アドアストラ(Ad Astra)
自分だけの得点源探し
宇宙を舞台にした建設ゲーム。イタリアのメーカー、ネクサス出版が始めた著名デザイナーシリーズの第1作で、フランスのフェデュッティとラジェを起用。ルールブックには同じフランス人デザイナーであるB.カタラがデザイナー紹介文を寄稿するほどの力の入れようである。ホビージャパンがネクサス版、アークライトがファンタジーフライト版を扱う。
遠い未来のお話。太陽系の惑星全てに住めるようになった頃、太陽が衰え始め、人類は新たな住処を探さなければならなくなった。そこで資源を集めてコロニー、工場、宇宙船を作り、遠くの星を地球化しよう。
ゲームは、アクションカードのプロットと実行からなる。まず手番順に自分の手札から1枚ずつ、アクションカードを裏にしてボードに並べる。何番に置いてもよいが、アクションは全員が置き終わってから1番から実行される。また、ほかのプレイヤーも一緒に置き、誰が置いたアクションでも全員実行できる(『レースフォーザギャラクシー』のように)ので、ほかの人のアクションを読んで、その一歩先をいく選択をしたい。
アクションには、資源の産出、宇宙船の移動、建設、資源の交換、得点の5種類がある。
資源の産出では、カードにある2つの資源のうち、カードを出したプレイヤーが選んだ資源の惑星に、宇宙船・コロニー・工場を置いている人が全員資源を受け取る。ほかの人と同じ資源を作るように配置していればたくさん手に入るだろうが、自分しか産出できない資源を作っておくのも手だ。
宇宙船の移動では、カードにある恒星系のうち、どちらかに移動するか、その恒星内で別の惑星に移動する。新しい惑星に移動するときは、その恒星系にあるタイルを全て探査した上で1つ選ぶことができる。ほしい惑星が限られているときは、惑星の多い恒星系に行こう。また、移動にはエネルギーがかかるので、どこかの惑星でエネルギーをコンスタントに産出できるようにしておいたほうがよい。
建設では、これまで集めた資源で宇宙船・コロニー・工場の建設か、地球化を行う。それぞれ必要コストが異なり、何に重点を置くかによって作るものが変わる。資源に過不足があれば、交換でほかのプレイヤーや銀行と交換できる。この部分は『カタン』風だが、予めプロットしておいたところでしかできないのと、建てれば即得点というわけではないのが大きな違い。
得点は、得点カードが出たときに入る。カードにある2つの得点方法のうち、カードを出したプレイヤーが選んだ方法によって、全員が得点する。単独トップで得点した人はさらに3点ボーナス。得点方法はコロニー+工場の数、宇宙船の数、地球化した星の数、入植した恒星系の数、資源カードの枚数の6種類。ほかの人と違う系統で伸ばし、その得点ででボーナスを稼ぎたい。
序盤に金属の惑星からスタートしたPsy+さんがすぐ宇宙船を作って宇宙船でのボーナスを確立。これを追う私はすぐ地球化を行って荒稼ぎした。nagaさんはエネルギーのモノカルチャーで、交換でほかの資源を手に入れる戦略を取ったが息切れ。終盤からどうしようもないくらいの大差がついてしまったが、2本目の地球化を完了した私がそのまま1位。
プロットが織り成す心理戦と、くじ引きのような惑星探索、そして得点方法をめぐる駆け引きが楽しめる洗練されたゲームである。
Ad Astra
B.フェデュッティ、S.ラジェ/ネクサス出版(2009)
3〜5人用/10歳以上/90分
海賊船長(Captain Pirate)
探検のパートナーを探して
好きな相手とチームを組んで探検するカードゲーム。フランスのゲームデザイナー、B.フェデュッティの新作で、アークライトから日本語版が発売された『海賊免許』とよく似たテーマだが、ゲームは全く別物で、こちらが正真正銘の海賊である。
自分の番には、山札から1枚引く、手札を誰かに見せる、手札を誰かから見せてもらう、誰かと手札を交換するの4アクションから2アクションを行う。目標は、カードを集めることと、適切なパートナーを探すこと。探検にはパートナーが必要で、しかも2人で同じ色のカードを5枚出さなければならない。
探検することにしたら、手番のアクションは行わないで、誰か1人を指名し、「○色を○枚出してほしい」と頼む。指定した色のカードを、自分と相手合わせて5枚出せれば探検成功。協力したくても、カードが足りなければ出せないから、パートナー探しで集めた情報がものをいう。失敗すると、用意しておいた自分のカードを捨てなければならず、大きな痛手だ。
成功すると、お宝を山分けするのだが、その分け方が面白い。自分が出したカードの中から1枚ずつ選び、まず船長(探検を持ちかけたほう)がそのうち好きなほうを取り、パートナーが残りを取る。中には得点0のハズレもあって、それを取らせようとして出したら、自分が取る羽目になることもある。その結果、お互いに高くも低くもない得点のカードを出して、自分が出したものを取り合うという囚人のジレンマのような事態が発生する。お互い相手を信じればいいのに。
規定回数探検が行われたらゲーム終了。カードを溜め込んでいると、探検回数が稼げないし、慌てて探検に出ると失敗しやすい。情報戦がカギで、自分が見たり見せたりしたものだけでなく、ほかのプレイヤー同士で見せ合っているときの表情も読みたい。
手札によってたえずパートナーが変わるのが新鮮である。その中で、自分の手札をどんどん売り込むか、ぴったり合う相手を探すかという選択に性格が出て面白い。交換で同じ色を出し合ってしまったり、手札が少ないときに足元を見られて高得点のカードを取られたり、自信満々で申し込んだパートナーのカードが足りず探検が失敗したりと、笑いどころ満載。7人まで遊べるが、人数が少なければ濃い情報戦が楽しめるだろう。
Captain Pirate
B.フェデュッティ、G.ブーキン/カクテルゲームズ(2009)
4〜7人用/8歳以上/30分