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サンティアーゴ・デ・クーバ(Santiago de Cuba)

一足お先に積み込んで
「聖ヤコブ」から名前を取ったサンティアーゴは、チリの首都のみならず、中南米、ヨーロッパ、アフリカの各地にある。このゲームではそのうち、キューバ南東の都市が舞台。『キューバ(及び拡張エル・プレジデンテ)』『ハバナ』に続くエッガートシュピーレ社のキューバシリーズ第3弾となる。作者は『キューバ』と同じく、M.リーネック。もう1人のS.シュタドラーは入っていない。エッセン国際ゲーム祭のスカウトアクションで9位。
ロンデルをメインにした、ドイツゲームらしい骨太なリソースマネージメントゲームである。環状になったマスを移動してサトウキビ、柑橘類、タバコを手に入れ、建物の効果でラム酒、葉巻に加工して、港に停泊している船に積み、勝利点を稼ぐ。
サンティアーゴ・デ・クーバ
はじめにサトウキビ2個、柑橘類4個、タバコ2個、ラム酒1個、葉巻なしというように、今回の船が必要としている品物がダイスで決められる。これらを集めて、ほかの人より先に積み込むのが目標だ。
手番には10マスあるメインストリートを、全員共通の車で回る。右回りで、1マスは無料、2マスは1ペソ、3マスは2ペソというようにたくさん進むほど費用がかさむという、いわゆるロンデルシステム。各マスにはキューバ人がおり、品物やお金などを取ることができる。
その後、止まったマスに対応する建物を1つ使う。建物ではタバコを葉巻に、サトウキビをラム酒に加工したり、得点をお金に換えたり、船にすぐ積んだり、キューバ人を使えなくしたりできる。
キューバ人は、お金の制限があるので事実上2〜3択、建物は対応しているものに限られるので3択しかない。選択肢はあまり多くないのでプレイ感はすっきりしている。それでいて十分悩ましいのはドイツゲームらしい。
メインストリートの中に、港があって、ここに止まると船への出荷が始まる。手番プレイヤーから1種類ずつ、船の需要まで積み、その分の勝利点を受け取る。ほかの人も積めるので、自分が極端に有利なチャンスはなかなか回ってこない。その代わり港を飛ばすと、積んだときの勝利点が上がる。港にしばらく止まっていないとジャックポットのようになるのがエキサイティングだ。
勝利点は品物を船に積まなくても、キューバ人や建物で徐々に増やすという手もある。さらにキューバ人の中に建物を所有できるのがあって、ほかの人が使うたびに毎回、得点が入るようになる。しかし得点を取らせてもその建物を使いたいか、それとも効果はあまりなくても所有者のいない建物を使うかという悩みが、後半に生まれる。
船は荷物をすべて積むか、港を3回通過したら出港し、次の船がやってくる(品物の数はダイスで決める)。7回船が出たら終了。
序盤はお互い牽制してなかなか出港できない。そのうちcarlさんが千載一遇のチャンスでタバコを出荷し大量得点。その後もダンサーのマリアで手堅く稼ぎ1位。くさのまさんは早いうちに建物を所有していったが、思ったほど使ってもらえなかった。carlさんの次手番で品物がかぶっていた私は出港が遅れた。
コマの種類も選択肢も少ないのに、悩むことは多い。得点の仕方はいくつかあるが、どれに偏っても勝てない。要素をぎりぎりまで絞り込んだ濃厚なプレイ感がよかった。
Santiago de Cuba
M.リーネック/エッガートシュピーレ(2011年)
2〜4人用/10歳以上/60分
ゲームストアバネスト:サンチアゴ・デ・キューバ
ショップ検索:サンティアーゴ・デ・クーバ

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7つの島(7 Islands)

デッキ構築して島に上陸!
海賊たちが船員と道具を駆使しながら7つの島を冒険し、勝利点を集めるゲーム。『がむしゃらギャング団』や『グリモワール』など妥協のない作品を発表し続けているワンドローが、デッキ構築にボードやチップを加えて新しい境地を開いた。春のゲームマーケットで初版70個が売り切れ、7月に萬印堂で140個再版されたがまた売り切れていた。ようやく第2版が来年3月に再版される。ワンドローに対する国内外の注目度を考えれば、少なすぎる製作量だろう。
ゲームの流れは『ドミニオン』と同じ。アクションカードを出してその効果を使い、カードのコインで新たなカードを購入し、手札を捨てて5枚引くというもの。銅貨7枚を含む10枚のデッキから始め、山札が一定数なくなるか、最高点の山札がなくなるかで終わる。アクションカードは16種類あるうち毎回8種類しか使わない。これらはデッキ構築共通のプラットフォームといえるだろう。『ドミニオン』経験者には説明を省けるので楽である。
7つの島
このゲームの新しいところは、島ボードとそこに置くコマ、そして食料チップである。この存在が、プレイ感をがらりと変える。『ドミニオン』の作者D.ヴァッカリーノがドミニオン・ボードゲームを作っているという噂を聞いたが、そのアイデアを先取りしたかたちになった。
島ボードにコマを置いたり移動したりするアクションカードがある(「クエスト」)。島にはいくつかのマスがあり、指定された数のコマを置くと、カードとは別の特殊効果が得られる。しかし発動するには、それぞれのマスの定員を満たさなければならない。効果が強いほど定員が多く、人が集まるまでなかなか発動しない仕組みだ。同じマスに複数のプレイヤーが置けるので、協力や相乗りで早めの発動を狙うが、中には一番多く置いた人しか取れないものも。
ちなみにタイトルの「7つの島」から、毎ゲーム1つの島しか使わない。これにより、アクションカードの効果とのさまざまな組み合わせが楽しめるだけでなく、島ごとに決められたシナリオによって全く異なる展開が待っている。リプレイ欲求が強く刺激される。
もう1つの要素、食料チップも面白い。アクションカードの船員を使うとき、食料チップを支払わないと出せない。食料チップさえあれば何枚でも船員を出せるが、食料チップを増やすアクションカードで適宜補充していないと何も(カードの購入すら)できなくなる。『アグリコラ』や『ル・アーブル』にも通じる食料のマネージメントは苦しく、そしてやりがいがある。
「始まりの冒険島」をプレイ。クエスト重視と、アクションカード重視に大きく分かれた。私はアクションカード重視で即効性があったが、次第にクエストの効果が現れ始める。結局クエストにほとんどコマを置かなかったのと、圧縮が中途半端だったのが影響して敗北。アクションカードとクエストのバランスをどう取るかが、勝敗のコツのようだ。
カードを選んでコンボを構築する戦略性と、ほかの人のコマの置き方を見てクエストにコマを送る戦術がうまく絡みあって、絶妙なゲームになっている。今年はエッセン出展がかなわなかったが、海外でも高い評価を受けそうだ。
7つの島
木皿儀隼一作/ワンドロー(2011)
2〜4人用/12歳以上/30〜50分
Amazon.co.jp:7つの島 第2版