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マカオ(Macao)

今日の卵より明日の鶏
資材を集め、建物や人物カードの能力を発動して、勝利点を上げるゲーム。アレアが2ゲームぶりに発売した大箱で、時間も4人なら2時間近くかかる重量級ゲームである。作者はこのところアレア・レーベルで作り続けているS.フェルト。すでに4作目となる。エッセン国際ゲーム祭の人気投票では『ヴァスコダガマ』『権力闘争』に次いで3位につけ、アレアの復活をアピールした(エッセンの人気投票は『ヴァスコ・ダ・ガマ』)。
ラウンドははじめカードを選ぶフェイズから始まる。プレイヤー人数分+2枚のカードが場に並び、コストと効果を吟味して1枚ずつ取る。しかし取っただけでは能力は使えない。カードに指示された資材を揃えなければならない。
次はその資材を手に入れるフェイズ。ダイスを振って、このラウンドに何色の資材がいくつ手に入るかを決める。各自ほしい資材が都合よく手に入るかという問題はあるが、ダイスの結果は全員共通で使うので、運の要素はそれほど高くない。
資材は1ラウンドに2種類しか手に入らない。ダイス目を見て、資材を選ぶところがこのゲームのキモであろう。というのも、1個だった資材はこのラウンドですぐ使えるが、2個なら1ラウンド後、3個なら2ラウンド後と遅れていき、最高の6個は5ラウンド後、つまりゲーム中盤以降にしか使えないという、クレバーなシステムがあるからだ。手に入れた資材は、円形のタイルの周囲の対応する箇所に置き、ラウンドごとに回転させて、矢印のところにきたら使えるようになる。
使える資材を取ったら、それを使って順番に好きなだけアクションを行う。前に獲得していたカードに指示された能力を発動したり、ボード上にある交易品を入手したり、船を進めて交易品を届けたり、貯めたお金を勝利点にしたりできる。
その中でも一番重要なのはカードの発動だろう。カードは一度発動したら毎ラウンド使うことができ、累積するのでさまざまな組み合わせが起こる。無料で資源が手に入るもの、資源を収入にできるもの、収入があるとボーナスがあるもの……そんなふうにカードを積み重ねて皆が羨むウハウハな状況にしたい。
後半になると資材がたくさん入ってきて、カードの効果が累積し、どんどん得点が入ってくる。でも終盤になると資材があまり入らなくなるので、どの時点でダッシュするかが勝敗を分けそうだ。
交易品を取るたびに海岸線マーカー(手番順を決める)が進む能力で終始スタートプレイヤーを握ったにもかかわらず、集めたカードの系統がばらばらで精彩を欠き3位。特に現金収入の手を抜いたために、大きな勝利点を何度も逃したのが痛かった。手持ちの資材を見てカードを選ぶのではなく、カードを見て集める資材を考えたほうが正解だったかもしれない。
前半は資材が少なくてカードが発動できず、出航もできないのに、後半になるとどんどんカードや船が動き出すという成長曲線はいびつに感じなくもない。あと、ほかの人がカードのコンボ処理に時間がかかっている間のダウンタイムが長い。しかしその2点を気にしなければ、上記のようにクレバーな資材入手システムと、ウハウハなカードのコンボ作りが面白いゲームである。
Macao
S.フェルト/アレア(2009年)
2〜4人用/12歳以上/90分

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『ドミニオン』より評価されたゲーム

2009年度の各国のゲーム賞状況をまとめたところ(ボードゲーム各賞受賞2009)、『ドミニオン』より評価されたゲームが予想より多かった。『ドミニオン』はドイツ年間ゲーム大賞、ドイツゲーム賞、アラカルトカードゲーム賞の3冠を達成しているが、不思議なことにドイツ以外のゲーム賞はノミネートや入賞止まり。大賞や1位に選んだのはフィンランドしかない(日本は投票中なので、まだこれからだが)。お国柄だろうか、それとも『マジック:ザ・ギャザリング』ぐらい従来のゲームとはかけ離れた印象をもたれたのか。
では、『ドミニオン』より評価されたゲームとは何だったかというと、まず『ディクシット(Dixit)』である。もともとフランスのゲームだが、フランス年間ゲーム大賞、スペイン年間ゲーム大賞、フランストリックトラック賞3位(『ドミニオン』は4位)という高い評価を得ている。絵のイメージを言葉にして、できるだけ少数の人しか分からないように伝えるというユニークなコミュニケーションゲーム。ルールが至極簡単なので年齢やプレイ経験を問わず勧められ、また美しいイラストも楽しめるのはすごい。追加イラストを加えた『ディクシット2』も発売予定になっているようだ。国内の評判はこちら

次は『スモールワールド』。これもフランスのゲームだが、国際企業であるデイズ・オブ・ワンダー社から発売され、アメリカのゲーム100選で大賞、フランスのトリックトラック賞で1位に選ばれている。フェデュッティのマイゲーム大賞も獲得した。内容は能力の異なるファンタジーの種族を次々に変えて戦闘を繰り広げる戦争ゲームである。ドイツでは年間ゲーム大賞が完全に無視し、ドイツゲーム賞も5位止まりとなっていて、国によってこうもはっきり評価が分かれるものかと驚く。日本語版になってもなお遊びにくいという人が多い日本での評価はこちら
そして『ルアーブル』。フランスを舞台にしているが、ドイツのゲームである。いろんな能力を持った建物を建てて資産を増やす拡大生産系のボードゲーム。ドイツゲーム賞では2位だったものの、1位の『ドミニオン』とは倍近くポイントの差がついている。評価したのは英語圏の選者が多い国際ゲーマーズ賞で大賞、フランスのトリックトラック賞で『スモールワールド』に次ぐ2位。日本語版は『アグリコラ泥沼』などの新作に押されて発売が遅れている模様だ。
そのほか、オランダゲーム賞は1〜3位が『アグリコラ』、『パンデミック』、『ストーンエイジ』(4位が『ドミニオン』)で、オーストリアゲーム大賞はレゴゲームの『ラムセスのピラミッド』を大賞に選んでいる。
以上を見ると、アメリカのゲームである『ドミニオン』を含め、ドイツゲームが少ないのが今年の特徴である。ドイツゲーム賞ですら、外国のゲームが10位以内に4タイトルも入っている。面白いゲームはどこの国のものであってもすぐ世界中に広まり、そうでないものはすぐに埋もれてしまう。ドイツの大手メーカーであっても安泰ではない。