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Spiele entwickeln 2010

Spiele entwickeln(ボードゲーム開発)は、2006年から毎年発行されているゲームデザイナーのためのペーパーバックである(ドイツ語)。3月にドイツのヴァイルブルクで行われるドイツ・ボードゲームデザイナー会議の発表を収録。編集にはM.A.カサソラ、C.コンラート、F.フリーゼ、A.マイヤー、H.ペール、A.ヴェッターという錚々たる顔ぶれが並ぶ。価格は16.90ユーロ。毎回ゲームメーカーが協賛してこの価格に抑えている。
目次と概要は次の通り。デザイナー間で、ボードゲームの開発の方法論を共有し役立てようという態度を見て取ることができる。近年、新人デザイナーが次々と発表しているのも、こうした蓄積を利用しているのかもしれない。入手はドイツアマゾンにて。
第1部:総括テーマ
・子供は何ができるか?(C.ヴィツォレック)―子供の発達を年齢別にまとめ、キッズゲームのあり方を提言
・たくさんの頭で1つのゲーム(I.ブラント、M.ブラント)―協力の要素をもったゲームの長所と短所、開発方法を提案
・メーカーに要望したいルールブック(A.ブロンスヴィク)―ルールの記述で分かりにくい部分や抜けやすいポイントを列挙
・論理哲学論考(M.シュトイビヒ)―カサソラが行ったボードゲーム開発ワークショップのまとめ
・カードはエンジンだ(U.ブレンネマン)―カードドリブンゲームの仕組みを実例に基づいて解説
・ボードゲームの中のタブーとタブー破り(A.マイヤー)―タブーになるテーマと、タブー破りをゲームの面白さにする方法
第2部:手作業の問い
・テーマからのボードゲーム開発(A.マイヤー)―テーマの見つけ方と膨らませ方、ゲームへのつなげ方
・雪玉システム(F.フリーゼ)―ゲーム中の成長曲線の描き方と、先手番・後手番の有利不利を考察
・プレイヤー人数による変更(C.コンラート)―多人数ゲームの2人用ルールを考える際の注意点
・ボードゲームにおける非対称性(H.コマレル)―プレイヤーの条件が同じでないゲームの是非
・ゲームの改良(M.A.カサソラ)―テストプレイの後に行われるバランス調整の方法
・立体ボードゲーム(H.ペール)―立体を使ったボードゲームの特徴
・ボードゲームにおける時間(H.ペール)―プレイ時間、ダウンタイム、実際に時間を使うゲーム
第3部:方法と試行
・試作品の制作ツール(C.バイアースドルフ)―コンピュータを使った製図の方法、ソフトウェア案内
・電源ありゲームの試作品(U.ブルム)―コンピュータを用いるボードゲームの開発
・創造的にシンプルに:形態表(R.ヴィティヒ)―システム・テーマ・舞台・用具・ターゲット・時間似合わせてアイデアを組み合わせる

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藪の中(In a Grove)

肉を切らせて骨を断つ

3人の容疑者の中から、誰が犯人かを予想しあう騙し合いのゲーム。『ストレイシーフ』に続いて物議を醸し、すごろくやさんが国産ベストに挙げるなど注目されているゲームである。
登場人物は8人で、2〜8の数字が書かれているものと、シロがいる。このうち毎回3人が容疑者となり、その中で一番数字が大きいのが犯人である。ただし、容疑者の中に「5」がいると、3人の中で一番数字の小さいのが犯人となる。残りの1人は被害者、4人は無関係の人。
8人のうち中身を見られるのは無関係の2人と容疑者2人だけ。これだけで予想するのは一か八かなので、ほかのプレイヤーの予想を手がかりにせざるを得ない。ほかのプレイヤーは別の人物を見ているので、その予想と自分が見た人物を対照すれば、より確率の高い予想ができるだろう……ただし、それはほかのプレイヤーがウソをついていなければの話。
毎回、犯人だと思う人物に自分のチップを出す。当たれば返ってくるが、ハズれれば裏にしてマイナスポイントになってしまう。ただし、後手番のプレイヤーも同じ予想をしてハズれると、そのプレイヤーにマイナスポイントを押し付けることができる。手持ちのチップが全部裏になるか、マイナスポイントが一定以上貯まったら負け。
予想が当たるのが一番で、わざとウソをつくメリットはあまりない。確率を無視した予想をしても後手番のプレイヤーが乗ってくるとは限らないし、仮に乗ってきてハズれたとしても、自分のチップが減れば負けに近づく。なので、ふざけないで真面目に予想しよう、ということになる。実際、登場人物が1人減る3人プレイでは、半数以上を把握できるため、全員正解という場面が多すぎてゲームが停滞する。
でも、そこがこのゲームのポイントなのだと思う。何ラウンドかに1回、確率が微妙なところでわざと低い方に予想する。すると次の人から混乱し始める。自分のチップを1枚失っても、敗者を出せればそれでよい。まさに肉を切らせて骨を断つ作戦である。
3人では全く盛り上がらなかったので4人で再戦。かゆかゆさんが鴉さんにチップを押し付けていったが、押し付けすぎて予想できるチップが減ってしまった。鴉さんもマイナスポイントが蓄積して死にそう。そこで予想が二手に分かれた。誰の策略だったか分からないし、素で間違ったのかもしれないが、かゆかゆさんが最後のチップを失って終了。あと一手で負けるというところでの予想が熱かった。
タイトルの通りもやもやしたゲームであるが、実況を交えながら遊び、意外な結末に一喜一憂すると楽しい。
藪の中
佐々木隼/オインクゲームズ(2010年)
2〜4人用/10歳以上/20分
すごろくや:藪の中