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親子で夢中 盤ゲーム

本日付の朝日新聞朝刊23頁。

実写やアニメーションと見まがうばかりの映像を駆使したテレビゲームもあるなか、顔と顔をつきあわせる人間くさい仕組みが、子ども時代に遊んだ親の世代とその子たちに受けているらしい。

記事の中で取り上げられているのは人生ゲームと野球盤。人生ゲームは03年に70万個、04年に50万個が売れたという。今年はドラえもんとのび太の人生ゲーム(7月・発売中)、人生ゲームM&A(9月29日発売)、人生ゲーム芸人魂(10月)を発売し、さらなる飛躍を図る。野球盤は04年3月に「野球盤スタンダード」発売され、25万台。ボードゲーム後進国だなんて言わせない数字だ。

販売元のタカラ、エポック社は「家族や仲間と会話しながら一緒に過ごせる魅力が見直されているのでは」「互いに向き合い、互いの興奮が直接伝わる」と説く。これまでのこうした記事は子どもの頃遊んだ世代のノスタルジーに焦点を当てる傾向があったように思われるが、リアルなインタラクションに注目している点で、日本のボードゲーム文化もいくぶんか成熟しつつあると言えるのではないだろうか。

外箱を眺めてどうこう言っていた時代から中身を評価する時代へ。そうなればドイツゲームが入り込む可能性も高まってくるだろう。人生ゲームと比べると価格の面でも、ルール理解のしやすさの面でもまだまだ敷居の高いドイツゲームだが、傍流としてでもそれなりの太さを得られるのではないかと期待している。

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オーストリアゲーム大賞

今年のオーストリアゲーム大賞「シュピール・デア・シュピーレ(ボードゲームの中のボードゲーム)」がトランスヨーロッパに決まった。トランスアメリカのマップだけを変えたもので、ルール変更はほとんどないことを考えるとなぜこれが?という疑問を禁じえない。

過去の受賞作を見ても、これまでニューエントデッカー、プエブロ、アーサー王、頭脳絶好調が受賞してきたが、同じく焼き直しのニューエントデッカーと、発売するかしないというタイミングでインパクトだけで受賞してしまったアーサー王は、少なくともドイツではあまり評価されなかった。

オーストリア唯一のボードゲームメーカーと言ってもいいピアトニクについても、ドイツでの評価を確立するに至っていないように思われる。日本へは代理店の関係で入りにくいらしいが、話題になったのは古代ローマの新ゲーム、ハニーベア、香港などクニツィアの作品と、あと一部だけで、特に最近はたくさん発表しているのに評価が低い(フリント船長の財宝はよかったが)。

ここに、同じドイツ語圏でありながらオーストリアにおけるボードゲームの毛色の違いを見てしまう。カタンなどはそこそこ人気があるようだから、ボードゲームの理解度が低いというわけではないだろう。そうではなくて、オーストリア人がボードゲームに求めるものがそもそも違うのではないか。ドイツ年間ゲーム大賞でオーストリアゲーム大賞に入賞したのは、過去5年でカルカソンヌだけだった(審査員賞なので、意図的に外すということはありえる)。

オーストリアゲーム大賞を受賞し、ドイツでも評価されたプエブロと頭脳絶好調は、シンプルさが大きな売りだ。ルールを読まないと遊べない点で敷居が高いボードゲームにとって、シンプルであることが一般に受け入れられる必須条件ともいえる。しかしシンプルでありながら新しく、かつ楽しいボードゲームを作るのは実はかなり難しい。ピアトニクの不振もそのあたりにありそうだ。

翻ってみれば日本も、いやドイツでさえ、今この苦しみにはまりこんでいるような気がする。シンプルなゲームを作っても、面白くなければ売れないのだ。だからテーマで勝負したり、いっそのことフリークゲームに回帰したり、暗中模索が続けられている。

【後日談】アカデミーのカサン氏に「どうして焼き直しのトランスヨーロッパが?」という尋ねたところ、こんな返事が返ってきた。ゲームを選ぶという立場にある人は、これぐらいの自信がなければ。

「我々審査員は我々の決定基準に基づいてトランスヨーロッパに決定しました。この決定に釈明は必要ありません。」