長井温泉ゲーム合宿
地元の温泉で行われている1泊のゲーム会に参加してきた。別館の一戸建て貸切のため何時まででも遊ぶことができ、自炊をすることで参加費が1人3000円程度。しかも本館の温泉には入り放題で、極楽のひとときを過ごすことができる。自炊も地元の食材を使った鍋で味も量も大満足。そんな快適さから、今回で17回目を数える。
今回の参加者は福島からくさのまさんとcarlさん、庄内から鴉さん、stさん、nagaさん、仙台から神尾さん、ぽちょむきんすたーさん、東京からかゆかゆさん、アメリカからけがわさん、そして私。遊んだゲームは次の14ゲーム。後日、個別にレビューとレポートをお届けする予定。
紫禁城(Die verbotene Stadt)
ランドルフが『ハイパーロボット』のコマの動きを使って作ったパズルチックなゲーム。お役人が城の中を駈け回って結婚衣装を集める。セットをしっかり集めた私の勝利。
クリエイショナリー(Creationary)
レゴブロックを使ってお題を当ててもらう創作ゲーム。レゴで事物を表現するのはとても難しく頭をかかえまくり。「フィヨルド」を当てた私&ぽちょむきんすたーさんチームの勝利。
レジスタンス(The Resistance)
2つの陣営に分かれて、スパイの正体を探る人狼系のゲーム。厳しい推理が求められるゲームが好評で、3ゲーム連続遊んだ。スパイが2回、レジスタンスが1回勝利。
ファブラ(Fabula)
ファンタジーのキャラクターになりきって、アイテムを使って物語を創造するお話ゲーム。得意不得意、好き嫌いがはっきり出る。かゆかゆさんが機転のきいたストーリーを作って2連続勝利。
ここで夕食。庄内名物のどんがら汁と、キムチ鍋でお腹いっぱいになった後は、恒例のボードゲーム交換会。毎回レギュレーションを工夫しており、満足度も向上していると思われる。
ぴっぐテン(Pig 10)
カードを出して10にすれば場札をもらえるカードゲーム。ただのカウントアップではなく、同じ数字を出せば数が上がらないのでジャックポットのようにカードが溜まってドキドキする。次の人ばかりカードを取ると陰謀説も。
ファンフェア(Fun Fair)
遊園地のアトラクションをモチーフにしたミニゲーム集。一人が指示を出して、もう一人が腕を動かすアナログUFOキャッチャーと、2人で腕を組んで、上だの右だの移動を覚えるジェットコースターに大笑い。最後のくじ引きもいい。
フリーズ(Freeze)
与えられたシチュエーションで寸劇をし、4つのランクを当ててもらうゲーム。1番を引いた人は偉そうに、4番を引いた人は卑屈に振舞う。謎のランク続出で腹を抱えて笑った。
プライバシー激辛(Privacy Scharf wie Chili)
とても個別には答えられないようなプライベートな質問を、皆で答えてイエスの数を予想するゲーム。いろんな妄想している人が多いことが分かった。
新世界(Neue Welten)
スイスのアップルトゥアップルこと『私の世界の見方』の拡張。基本セットに勝るとも劣らぬ強烈なカードが一杯入っているだけでなく、お題との相性もばっちりで見事。
おばけキャッチ(Geistes Blitz)
色も形も合わないコマを取るゲーム。大人ルールで取らないで呼ぶという場合が入ることで複雑さはパワーアップ。頭の中がぐるぐるで最下位。
ビーンストーク(Beanstalk)
落ち物パズルで資源を集め、建物を買ったり得点にしたりするゲーム。建物のバリエーションと発動タイミングでいろいろな成長の仕方があった。建物のコンボで鴉さんがダントツ1位。
藪の中
皆の推理をもとにして犯人を当てるゲーム。確率無視の肉を切らせて骨を断つ作戦で、ほかの人を疑心暗鬼に陥れる。自ら手に入る情報が限られる4人がほどよい感じ。
はやぶさ君の冒険
幾多の困難を乗り越えて惑星イトカワに行って帰ってくるデッキ構築協力ゲーム。トラブルカードがデッキの中にどんどん入ってきて、どんどんきつくなった成功。難易度を挙げるシナリオが入っていてもっと遊びたい。
捧げ物(Offrandes)
7人のキャラクターのパラメーターを上げて動物を神様に捧げ、名声を上げるゲーム。キャラクターを手に入れる競りの方法が独特ですごく考えさせる。牛を捧げまくって1位。
ファンタジスタ
ボードゲームには、デザイナーやメーカーが意図したターゲット(子供・ファミリー・フリーク)があり、それに合わせてシステムやイラストがデザインされている。
システムについていえば、子供向けは運を楽しむもの・記憶もの・ギミックものが代表的で時間は10〜15分くらい。フリーク向けは長期的戦略(ストラテジー)を楽しむもの・カードの種類が豊富なものなどで時間は2時間を超えるものも少なくない。ファミリー向けはこの中間で、短期的戦略(タクティック)を楽しむものが多く、時間は45〜60分くらい。端的には対象年齢の項目にこの違いが現れる。
このようなターゲットを逸脱して遊ぶのはまったくの自由だし、実際楽しいこともよくある。ハバのゲームは子供向けだが、『かくれんぼオバケ』のように大人が真剣に遊ぶとまるで別ゲームに変貌するものも少なくない。ただし、その結果つまらなかったとしても、自分をターゲットとしていないゲームを選んだ人間の問題であり、ゲーム自体に矛先を向けてはならない。ターゲットを逸脱して遊ぶということには、そのようなリスクがあるということは認識しておかねばならない。
さてその上で、ターゲットのマッチングをどこまで逸脱しても楽しめるかが、ボードゲーム愛好者のチャレンジであり、楽しみである。井上ひさし氏の言葉をもじると、
むずかしいゲームをやさしく、
やさしいゲームををふかく、
ふかいゲームをおもしろく、
おもしろいゲームをまじめに、
まじめなゲームをゆかいに、
ゆかいなゲームはあくまでもゆかいに
こんな風に遊べたら楽しい。メーカーやデザイナーが意図した遊び方をするだけでなく、その上に新しく創造的な楽しみ方を見つけられる人が勝者なのではないだろうか。
実際、ルールを一読しただけは想像もつかない妙手を見つけたり、誰もが予想できず、「ファンタジスタ」と呼びたい一手に魅了されることがある。単にひねくれただけ、奇を衒っただけの手になってしまうこともあるが。
難解なゲームの終盤、勝利への道筋があっさり浮かんできたときの興奮、運ゲームだと思っていたものに考えどころがあると気づいたときの唸り、完全情報公開ゲームで遊びの一手が後々効いてくる不思議、コミュニケーションゲームを真顔で遊ぶ中からこみあげてくるおかしさ、歴史をテーマにしたゲームで発見される登場人物の気持ち……そのような意外がまた、ボードゲームの醍醐味である。
このような遊び方は、経験者となった今のほうが得意かといえばそうでもなく、むしろ始めたばかりの頃に多く感じていた気がする。そんな感性を時折確認して、大事にしていきたい。