エジツィア(Egizia)
置けるところがもうナイル
エジプトを舞台に、作業員の能力を上げ、石材を集めて、スフィンクス・オベリスク・ピラミッドを建設するボードゲーム。スカウトアクション7位、ボードゲームアンケート5位、プフェファークーヘル6位。時間こそ短かめだが、昨年のエッセンで発売された新作でも1,2を競うフリークゲームである。
作者はイタリア人チームのアッキトッカ。代表作として近年大流行中の「ワーカープレイスメント」(定数が限られたマスにコマを置いてアクションを選択するシステム)をいち早く取り入れた『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(2006年)がある。イタリア以外のメーカーから出すのは今回が初。そのせいかどうか分からないが、発売後すぐにルール質問がたくさん寄せられ、ハンス社は異例のルール改訂に踏み切った(もちろん、改訂前のルールでも問題なく遊ぶことができる)。
ナイル川沿いにラウンドのカードを並べたら、順番に1個ずつ自分のコマを置く。コマは、特殊能力を上げたり石材や食料を増やしたりするカードの上に置くか、作業員の能力を上げる丸いマスに置くか、後で石材と作業員を使って得点する建設場に置くかのいずれか。いずれも早い者勝ちというだけでなく、自分が前に置いたところより下流にしか置けないというルールがある。このルールのおかげで選択肢がどんどん狭められ、ゲームがスピーディに進むのは快い。
石材の仕入れと食料のチェック(飢えさせると失点)が済んだら、いよいよ建設に取り掛かる。3つの建設場があり、どこでも基本的に石材と作業員を使い、使った分だけ得点になる。石材も作業員も同じ数だけ使わないといけないので、どちらかだけ多くても意味がない。
まずはスフィンクスから。ここではスフィンクスカードを引き、1枚だけ選んで残りを得点にする。スフィンクスカードは、「ピラミッドが完成したら○点」とか「オベリスクに自分のコマが3つ以上あったら○点」など、ゲーム終了時に条件を満たしていれば高得点になる。取ったカードに従って建設の方針を立てるとよいだろう。
次にお墓とオベリスク。ここでは石切り場の性能を上げたり、飢えさせたときの失点を
減らすことができる。最後にピラミッドと神殿。ピラミッドは一段埋まるごとに、一番多く石を置いた人にボーナスがある。
このように、どの建設場も使った石材と作業員プラスアルファの得点がある。建設場には定員があるから、コマを置けなくて建設できないこともあるが、スフィンクスカードの状況を見てどの建設場に行くかを決めたい。
これで1ラウンド終了。次のラウンドは、得点の低い人から最初にコマを置く。こうして5ラウンドを行い、最後にスフィンクスカードなどのボーナスをもらって勝敗を決める。
ラウンドのカードは後半ほど強力になり、より大きな建設に挑むことになるが、作業員の能力を上げるほど食料も必要になり、飢えるリスクも高まるので気をつけよう。食料を供給する畑には、どんな天候でも食料を取れるものから、干ばつでは取れなくなるものまであり、天候を変えるマスに誰がコマを置くかも勝負の分かれ目となる。
満遍なく建設するtomokさん、ピラミッド重視のくさのまさん、墓場重視の私と分かれ、tomokさんがたくさんの石材で大量リードしたが、最終決算でくさのまさんがスフィンクスカードが実って逆転優勝。
覚えなければいけない細かいルールが多いが(特にカードのテキスト)、その分至るところにフリークの心をくすぐるゲーマー快楽ポイントが仕掛けられている。リソースの管理、建設の楽しみ、ワーカープレイスメントの駆け引き、ボーナスの戦略など欲張りなほどに詰め込んだこの作品、腕に覚えのある方は挑戦してみて下さい。
Egizia
アッキトッカ作/ハンス・イム・グリュック(2009年)
2〜4人用/12歳以上/90分
メビウスゲームズ:エジツィア
あいだの数(Himmel, A… und Zwirn!)
お天道様にケ○向けて
ドイツ語のスラング”Himmel, Arsch und Zwirn!(お天道様、ケツ、こより)”は「こんちくしょう!」というような意味。この「ケツ」を頭文字だけにして(汚い言葉なので隠したものか)タイトルにしたこのゲーム、カードには動物たちがみんなお尻をこちらに向けている。失敬な!
ゲームはシンプルなバーストゲームである。2つの数字の間に入るカードだけ出すことができ、出すたびに2つの数字の間はどんどん狭くなっていく。出せなくなったらバーストで、それまでに出たカードを引き取る。最後に引き取ったカードの枚数が少ない人が勝ち。
70と20だったら、あいだに出せるカードはたくさんある。でもここに誰かがいきなり60なんか出すと、次の人は70と60の間で出さなければならなくなって苦しい(上限はそのままで、下限だけがどんどん上がっていく仕組み)。と思ったら、みんながあっさり60番台を出してきて、自分の首を絞める結果になったり。
苦しくなったら、リバース、ほかの人の手札を抜く、上限を上げるという3種類のアクションカードでしのぐこともできる。でもぎりぎりでしのいだと思ったら、またリバースで戻ってきてしまったり。
勝敗はともかく、上限と下限が1番違いになり、数字カードはもう何も出せないというところで手番が回ってきた人が、周囲を見回し「こんちくしょう!」といってカードを引き取る顔を見るのがこのゲームの楽しみ。悪運の鴉さんがお約束どおりバーストしまくって笑った。
Himmel, A… und Zwirn!
K.クレオウスキ/ラベンスバーガー(2010年)
3〜6人用/8歳以上/15〜20分
メビウスゲームズ:あいだの数