キーワード法と因果関係法
文章などを要約する方法に、キーワード法と因果関係法というのがある(三森ゆりか「大学生のための言語力トレーニング」月刊言語2007年4月号)。これをボードゲームのルール説明(インスト)に置き換えて考えてみる。
キーワード法とは、ルールを理解するための必要最低限の情報をキーワードとして取り出し、それらを繋げるというやり方。ルールを読みながらキーワードとなる部分に印をつけておく。キーワードなので、印は文単位ではなく、単語単位で付けることがポイント。そしてこのキーワードをつなげて、短文に要約する。
因果関係法とは、勝利条件(結果)にまず着目し、そのための手段(原因)を示していくという方法で必要な情報を抜き出すというやり方。ルールブックに書いてある順番よりも、逆に勝利条件から遡っていくほうが確実。まず勝利条件を説明し、冒頭からその条件につながるものを説明していく。
『カタン』だったら、ダイス、資源、交換、建設、勝利点というのがキーワードになり、勝利点←建設←交換←ダイスと交換というのが因果関係になるだろう。
ケースバイケースだが、因果関係を心がけて説明するとゲームは分かりやすい。特に、「どうやったら勝ちなのか」を最初に一言述べるだけで、ルールの分かりやすさは格段に違うと思う。
2つを組み合わせるという方法もあるだろう。はじめに勝利条件を述べて、そのための手段をざっと説明する。それから最初に戻って、キーワードで説明していくというやり方だ。
いずれにせよ、ルールを音読してはいけない。読むというのは早口になりがちで、聞いている人はよほど注意しないと付いていけないし、説明する人が分かっていなければ、聞いた人もまず分からないからだ。また、読めば読むほど意味不明な日本語ルールもある。予め読んでおくのが望ましいが、それができなければ、一文一文黙読して、腑に落ちた上で説明するほうがよい。
TTBさんが『ゲームリンク』で書いているような「ヴィジュアルの多用」「抑揚や強調」「今回のゲームに必要ないことは説明しない」「細部は後回し」「質問受付」も気をつけておくとよい。
要約できるということは、内容が頭に入っているということでもある。また、長すぎる説明はゲームのやる気を削ぐ。ルールを要約して、そこに細部を肉付けするというのを、心がけてみよう。
ついでながら、テンションがやたら高いとか、妙に上から目線なルール説明はご勘弁。
評価の世論
最近、評価を積極的に発信する人が減っており、それにつれて少ない評価で世論が固まりがちなことを懸念している。
ゲームの購入を検討するとき、ウェブで評判を探すという方は多いと思うが、何人かの人が揃って同じような理由からネガティブ評価していると思ったことはないだろうか。もしかするとその何人かは、同卓した人かもしれないと疑ってみることが必要である。
ゲーム中に「このゲーム、つまらない」という空気になることがある。バランスが悪い、必勝法がある、運の要素が強すぎる、あるいは単に好みと合わないなどなど。そういうところで遊ぶと、終わった後の感想がみんな似通ったものになりがちである。
文句を言いながらテレビを見るように、ツッコミながら遊ぶのもひとつの楽しみ方だろうからそれはそれでかまわない。でも、その中にブロガーやpgdbユーザーが複数いると、皆が口を揃えてつまらないと書くものだから、それを読んだ人は、日本中誰が遊んでも遊ぶ価値がないのかなと思ってしまう。本当はたった1卓1ゲームの評価かもしれないのに。
ネガティブな評価だから買うのを控えよう、遊ぶのをやめようというのはもったいない。むしろどこがネガティブに捉えたのかをよく読んで、本当にそうなのか遊んでみよう。実はそこが自分にとってツボだったり、確かにそうでもゲーム全体にはたいした影響を与えないすることはよくある話である。
そしてできれば、そのことをどこかに書いてほしい。意見は「異見」であるという。皆が口を揃えてつまらない(あるいは面白い)というとき、あえて反対意見を書くのは大事なことである。
反対意見を述べるというと、楯突くみたいな誤解をされることもあるが、本当は前の人が見つけてきた「論点」を共有する、フォローするということなのである。論点が多ければ多いほど、遊んでいない人にとって有用なレビューになるはずだ。そういう意味で、ネガティブ評価もどんどん書いて差し支えない。
というわけでクロスレビューに同じ評価ばかり並んでいるとき、読む人は鵜呑みにせず、まず疑ってかかること、遊んでみてそうでもなかったらどこかに書くことである。私のレビューを読んで「いやそれは違うんじゃないか」という意見も歓迎。