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カーソンシティ(Carson City)

先に置いても安心できない
アメリカ西部を舞台に、新しくできる街で勢力を築くボードゲーム。去年の秋にベルギー人のゲームデザイナー、X.ジョルジュ(『パレ・ロワイヤル』)が、オランダのゲームメーカー、QWGゲームズから発売した。外国のゲームのオランダ語版を手がけるQWG社がオリジナルの重量級ゲームを出すのは昨年の『カヴァム』に続いて2タイトル目。
ラウンドの最初に7人の人物から1枚ずつ選び、このラウンドの特殊能力と手番順が決まる。次に手持ちのカウボーイをボード上に配置して、アクション選択と陣取りを同時に行う。全員の配置が終わったら順番に実行。これを4回繰り返して、得点の多い人が勝つ。
7人の特殊能力と14種類のアクション、そして9種類の建物の選択がゲームの要。土地と建物を買い、建物から収入を得て、そのお金でまた土地や建物を増やし、勝利点を買うというのが基本的な流れだが、その中でいかに特殊能力を上手く使い、効果的なアクションを選び、儲けの大きい建物を作れるかが勝敗を分ける。
特殊能力とアクションと建物は密接につながっている。例えば「雑貨商」を選ぶと、建物1種類について収入を2倍にすることができる。同じ種類の建物を多く建てていたらこれ。序盤だったら、周囲の空きマス分だけ収入になる「牧場」が儲かるだろう。がっぽりお金が儲かったら、「勝利点の購入」アクションで早めに得点にしておきたい。
このゲームは、今流行の「ワーカープレイスメント」というシステムを使っている。自他の優先順位をよく考えてコマを置くのはそれなりに駆け引きがあるのだが、選んだ後はあまりほかの人と絡まないのでインタラクションを感じない人も多い。しかしこのゲームでは、陣取りと決闘という要素を加えることで、濃密な駆け引きができるようになっている。
街は建物を建てるたびに家もおまけでついてきて、中央から外側へ広がっていく。その中で格好の場所が生まれたり、そうはさせまいとつぶしたりといった攻防が起こる。ほかの人が建てた家に相乗りして収入を上げることもできる。ほかの人がどこに建物を建てるつもりなのかを予想して、自分に利用しようとする争いは熱い。
そして、このゲームでは誰かが置いているスペースにもカウボーイを置くことができる。そうしたら決闘。手持ちの戦力にダイスを足して、合計の多いほうがアクションや土地を手に入れる。大儲けしている建物から半額奪うこともできる。戦力は、手持ちのカウボーイも含まれるので、ボード上に配置すればするほど攻撃に弱くなるし、配置しなければ無条件で落とされてしまうというジレンマ。ちなみに、ダイス運で決まるのが嫌いならば、手札を使うシビアなバリアントもある。
序盤からカウボーイを温存しつつ、高収入の建物で回したcarlさんが、終盤の決闘をものともせずダントツ1位。私はお金を貯めてはこつこつと勝利点にしていたが、建物の収入が地味で最下位。
決闘は誰にでも挑めることから、トップでない人を間違って叩いてしまったり(誤爆)や、得にもならないのにトップを叩かざるを得なかったり(仕事)というような直接攻撃系ゲームの難しさはある。しかしそれでも、置けたらもう安心というワーカープレイスメントに、いつ狙われるか分からないという緊張感が加わり、最後まで息が抜けないエキサイティングなゲームとなった。
人物カードは裏面に別の特殊能力があり、ボードも裏面に川が描かれていて、変化をくわえて遊ぶこともできる。エッセン国際ゲーム祭では追加の人物「インディアン」も配布された。まだまだ遊びたい。
Carson City
X.ジョルジュ/QWGゲームズ(2009年)
2〜5人用/12歳以上/90分

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アイスクリームタワー(Icecream Tower)

セルフでお願いしまーす
おいしそうなアイスクリームを、崩さないように積み上げるバランスゲーム。2009年にエポック社から発売された国産品である。
アイスの種類は定番のバニラやストロベリーから、粒入りのベリーストロベリーやチョコミント、変わったところではバナナミルクやマシュマロチョコなど16種類。プラスチックだが実によく塗装されていて本物のよう。遊んでいるうちにアイスが食べたくなってくる。
手番にはお客様となって手札から「注文カード」を出し、となりの人にいくつ積むかを指示。「シングル1つ下さい。」となりの人はアイスクリーム店の店員となって、注文どおりにアイスを積む。
積むのは素手ではなく、ちゃんとディッパーが付いている。アイスクリームにセットして、コーンの上で上のボタンを押すとアイスが落ちるという本格設計。本物のアイスを重ねているような雰囲気だけでなく、素手よりもバランスが取りにくいので器用さが試される。
崩したら、その時点で積んであったアイスの数だけお客様が得点。店員は失敗しても得点を献上するだけで、失点にならないのがいい。
店員になったとき、「店員カード」を出すと自分で積むのを回避できる。積まなくてよい「品切れです…」や、ほかの人に積ませるものなどもあるが、盛り上がるのが「セルフサービスでお願いします。」これを出されると、注文した客が積まなくてはいけなくなる。大人はもちろん、わざとずらして積むので、それが自分の首を絞めてしまう。さらに手番の周りはリバース。一難去ってまた一難である。
基本ルールではコーンを台の上に載せて積むが、発展ルールでは手持ち。アイスがグラグラしているコーンを渡され、その上で「トリプルお願いします!」だった日にはもう!
単なるバランスゲームというだけでなく、注文カードと店員カードの応酬が緊張感をもたらすよくできたゲームだった。対象年齢の下限は低いが、大人でも盛り上がって楽しめるだろう(アイスクリーム好きがいればなおよし)。
作者不明/エポック社(2009年)
2〜4人用/4歳以上/20分
Amazon:アイスクリームタワー