幽霊船(Geisterschiff)
大きな箱を開けると、やたら大きい幽霊船が入っています。組み立ててボードの真ん中に置くとものすごい迫力。ドクロのマークがオドロオドロしいマスト、陸地をにらむ4つの砲台、階段で上がれる甲板の小部屋、そして幽霊となったフリント船長が操る主船室の舵……これがゲーム内容とはほとんど関係がない、雰囲気を出すためだけのものというのが豪奢でございます。人はシステムのみにて生きるにあらず。
恐怖の幽霊船で、海賊たちがフリント船長の見張りをかいくぐって宝箱のカギを取り、カギに合う宝箱を開けて、宝を自分のねぐらに持ち帰るという古典的なゲームです。移動はダイスを2つ振ってその合計だけ進み、6が出たらフリント船長を移動してほかの海賊を襲います。我が国のパーティージョイも、こんな作りでしたね。それから15年余り、ドイツゲームも思えば遠くに来たものです。
古典的とはいえ、随所に手が込んでいます。宝箱のカギは主船室で手に入れるのですが、2種類あって、合う宝箱が違います。両方もっていけばどちらでも開くのですが、フリント船長が追いかけてくるのでのんびりしているわけにも行かず。でも中には折れているカギもあります。もちろん、どちらの宝箱も開けられません。
カギを手に入れたら、宝箱のある部屋に移動します。宝箱の裏をこっそりみて、合うカギをもっていたらオープン。1点〜5点の宝が入っています。5点分以上の宝を持ち帰れば勝ちなので、当たれば一度にリーチ。でも中にはただの空き瓶もあります。もちろん、0点。
折れているカギも、空き瓶も、伏せて持つのであからさまにガッカリしてはいけません。かえってすごい宝を取ったのではないかと怪しまれてしまうでしょう。
ダイスで6が出てフリント船長をけしかけられると、海賊は超ビビリます。船のどこにいても甲板からダイビングして川にドッボーン! このとき、アイテムをランダムに1つ落としてしまいます。しかも、1回休んで陸地から再スタート。強面なのにヘタレですね。
陸地にいる海賊には、フリント船長は砲台を使って襲い掛かります。船長が砲台の前に立つとドッガーン! その近辺にいる海賊は1回休みになってしまいます。宝の持ち逃げは許さんぞ!
ちなみに落としたアイテムは陸地の洞穴に置かれます。これを回収するには陸地を遠回りしてこなければなりません。フリント船長は強烈で、海賊たちは次々にダイビングするので、洞穴にアイテムがどんどん落ちてくるでしょう。
フリント船長だけでなく、ほかの海賊も油断できません。同じマスに入るとダイスで決闘です。武器も持っていない海賊はダイスを1回、サーベルを持っていれば2回、ピストルを持っていれば3回振るチャンスがあります。勝てばランダムにアイテムを1つ奪取。宝箱を奪われたらたまりません。ほかにも決闘もなしにいきなりアイテムをくすねてくるオウムというアイテムもあります。
落とすのも奪うのも、伏せて混ぜたアイテムのチップから選びます。宝をもっているとしても、たくさんアイテムをもっていれば当たりの可能性が減るわけです。
こんな風に船長と海賊が入り乱れて奪い奪われるドタバタゲーム。終わらないかに見えて、終わりは突如訪れます。ということはダイス運が悪くても、フリント船長に襲われて何度もダイビングしているうちにすっからかんになっても、最後まであきらめてはいけないということ。いいゲームだなあ(本当か?)。
Geisterschiff
デザイナー:M.ゴールドスミス、ミヒャエル・キンドレッド
メーカー:シュミットシュピーレ(ドイツ)
発売年:1992年
2〜4人用、8歳以上
このレビューは、biscoさんの依頼を受けて作成したものです。ほかの3タイトルについては、biscoの地雷備忘録に掲載されています(bisco便#1、bisco便#2、bisco便#3)。
ドイツ史旅行(Zeitreise in die Deutsche Geschichte)
ある会社が偶然タイムマシンを発明したので、歴史家は大喜び。貴重な資料を調べて現代に本当の歴史を報告することができます。与えられた2台のタイムマシンを駆使して、ドイツの歴史を探りに行きましょう。
……ってドイツ史はあんまり馴染みがないんですが、「ゲルマン民族の移動(375〜)」、「古代ローマ帝国(500〜)」、「十字軍(1095〜1291)」、「ハプスブルク家(1273〜)」、「ビザンツ帝国の終焉(〜1453)」、「宗教改革(1500〜)」、「30年戦争(1618〜1648)」、「専制政治(1650〜)」なんかが小さい箱になっていて、そこに3枚ずつカードが入っています。
カードはテーマごとに3枚1組になっていて、はじめは各時代にバラバラに入っています。これをタイムマシンを使って集めるわけです。1枚1枚が歴史のひとコマになっていて、例えば「食べる」シリーズだと、「台所の女」、「井戸」、「調理道具」で1セットができあがります。
とはいってもドイツ語なので、箱は年代の数字で、カードはテーマのシンボルマークで識別するしかないんですけどね。歴史の妙味は味わえませんが、ゲームとしては問題なく遊べます。
小箱は全部まとめてボックスに入っています。そこに大きなついたてが付いていて、どの小箱を開けたのかはほかのプレイヤーに見えません。タイムトラベルはこっそりと。でもインチキをしてはいけませんよ。
さてはじめに1人ずつ、好きな時代の小箱にタイムマシン2台を仕込みます。この時代からスタートです。自分の番にはひとつ、小箱を開けて中身をよく覚えます。そしてタイムマシンと一緒にその中から1枚抜きます。1周に時空を飛び越えて、次の番になったら別の時代に着陸です。また小箱を空けて、タイムマシンと一緒に持ってきたカードを入れます。
これを繰り返すうちに、1つの時代に同じテーマのカードを集めてくることができるでしょう。3枚揃った時代に自分のタイムマシンがいて、ほかのタイムマシンがいなければ現代に独占スクープして勝ちです。
でもその前にほかのプレイヤーのタイムマシンが着陸しないとも限りません。あと1枚で揃うというところで、ほかのプレイヤーが邪魔するためにほかの時代に持ち去ってしまうこともあります。どこに持ち去ったかは、もう分かりません。またそのテーマを集めるよりは、別のテーマで集めなおしたほうが早いかも。そのためにも、集めていないカードまで覚えておく記憶力がものを言います。「あのカードは確かこの時代にあったな」と。
カードはタイムマシンだけでなく「時間の幽霊」でも運べます。いろんな時代にウロウロしているので便利ですが、ほかのタイムマシンが来たら横取りされてしまうので注意が必要です。それからペストのカードがあると着陸できませんし、ドイツの女神ゲルマニアのカードがあると何と3回休みです。お祭りに巻き込まれるんだとか。タイムトラベラーもつらいよ。
プレイ時間はなぜか42分。でもいきなり小箱を開けたら天和だったりして即終了なんてこともあります。
ひたすら記憶のゲームですが、実際、時間旅行ができるようになったら記憶力が頼りになるんでしょうね。一枚一枚手描きのカードは見ごたえがあります。
作者は『シュラウム人』、『こんなもの、どんなもの』、『私の世界の見方』のU.ホシュテトラー。常人にはついていけないひねりようです。よくこんなもの思いつくなぁ。
Zeitreise in die Deutsche Geschichte
デザイナー:U.ホシュテトラー
メーカー:ファタ・モルガーナ(スイス)
発売年:1993年
3〜6人用、12歳以上、42分(実プレイ時間は40〜90分)
同じ系統のゲームとして、”Cloak & Dagger”(1990)があります。
このレビューは、biscoさんの依頼を受けて作成したものです。ほかの3タイトルについては、biscoの地雷備忘録に掲載されています(bisco便#1、bisco便#2、bisco便#3)。