トゥルネー(Tournay)
9枚のカードで街づくり
昨年、ダイスを使ったワーカープレイスメント『トロワ』で一世を風靡したベルギーのパールゲームズが、同じデザイナー陣で臨んだカードゲーム。ドイツのボードゲーム専門誌「フェアプレイ」が行った人気投票で1位に選ばれた。カードゲームだけあって、90分クラスの『トロワ』より時間は短くプレイ感は軽い。でもカードが多彩なこともあって、1日に何回もやりたくなる魅力がある。
舞台はフランス国境に近いベルギー最古の町トゥルネー。エッセンで購入したときにはトゥルネーの観光ガイドまでついてきた。9世紀にノルマン人に征服された町を復興させ、名声を競う。建物と人物を3×3の区画に並べ、そのさまざまな特殊能力を活かして収入や得点を得る。
このゲームでも市民コマが登場し、アクションポイントのように使う。手番にはカードの獲得、建物の使用、災害の除去、お金の獲得から1つを行うが、そのたびに手持ちの市民コマを使用していく。使った市民コマは、1手番使って回収するまで返ってこない。市民コマをどこまで増やし、どの時点で回収するか、効率よく行わなくてはならない。
カードは赤白黄色の3種類があり、それぞれ3つのレベルに分かれているのがポイント。レベルが高いカードほど強力で、特に終盤に欠かせない名声建築物はレベル3に入っている。そしてカードを取るにはレベルの数だけ市民コマを使う。最初はレベル1しか取れなかったのが、徐々に上のレベルに手が出るようになるのは成長の楽しみがある。
しかしカードは取って、区画に置いただけでは使えない。建物の使用にも市民コマが必要となる。市民コマが少ないのに無理してレベルの高い建物を取っても、市民コマが足りなくて使えないのでは宝の持ち腐れ。序盤はレベルの低いカードをどんどん使っていくほうが得策だ。
カードを区画に置くにはお金が必要。レベルの高い建物ほど金額も上がる。このお金の捻出もゲームのカギだ。市民コマを使えば収入が入るが、収入を生み出す建物を使うほうが効率がよい。
カードの山札には「廷吏」というカードが入っており、これが出ると災害が発生する。どんな災害が発生するかはイベントカードで予め分かり、全員お金を取られたり、市民コマを倒されたりする。予め市民コマやお金を払って災害を除去した人は、その後の災害を1回だけ回避できる城壁がもらえる。
「廷吏」が一定数出るか、名声建造物付きで区画を埋めた人が出たらゲーム終了。ここから、最後の得点計算でひと捻りある。それが名声建造物で、建物や市民コマの数に応じて得点を得るが、ほかの人も同じ条件で得点できてしまう。自分よりほかの人のほうが得点が高いということにならないよう、自分の路線にあった建物を選びたい。
はじめは基本ルール。carlさんの名声建造物に乗っかった私が勝利。面白かったのでそのまま上級ルールへ。最初の市民コマが減り、攻撃的な建物が入って、より戦略的になった。全員の建物にダメージを与えられる兵器に酔いしれているうちに、肝心の名声建造物に着手するのが遅れてしまう。勝者は、災害対策をしっかりしつつ、建物を1種類に絞って大量得点したくさのまさん。
市民コマとお金が不足しないようぎりぎりまで使うには、カードのコンボや、アクションの順番もよく考えなくてはならない。その一方でコンボになるようなカードをうまく引けるかという運の要素もあって、テンポよく遊べるゲームである。
Tournay
S.ドゥジャルダン、X.ジョルジュ、A.オーバン/パールゲームズ(2011年)
2〜4人用/12歳以上/30〜60分
テンデイズゲームズ:トゥルネー
テンデイズゲームズ、大忙し
所用で上京した折に、三鷹のボードゲーム専門店テンデイズゲームズに立ち寄ってきた。東京から中央線で30分。歩いて10分弱。
お店に入るとたくさんのダンボール箱が積まれていた。『トゥルネー』『シティタイクーン』『K2』……12月になって注目の新作が次々と入荷したり、年末年始が近づいたりして、注文が殺到しているという。ルールを印刷して、折って袋に入れて、ゲームに貼りつけて、注文に沿って箱詰めして、発送ラベルを貼るという作業。イラストレーターの森木ノ子さんまで駆り出されて、工場のような風景である。
そんな忙しさもおかまいなく、あれやこれやとしゃべっているうちに2時間半。その間にやってきたお客さんも一緒に、このゲームはあーだ、あのゲームはこーだと楽しいひとときを過ごした。キッズゲームやパーティーゲームに独自のルールを作って創造的に盛り上げる話とか、ショップが値段や送料無料以外で勝負できるものは何かという話とか。
ショップによって、あまり声をかけずお客さんにじっくり選んでもらうというところもあれば、積極的に声をかけて、おしゃべりしながらコーディネートするというところもある。テンデイズゲームズは後者で、セールストークを感じさせない話しかけは、抵抗感なくつい引きこまれてしまう。タナカマさんが家電量販店で働いていた経験が生きているのだろう(家電量販店も、つい相談したくなる人とそうでない人がいるが)。
地方でなくても、ボードゲームを複数購入するとなれば、運ぶのが大変だから通販を利用するのが便利だ。なので通販の比率は必然的に上がる。でも、実店舗で未知のゲームをいろいろ紹介してもらえば、その人が宣伝塔になって近隣に顧客が開拓される。そうやってじわじわ広がっていくことが大事なのだと思った。
帰り間際に『ラトゥキ(Ratuki)』というカードゲームを遊ばせてもらう。手札から場にカードを出していち早くなくしつつ、皆が出してたまった場札を集めて得点にするというスピード系のゲーム。カードは1〜5とラトゥキがあり、場に出すときは1から始め、一番上に置かれたカードから±1のカードを出せる。5を出すか、ラトゥキカードを出せば場札を取れる。場札がいくつもあるのと、カードは1〜5がいろいろな数字で書いてあるので一見して分かりにくいのがひねり。場札がとこまで溜まったところで取りにいくか、そして狙いがかぶったときいかに早くカードを出せるかが勝負である。
そして今年話題になっていたのに未プレイだった『ダンジョンレイダース』を購入して帰途につく。忙しいところ長居しておしゃべりにお付き合いして下さったタナカマさんと森木ノ子さんに感謝。ありがとうございました。
テンデイズゲームズはドイツのアンケートで上位に入った話題の新作『コロニアル』の限定販売を行なっている。販売は抽選で、申込期限は今日の23:59まで。詳しくはホームページにて。