アルビオン(Albion)
一手でも多く節約して
アルビオンとはイギリスの島々の古名である。ピクト人を押しのけて、ローマ帝国が入植を進める。奥にいくほど攻めにくくなる地形にどう立ち向かうか。作者ヴレーデは『カルカソンヌ』以外ヒット作に恵まれていない。アミーゴでは『ポンペイ滅亡』『ドラゴンライダー』『ヴェネチア』に続く第4作。
ゲームの目標は「開拓地」を3つ作り、レベルを全て最大の4まで上げること。そのうち1つは奥のエリアに作らなければならない。レベルを上げるためには、資源と防御力の両方が必要だ。
まず資源は魚・木・石・金の4種類があり、それぞれ島の中にある生産エリアの「工場」から手に入る。生産するには、手番を1回休まなければならない。最初は魚と木が1つずつしか取れないが、工場のレベルを上げれば1回でたくさん取れるようになる。レベル1の建物を建てるには資源どれでも1種類1個、レベル2なら2種類1個ずつ、レベル3なら3種類1個ずつと増えていき、ゲームの目標であるレベル4に上げるには、全種類の資源を取らなければならない。
早上がり競争なので、1手番でどれだけ手を進められるかがカギ。そのためには工場のレベルアップが重要になるが、工場にばかり力を入れているとほかの建物の建設が遅れる。遅れると困るのは、必要な防御力が後ほど上がってしまうからだ。
建物を建てるとき、ピクト人チップを1枚めくる。赤いピクト人だったら、ローマ人の植民に敵対する勢力が増えたことになり、防御力が足りないと建物をつぶされてしまう。防御力を上げるには、「城壁」を作るか、開拓地のレベルを上げたときにもらえる軍隊を配備しなければならない。赤いピクト人は徐々に増えていき、建物はどんどん建てにくくなる。
さらに建物を建てたりレベルを上げたりするには、開拓者をそのエリアまで移動しなければならない。奥に進むほど建てにくくなるのは、防御力だけでなく移動がかかるという理由もある。そこでレベルを上げるたびに移動力も上がり、最後にはワープもできるようになる「砦」という建物もある。
序盤はほとんど裸一貫で始めるので、ゲームが動くまでしばらくかかる。ところがピクト人が全てめくられると、運の要素はもうない。終盤になると、あと何手で上がれるかが数えられるほど。見通しがよいため、考えることも多い。こうするのが最善か、それとも妙手はないか? 息が詰まるような生産拡大ゲームである。
Albion
K.-J.ヴレーデ/アミーゴ(2009)
2〜4人用/12歳以上/75分
アドアストラ(Ad Astra)
自分だけの得点源探し
宇宙を舞台にした建設ゲーム。イタリアのメーカー、ネクサス出版が始めた著名デザイナーシリーズの第1作で、フランスのフェデュッティとラジェを起用。ルールブックには同じフランス人デザイナーであるB.カタラがデザイナー紹介文を寄稿するほどの力の入れようである。ホビージャパンがネクサス版、アークライトがファンタジーフライト版を扱う。
遠い未来のお話。太陽系の惑星全てに住めるようになった頃、太陽が衰え始め、人類は新たな住処を探さなければならなくなった。そこで資源を集めてコロニー、工場、宇宙船を作り、遠くの星を地球化しよう。
ゲームは、アクションカードのプロットと実行からなる。まず手番順に自分の手札から1枚ずつ、アクションカードを裏にしてボードに並べる。何番に置いてもよいが、アクションは全員が置き終わってから1番から実行される。また、ほかのプレイヤーも一緒に置き、誰が置いたアクションでも全員実行できる(『レースフォーザギャラクシー』のように)ので、ほかの人のアクションを読んで、その一歩先をいく選択をしたい。
アクションには、資源の産出、宇宙船の移動、建設、資源の交換、得点の5種類がある。
資源の産出では、カードにある2つの資源のうち、カードを出したプレイヤーが選んだ資源の惑星に、宇宙船・コロニー・工場を置いている人が全員資源を受け取る。ほかの人と同じ資源を作るように配置していればたくさん手に入るだろうが、自分しか産出できない資源を作っておくのも手だ。
宇宙船の移動では、カードにある恒星系のうち、どちらかに移動するか、その恒星内で別の惑星に移動する。新しい惑星に移動するときは、その恒星系にあるタイルを全て探査した上で1つ選ぶことができる。ほしい惑星が限られているときは、惑星の多い恒星系に行こう。また、移動にはエネルギーがかかるので、どこかの惑星でエネルギーをコンスタントに産出できるようにしておいたほうがよい。
建設では、これまで集めた資源で宇宙船・コロニー・工場の建設か、地球化を行う。それぞれ必要コストが異なり、何に重点を置くかによって作るものが変わる。資源に過不足があれば、交換でほかのプレイヤーや銀行と交換できる。この部分は『カタン』風だが、予めプロットしておいたところでしかできないのと、建てれば即得点というわけではないのが大きな違い。
得点は、得点カードが出たときに入る。カードにある2つの得点方法のうち、カードを出したプレイヤーが選んだ方法によって、全員が得点する。単独トップで得点した人はさらに3点ボーナス。得点方法はコロニー+工場の数、宇宙船の数、地球化した星の数、入植した恒星系の数、資源カードの枚数の6種類。ほかの人と違う系統で伸ばし、その得点ででボーナスを稼ぎたい。
序盤に金属の惑星からスタートしたPsy+さんがすぐ宇宙船を作って宇宙船でのボーナスを確立。これを追う私はすぐ地球化を行って荒稼ぎした。nagaさんはエネルギーのモノカルチャーで、交換でほかの資源を手に入れる戦略を取ったが息切れ。終盤からどうしようもないくらいの大差がついてしまったが、2本目の地球化を完了した私がそのまま1位。
プロットが織り成す心理戦と、くじ引きのような惑星探索、そして得点方法をめぐる駆け引きが楽しめる洗練されたゲームである。
Ad Astra
B.フェデュッティ、S.ラジェ/ネクサス出版(2009)
3〜5人用/10歳以上/90分