでシェアしなければならない。
私たちは協力し、近所に住む老人の世話をし、可能な限り在宅で仕事をする方法を見つけなければならない。また、子供たちを楽しませ続けるため、入手困難な物資を手に入れるのを助けるため、最前線の医療従事者を支援するため、アイデアを調整し、共有しなければならない。ウイルスの蔓延を遅らせるため、真剣な集団行動と犠牲を払うことになるだろう。組織、個人、一部の政治指導者が頑張っているのを見ると心強い。
しかし、私がドナとの新婚の頃にプレイしたあの悲惨なゲームのように、全員が協力し合っているわけではないことは明らかである。買いだめや便乗値上げは危機に際してあってはならない。指導者の一部が他の国や政党を非難したり、病気の危険性を誤解させたりするような、仮想敵戦略も取ってはならない。
ボードゲームはあまり儲からないが、私にたくさんのことを教えてくれた。私たちは皆、自分の強みを発揮し、短期的な脅威と長期的な目標のバランスを取り、共通の利益のために犠牲を払う必要がある。コミュニケーションと調整、そして効果的な協力ができれば、私たちはこの容赦のない恐ろしい敵をよりきっと克服できるだろう。
New York Times:Opinion No Single Player Can Win This Board Game. It’s Called Pandemic.