night flight spiele(ナイトフライトシュピーレ)
2010年4月7日、中古ボードゲーム通販のnight flight spiele(ナイトフライトシュピーレ)がオープンした。それまでヤフオクかゲームマーケットでしか手に入らなかったレアゲームをごく普通に取り扱い、幻のゲームを探していた愛好者たちの夢をかなえている。これまで2回、ゲームマーケットに出展。公開オークションがかすむほどの品揃えで会場の話題をさらった。
そんなnight flight spieleは、どんな人がやっているのだろうか? あんなレアゲームをどこから仕入れてくるのだろうか? そこで店長の三隅俊也氏にインタビューした。
三隅氏は30代半ばで本業は福祉施設の職員である。小さい頃からボードゲームを遊んでいたが、ドイツゲームは2006年、学生時代からの友人と遊ぶために『スコットランドヤード』をハードオフで購入したところに始まる。それから、ヤフオク、ハードオフ、リサイクルショップなどで次々と買うようになった。
一方、新作は現在に至るまでノーチェック。古いもの好きで、フォルクスワーゲン、時計、和だんすなどアンティークに凝っていた三隅氏にとって、古い「のに」安い中古ボードゲームを選ぶのは必然であった。
ボードゲームの収納は愛好者(特に妻帯者)共通の悩みの種である。2008年、「中古」の家に引越ししたとき、仏壇のスペースに入りきるまではボードゲームを買ってよいことになっていた。しかしそのスペースはすぐいっぱいになる。ここで「商売にすればもっと増やせる」という口実を思いついた。その頃を奥さんは「甘く見てた」と振り返る。
ドイツの中古ショップ、eBay、BGGマーケットを中心に1パック20kgの大量購入を繰り返し、4.5畳1室はたちまちいっぱいに。そのうち、ドイツ人のパートナーを見つけ、eBayの落札品をまとめてもらったり、ドイツの中古流通会から手に入れたりできるようにもなった。最初は「中古なら遊んでから売れる」目論見もあったが、これだけ多くては遊ぶペースが追いつかない。
開店の動機としてもう1つ、子供の教育がある。三隅氏には現在、4歳と1歳のお子さんがおり、子育ても全力投球。その一環として、お金を稼ぐのがどれくらいたいへんかということを、商売を身近に見せて育てたかったという。
こうして2010年、ネットショップが開業する。かつて自宅サーバで無料ホスティングサービスをしていた経験から、ショップのサイトも全て自前で作った。売り上げは最初から順調で、奥様から4.5畳のほかに、6畳の部屋も使う許可が出た(下写真)。メール会員も100人を超える。
三隅氏は、子供たちを寝かせてから1日4時間ほどショップの仕事をしている。pgdbランク上位や国内レビューがある絶版品・限定版を中心に約1000タイトルをeBayやBGGで常時チェック。人気のゲームは『レーベンヘルツ旧版』『ビッグシティ』『手抜き工事』『ノミのサーカス』『ハムスターロール』など。メール会員からは捜索願も受け付け、約90%は見つけてくるという。
届いた品物は欠品を確認し、ヤフオクの相場を参考にできるだけ安めに価格を決める。欠品なし100%がモットーで、欠品があればもう1セットをばらして組み合わせるため、今では最低2セットないと販売しないことにしている。場合によっては、箱やボードの破損を修理することもある。足りない木製コマを自作で複製するのが夢だそうだ。
新作を追わないのは、ものとしての魅力にある。手触りやぬくもりの点でプラスチックより木製がいいのは多くの人が思うところだが、さらに使い込まれたほうが味わいが出てもっといいというのが三隅氏の持論。ボードゲームを机の上に広げて、一人でうっとり眺めたりもしているそうだ。現在の新作も、あと10年くらい寝かせてから取り組むつもりだ。
「ナイトフライトシュピーレ」は、特別優雅な夜間飛行のように、特別なゲームで優雅な時間を過ごしてもらいたいという願いからつけた(Perfumeの曲名からという説も)。現在サイトに登録されているアイテム数は1000タイトル以上(品切れ含む)。宝探しのような感覚で、プレミアムな体験をしてほしい。
・night flight spiele
ヴィンテージ(Vintage)
ポルトガルの宝石
ポルトガルでポートワインを製造して売るボードゲーム。同じくポルトガルワインを造るゲームとして『ヴィニョス』があったが、こちらはポルトガルのメーカーが手がけている。ポルトガルのゲームはほとんど未知の世界だったが、ワーカープレイスメントを柱にじっくり作り込まれたシステマチックなゲームである。
舞台はアルト・ドウロ・ワイン生産地域。ローマ帝国時代からブドウの段々畑が作られ、ポートワインの生産地として世界的に有名である。世界遺産にも登録された絶景の地だ。
ワインを売るまでの道筋は長い。土地を購入し、ブドウを植え、ブランデーを生産してから、ワインを製造する。製造したワインは船で港まで運び、倉庫で熟成させてようやく販売となる。これらを、ワーカープレイスメントで同時進行する。
手番には、自分のアクションチップを好きなアクションに置いて実行するが、前にそのアクションを実行した人がいると必要なチップ枚数が増えたり、定員に達するともう実行できなくなったりする。数少ないアクションチップをどの順番で置き、どのアクションを選択していくか悩ましい。
アクション選択では、毎回強力なカードが4枚だけ登場するのがこのゲームの特徴その1。安いワインをビンテージとして売ったり、船を一度に移動したりできる。スタートプレイヤーを取ったら、まずはカードを取りたいところだが、タイミングが合わないと使い物にならないカードもあるので要注意。このカードのおかげで、地道な製造が突如ダイナミックになるのが面白い。
港の倉庫で熟成させるとき、ダイスを振って品質を向上できるのがこのゲームの特徴その2。ワインの値段は、土地、ブドウの種類、天候によるもともとの品質がものをいうが、ダイスでもう1段階値段を上げることができたときは嬉しい。地道な製造の最後に、こんな仕掛けを用意しているとはニクい。
早めに畑を広げる戦略をとった私とkarokuさんに対して、ふうかさんはまず既存の畑にブドウを植えて品質を高める作戦。私はさらに、さっさと製造・出荷して安くてもどんどん売ることにしたが、karokuさんは溜め込んでから出荷する方向へと分かれた。私は出荷してまたゼロから始めるという非効率さで最下位。最後にカードを余らせてしまったふうかさんが2位で、1位は同時進行で効率的な販売を進めたkarokuさん。
ワーカープレイスメントをベースにしたシステマチックな作りと、カードとダイスというダイナミックな要素がうまくマッチして、新味のあるストラテジーゲームとなっている。コンポーネントのデザインも美しい。
Vintage
G.ドーリー(Gil d’Orey)/メサボードゲームズ(MESAboardgames, 2011)
2〜4人用/10歳以上/90分
・テンデイズゲームズ:ヴィンテージ
・ふうかのボードゲーム日記: ヴィンテージ