スペース・パイレーツ(Space Pirates)
その基地はオレのもの
宇宙を舞台にした壮大なプロット&アクションゲーム。『魔法の掃除機』や『ドラゴンライダー』のようにタイルを並べて海賊船を移動し、貨物船を襲い、品物を基地に持って帰って換金する。そのお金で基地を1つ買い、さらに規定の金額に最初に達した人の勝ち。アナログ感たっぷりのゲームだが、手が込んだ仕掛けが加えられている。
テーブルに基地や惑星のタイルをランダムに並べ、好きな基地からスタート。ここが宇宙の海賊たちが暴れまくる舞台となり、タイルの隙間を縫って移動する。
手番には、エネルギーカードを1枚出してイベントと移動数を決める。まずはイベント。貨物船の出現や移動と、小惑星・嵐・太陽風などの障害物がある。
貨物船は小さいコマで、袋から引いてテーブル上の好きなところに置く。そして貨物船の移動は、何とおはじきである。自ら海賊船に向かってくるとは、飛んで火にいる何とやら。ところが貨物船の中に、小惑星と宇宙警察が隠れていることがある(コマをめくると分かる)。これを引いたらほかの宇宙船の近くに置いてあげよう。裏をかいて、自分の宇宙船の目の前に置いてほかの人に取らせるという手もある。
小惑星にぶつかるとダメージを受け(カードか貨物船を捨てる)、宇宙警察に当たると基地まで至急帰らなければならなくなる。自分が置いたコマは場所と内容を覚えておき、それ以外のコマはほかのプレイヤーの挙動を観察して、小惑星や宇宙警察に当たらないように気をつけよう。
ほかにもイベントの中で突然現れる嵐は、好きなところに傘上の嵐を置き、その下を通過するたびにダメージを受ける。また太陽風は、好きな方向を指定して、ほかの宇宙船が全部その方向に流される(障害物にぶつかるとダメージ)イベントだ。
さてこのようなイベントの後で、宇宙船を進める。移動数1ならタイル1枚、2なら2枚を自分の宇宙船の前に並べ、その上に宇宙船を移動する。タイルの形状によって、1枚だけでは90度までしか曲がれない。タイルは障害物やほかの宇宙船に触れられないめ、狭いところでのUターンは、本当に苦労する。
移動の途中で、貨物船コマに当たったら内容を確認。貨物船だったらゲットできる。移動数は限られているので、移動範囲内に貨物船があるよう、おはじきテクニックで寄せておきたい。
宇宙船が基地に入ると、基地の購入、貨物の売却、エネルギーカードの補充ができる。貨物のレートは基地によって異なるので、手持ちの貨物を高く売れる基地に向かうか、自分の近くにある基地で高く売れる貨物を集めたほうがよい。まあ、基地はお互い離れているし、どの貨物を引くか分からないから、そんなに都合よくはいかないのだが。
karokuさんと私が貨物船を集めまくり、基地の前で抜きつ抜かれつのデッドヒート。先に入ったほうが勝ちになりそうで、互いに相手のルートを塞ぐ。その矢先、かゆかゆさんから痛恨の嵐攻撃。ぐわあ、帰れねー! 回り道をしているうちに、karokuさんがゴールして勝利。ふうかさんは、宇宙警察をめくってしまい、しかもエネルギーカードがなくなってドリフト走行していた(1回の手番で1タイル分しか進めない)。
移動タイルがずれないように真剣に並べる姿がおかしかったり、おはじきで空振りしてずっこけたり、嵐を目の前に置かれてもう笑うしかなかったりと、アナログのエッセンスを詰め込んだようなゲームだった。愛すべきバカゲーです。
Space Pirates
C.ベーリンガー/アスモデ出版(2009年)
2〜4人用/8歳以上/60分
ホビージャパン:スペース・パイレーツ
エルパソ(El Paso)
度胸だけでは勝てない
5つのダイスが全部保安官になるまで粘って、たくさんのチップを集めるゲーム。私の大好きなデザイナー、S.ドーラはこのところキッズゲームばかりで、『アパッチ』(アバクス社)以来2年ぶりのファミリーゲームである。私がこのデザイナーを好きなのは、余計なルールを徹底的にそぎ落とし、ゲームの楽しさを凝縮しているところにある。このゲームも作りはいたってシンプルだが、バーストとバッティングの妙が楽しめる。
舞台はテキサス。プレイヤーは7つの街を1つずつ襲う。街にチップが並べられたら、まずどのチップを狙うかをカードで選択。そしてダイスを振り、セーフだったらほしいチップをもらう。さらに次のカードを出し、ダイスを振り、チップをもらうというのを繰り返す。
カードには数字が書いてあり、同じ品物を選んだ人がいたら、数字の大きい順に取る。でもチップは価値の小さい順に重なっており、最初に取るとしょぼいチップになってしまう。でもチップの枚数には限りがあるから、数字が小さいカードだともらえないこともある。さらに、ダイスでそのマークが出ないともらえないチップもあり、リスクの高いバッティングを狙うべきか、安全確実に行くべきか迷う。
ダイスは5つあり、どれも3分の1で保安官の目が出る。保安官の目が出たダイスは脇によけておき、5つ全部が保安官になったらバースト。その時点で街に残っているプレイヤーは取っ捕まってしまう。それまでに取ったチップは全部没収。なので危ないなと思ったら、適当なタイミングで街を出よう。
つまり、バッティングのリスクとバーストのリスクを同時に抱えるゲームなのである。度胸がないと勝てはしない。
とはいえ、ただの運試しではない。なぜかというと、次の街で換金(得点化)できるチップが決まっていて、どのチップを選ぶべきか、どのチップを取ったら次の街にいってよいかが変わるからである。次の街で馬が高く売れるなら、まず馬を狙い、馬が手に入ったらとっととずらかってもよい。裏をかいて馬を取らずに、バースト覚悟でぎりぎりまで粘ってほかのチップをかき集めるのもよいだろう。
最後の街エルパソは、生き残れば全部のチップが高額レートで換金できる。「もう1回!」「まだまだ行ける!」とつい欲張って保安官に捕まらないようにしたい。
序盤からバーストしまくっていたkarokuさん。ダイスが残り1個になっても粘っているので無謀だなと思っていると、終盤の街で一か八かの賭けに出て大幅リード。そのまま逃げ切って勝利した。実は序盤は換金レートが低いので、バーストしてもしなくても1〜2点ぐらいの差にしかならない。それなのに私はすぐに抜けるチキンで、儲け幅が小さい。一度だけ勝負に出たがうまくいかなかった。
度胸と計画性のほかに、このゲームに必要なものはプレイヤーの性格の違い。無謀からチキン、理論派から直感派まで、いろんな性格のプレイヤーがいたほうが面白いだろう。そしてお互いに「もうやめたらいいんじゃ?」「えー、もう抜けんの?」などとツッコミながら遊ぶとよい。
El Paso
S.ドーラ作/ツォッホ出版(2009年)
2〜5人用/10歳以上/45分
メビウスゲームズ:エルパソ