トレッキング・ザ・ワールド(Trekking the World)
目的地まわりの大渋滞
カードで移動して世界中の土産物を集めつつ、指定された名所を観光する旅行ゲーム。アンダードッグゲームズ(アメリカ)から発売された。
4ヶ所の目的地がオープンになり、各自3枚の手札をもってスタート。手番にはカードを何枚でもプレイして、その数ちょうどだけ自分のコマを移動する。「他のプレイヤーコマを追い越すことができない」というルールにより、目的地付近は渋滞が発生する。
止まったマスにお土産キューブがあればゲット。大陸ごとに最後のキューブを取った人、色別に最も多く集めているプレイヤーにボーナスがあるので、どこを通って目的地を目指すかも考えどころだ。
目的地にたどり着くだけでOKではなく、目的地カードに指示されたカードを支払ってはじめて、その目的地カードを獲得できる。カードが足りなければ次の手番はいったん目的地から離れなければならないので(移動はマスト)、移動に使うカードと支払うカードを振り分けて不足のないようにしたい。
目的地以外では、手札を補充するか、カード2枚を捨てて追加移動などの特殊能力が使える。こうして誰かが5枚の目的地カードを集めるか、6大陸のうち5大陸でおみやげキューブがなくなったらゲーム終了。目的地カードの得点やおみやげ最多ボーナスなどを合計して勝敗を決める。
カードは何枚でも使えるが補充は2枚だけなのでカツカツ。目的地カードは取られると新しいものが登場するが、次はどこが出るかわからない。たまたま近くに出現すれば嬉しいが、そうでないことも多いので、無駄足にならないよう、先取りできそうなところを目指す。また、目的地カードを取るとほとんど0枚になるので、そこからは回復するのに何回か手番を費やすことになる。無料の空港ワープを有効に使おう。
目的地カードのイラストが美しく、裏面にはびっしり観光解説があって、今どきなかなかできない旅行気分に浸ることができる。
Trekking the World
ゲームデザイン・C.ビンク/イラスト・C.ベルナートほか
アンダードッグゲームズ(2020年)
2~5人用/10歳以上/30~60分
スペースエクスプローラーズ(Space Explorers)
技術も人材も回さない
米ソの宇宙開発競争時代に、人工衛星、有人宇宙船、軌道ステーションなどのさまざまなプロジェクトを達成するリソースマネージメント&セットコレクションゲーム。使ったリソースが隣のプレイヤーに流れるクローズドエコノミーシステムがインタラクションを生み出す。
中央の場にはさまざまな人材カードとプロジェクトタイルが並んでいる。手番には場札から人材カードを取って予約するか、コストを支払って手札か場札から人材カードを自分の前に配置する。コストは最初から持っている研究チップのほかに、手札の人材カードを手放すことにより、ジョーカーとして使える。
研究チップを支払うと、左隣のプレイヤーに移動し、次の手番で使えるようになる。研究チップの総数はゲームを通して一定であり、後から追加されることがない。このクローズドエコノミー(閉鎖経済)システムによって、相手の出方次第で自分の出せるカードが変わってくる。棚ぼたで降ってきた研究チップで出せることもあれば、前の人がなかなか放出せず計画変更を余儀なくされることもある。
人材カードは自分の前に5カテゴリー(エンジニアリング、検査、研究、組立、宇宙飛行)に分けて配置するが、累積すればするほど、そのカテゴリーに配置する人材カードのコストが削減される。また、各カテゴリーで一番手前にある人材カードはスキルを使うことができ、その中にコスト削減されるものもある。こうしてカードが増えるに従って、よりコストの高いカードを配置できるようになっていく。
人材カードも得点になるが、重要なのは人材カードによるプロジェクトの達成である。各プロジェクトタイルには達成に必要な人材とカテゴリーが指示されており、その分だけ集めれば達成して高得点が得られる。ほかの人に先を越されないよう、また次のプロジェクト達成につながるよう考えて狙うプロジェクトを選びたい。また、その間にほかの人がリーチをかけていないか注意しよう。誰かが12人の人材カードを置くか、プロジェクトが全て達成されるとゲーム終了。プロジェクト、人材の得点に加えて、人材カードの条件を満たしていればボーナスもある。
研究チップは天下の周りものだと思っていたが、「安い人材は無料で配置できる」という能力で研究チップを節約したプレイヤーがチップを流さず、苦しい展開となった。同じカテゴリーの人材を増やしてばかりでは、複数カテゴリーで集めることが必要になるプロジェクト達成にも乗り遅れてしまう。なるほど、クローズドエコノミーでは貯め込んだ人が強いのだ。そのことに気づいたときにはすでに敗色が漂っていた。
技術・人材の囲い込みと、お互いそうしているゆえに起こる技術・人材の不足こそ、宇宙開発競争の大きな特徴だったのかもしれない。ウィンウィンはなく、勝つか負けるかの容赦ない戦い。それがロシア製のこのゲームのテーマなのかもしれない。ルール説明書にはこう書いてある。「このマニュアルは国家機密に当たります。取り扱いには十分注意すること。」
Space Explorers
ゲームデザイン・Y.ズラビリオフ/イラスト・A.コット
25センチュリーゲームズ(ロシア, 2017)+リゴレ(2021)
2~4人用/12歳以上/20~40分