ゲームリンク創刊号
エッセン国際ゲーム祭もまもなくとなった2009年10月下旬、新しいボードゲーム情報誌『ゲームリンク』(Shoot the Moon)の創刊号が発刊された。私も記事の執筆や海外の連絡などで協力しているので半ば宣伝になるが、この本を買うかどうか迷っている方のためにレビューしたい。
国内のボードゲーム情報誌としては、年代順に『ノイエ』『バンプレス』『ボードゲーム天国』『ボードゲームキングダム』『シュピール』が刊行されてきた。最新情報ではネットにかなわないものの、紙媒体には記事をじっくり読める魅力がある。『ゲームリンク』も読みごたえのある記事が満載だ。
特集「No Game No Life!」では、国内外のゲームデザイナー、ゲーム関係者がそれぞれおすすめのゲームを紹介する。デザイナーのM.シャハト氏、B.フェデュッティ氏、ショップ店長の能勢良太氏、中野将之氏、丸田康司氏らの生の声が聞けてて興味深い。読んでいるうちに遊びたいゲームがどんどん増えてくるから困ったものだ。
そのほか、『ル・アーブル』や『1830』の攻略記事といった濃い記事からキッズゲーム紹介やインストのコツや世界の伝統ゲームなど裾野を広げる記事、ラベンスバーガーの現在(拙著)やヤポンブランドの経緯など業界レポートまで盛りだくさん。イベントレポートはIGDAで鈴木銀一郎氏の講演録である。
しかし何といっても特筆に値するのは付録ゲームの『Merchant Guild』だろう。川崎晋氏の新作だが、ルールもコンポーネントも本格的に作り込まれている。陣取りをしながら資源を集めて建物を作り、その特殊効果でさらに成長するというドイツゲーム的な内容。手番は6種類のアクションから3つを行うというもので、やりたいことはたくさんあるのに全部はできないジレンマに悩まされる。ボードはシート上になっているが、チップは厚紙打ち抜きでしっかり作られており、情報誌の方が付録ではないかと思うほど。情報誌の中にはルールのほかに、このゲームの説明をするマンガもついており、ぜひとも遊びたくなった。
余談ではあるが、ドイツのボードゲーム情報誌『シュピールボックス』にもオリジナルの付録ゲームが時折ついており、いくつか遊んだことがある。結構著名なデザイナーを起用しているのだが、作り込みが甘く退屈なものが多い。『ゲームリンク』の付録も、いくら川崎氏とはいえ付録ではその程度だろうと思っていたので、嬉しい誤算だった。
新作紹介は20タイトルほどに及ぶ。話題の日本語版の中に混じって、『カットスロート』や『ラビットハント』など、ウェブではあまり注目度が高くないゲームが紹介されているのも面白い。ドイツゲームがたった2タイトルしかないことからも分かる通り、バラエティに富んだラインナップとなっている。
3780円という価格は高いと感じる人もいるにちがいない。でもスルーしていた新作に改めて目を向けて、コラムを楽しんで、攻略記事で研究して、付録のゲームを2、3回も遊べば十分元は取れるはずだ。ボードゲームにはまってきた人にも、この頃何となく飽きてきた人にも、新しい楽しみ方を見つけるヒントにしてもらいたい。
・ボードゲーム情報誌GameLink公式サイト
重量級ゲーム
近年、ドイツゲーム賞を受賞しているような難易度高め・所要時間長めのゲームを、日本語でネガティブなニュアンスがないようにするには何と呼んだらよいだろうか。
「長時間ゲーム」というと、世の中には5,6時間やそれ以上かかるものもざらにあるから、2,3時間くらいでは短いという人もいる。 また、内容は易しいのに収束性が悪くて長引くゲームもなくはない。所要時間だけで、ゲームを分類することはできない。
日本ボードゲーム大賞の部門名で採用されていたのは「フリークゲーム」。範囲はだいたい合っているものの、英語のfreakが「○○狂」と訳されるように、若干ネガティブなニュアンスが含まれる。
ドイツ語では「要求の多いゲーム(Anspruchsvolles Spiel)」と呼ばれている。手番の選択肢ややることが多く、その分だけ時間がかかり、戦略性も高いという意味だ。ゲーム賞では、オーストリアゲーム大賞で「エキスパートのためのゲーム(Spiele für Experten)」、国際ゲーマーズ賞やゲーム100選で「戦略ゲーム(Strategy Game)」という言葉がある。
『ドイツゲームでしょう!』では極力ニュートラルな表現を心がけて「重量級ゲーム」と呼んだ。重いゲームが好みの人もいれば、そうでない人もいるから、ニュートラルな表現が望ましい。だが、あまり一般的ではない。
みなさんはどんな呼び方をしていますか? どう呼んだらよいと思いますか?