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祈り、働け(Ora et Labora)

祈るのは働いた後にゆっくりと
祈り、働け(全景)
牧師たちが修道院の周りに豊かな村を作るU.ローゼンベルク作の箱庭系ゲーム。『アグリコラ』『ル・アーブル』の後継作として今秋発売され、日本語版も年明けにリリースされる。もっぱら『ル・アーブル』のシステムを継承し、多彩な建物のコンボと、豊富な資源のマネージメントをとことんまで楽しめるゲーマーズゲームだ。
祈り、働け:スタート図
はじめは、小さな村からスタートする。自分の番には、建物を1つ使うか、木材・ピートを取るか、資源を使って建物を作るかのいずれかのアクションを行う。最初の建物は、レンガを取る「丘陵」、家畜か小麦を取る「農場」、お金を取る「修道院本館」しかない。木材は自分の村から森林カード、ピートは泥地カードを取り除くことによって得られる。『アグリコラ:泥沼からの出発』にあったシステムだ。
祈り、働け:アイテム盤祈り、働け:アイテム盤2
資源がいくつ取れるかは、この円盤で決まる。毎ラウンド1つ回すと全てのアイテムの数が増え、取ったアイテムは0になる。誰も取らなければ累積していくという『ル・アーブル』の仕組みを、手軽な操作で見やすくしたのは素晴らしい。
建物を使うには、3人いる自分の牧師を1人置く。お金を払えば、ほかの村に牧師を置かせて効果を使うこともできる。牧師は3人使い切らないと戻らず、それまで1度使った建物は使えないので、回転を早くするか、いろいろな建物を満遍なく使うことになる。せっかく建てたのに、ほかの人に使われてしまってがっかりということもある。
スタートの建物で取れる6種類の資源のほかに、ゲーム後半には石材やブドウも登場する。建物を作るには、場に並んでいる中から、必要な資源を払って自分の村の空き地に置く。ゲームが進むに連れて、より効果の強い建物も登場する。
祈り、働け:アイテム
建物によって、資源を加工していく。家畜は肉に、小麦は小麦粉にしてパンにしたり、麦芽にしてウィスキーやビールにしたりできる。こうして、エネルギーや食料や勝利点を増やしていくのだ。終盤になるほど、勝利点になる本、陶器、装飾物、聖遺物、奇蹟(右下)が重要になっていく。資源は「1つ足りない!」「無駄にとって余った!」ということがよく起こり、的確なマネージメントが勝敗を分ける。
祈り、働け:最終図
(「屋敷の丘」を建てる場所が間違えてました。これは斜面にしか建てられない村です)
何ラウンドかに1回、村フェイズというのがあって、必要な食料やエネルギーを支払って空き地にに村カードを1枚置ける。この村カードは、上下左右にある建物の「居住価値」を勝利点に換えるもので、重要な得点源だ。村を作るのにたくさんの食料が必要になるのは、『アグリコラ』『ル・アーブル』の食料供給フェイズと同じだが、このゲームでは出せなかった人がペナルティーではなく、出せた人がボーナスになるのがいい。
終盤は、数多くの建物からどれを建てれば(使えば)一番得点が高いかを、慎重に計算して選ばなければならない。この詰めがまた非常に頭を使う。得点計算は、村の得点、建物の得点、アイテムの得点を合計。ひと目では計算できないので、誰が勝者か最後の最後まで分からない。
ふうかさんは家畜を減らさず収入できる紡績工場で一稼ぎして、さらに精肉所で大量の家畜を肉にするコース。karokuさんはピートを泥炭にし、燃料屋でお金にしていた。私は小麦からウィスキーとビールにしていく作戦。それぞれに得意とする資源が分かれ、面白い展開となった。
プレイ時間150分。最初は乏しかった資源がどんどん豊富になり、高級な建物が次々作られていくさまが愉快だが、最後は頭を使いすぎてウニになりそう。村は建物の効果で1つ多く作ったふうかさんが一番、建物は高級な建物に絞り込んだkarokuさんが一番だったが、最高級アイテムの奇蹟を2つ作った私が勝利した。
やりこみたい人には建物の一覧やコンボ解説が付録についており、もっと手軽に遊びたい人には毎回資源が無料で配られるショートゲームも用意されているので、いろいろな楽しみ方ができそうだ。
Ora et Labora
U.ローゼンベルク作/ルックアウトゲームズ(2011年)
1〜4人用/10歳以上/120分
ホビージャパンより日本語版が2月発売予定
ふうかのボードゲーム日記:祈り、働け

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ボードゲームサイト史(2006-2010)

前回の続き。2000年代後半はブログ全盛期。ここに挙げるサイトも、全てブログになっている。ブログは手軽に更新できる分、継続が難しいという面もあるが、定期的に更新し続けているサイトからは、ボードゲームへの愛が感じられて嬉しい。
高円寺0分すごろくやURL) 2006-現在
2006年にオープンした高円寺のボードゲーム専門店のブログ。ゲーム紹介は写真を加工して楽しく分かりやすく見せており、しかもキッズゲームからフリークゲームまで幅広い。管理人丸田さん。
遊星からのフリーキックURL) 2006-現在
デザインの観点から分析した本格的なボードゲーム評論が読める。これだけ鋭い評論を読めるのは実録:食卓遊戯密着大本営発表廿四時以来だと思っていたら、管理人のてらしまさんは『テラフォーマー』などでデザイナーとしても鮮烈なデビューを果たした。
新潟ボードゲーム倶楽部URL) 2006-現在
ゲーマーズゲーム・レビューの極北。自分が考えた戦略と、実際の展開を対比させたレポートは読ませる。複雑なゲームの面白ポイントを的確に捉えるだけでなく、ときには辛口も辞さないところが信頼される元となっている。管理人タカハシさん。
週刊じゃむたん通信URL) 2006-現在
タイトル数の非常に多いレビューサイト。簡潔でコンパクトながら、要所を捉えていて分かりやすい。最近はプレイにレビューが追いついていないようだが、ブログに時折近況が報告されている。管理人karokuさん。
ふうかのボードゲーム日記URL) 2007-現在
青は藍より出でて藍より青し。週刊じゃむたん通信のプレイヤーだったふうかさんが、ものすごい勢いで遊んだゲームをレポートしている。ゲームのルールよりも、実際の展開を細かく記録していて、臨場感たっぷり。
海長とオビ湾のカジノロワイヤルURL) 2007-現在
ほかではあまりレビューを見かけないゲームを積極的に取り上げているサイト。特にカードゲームに強い。10段階評価と楽しい所感を読んでいると、つい欲しくなってしまうことも。管理人の海長とオビ湾さんは2人だと思っていたが1人。
ボードゲーム CU部URL) 2008-現在
重量級ゲームの展開と感想を、写真と共に手間をかけて詳細に伝えるレポートが読み応え抜群。ウォーレスの作品など、ルールを要約しただけでは分からない作品も雰囲気が飲み込める。管理人のウサギさんは今年、横浜にリサイクルショップCUBEをオープンした。
俺ビューURL) 2008-現在
レビューはアメリカゲームやデッキ構築ゲームを中心に幅広く紹介。注目の新作リリース情報も早い。管理人のとがわさんはポッドキャスト「ホットボードゲームプレス」にも出演中。
浅く潜れ!URL) 2009-現在
図解入りで詳細にボードゲームを紹介するブログ。たくさんの写真を使い、写真に文字を入れ、楽しめるポイントや評価をまとめるなど、工夫を凝らしていてたいへん参考になる。管理人やおきんさん。
nemmy stackURL) 2010-2011
リリースから和訳公開まで、国内外のニュースを毎日、網羅的に集めてリンクしていたニュースサイト。一時期、TGWはここからニュースを選ぶ状態になったこともある。残念ながら半年で休止になってしまったが、再開を強く待ち望む。
The Boardgame LaboratoryURL) 2010-現在
レビューから和訳まである総合サイト。ゲーム紹介は、レビューでしっかりゲームの流れを説明した上で、プレイレポートも写真を多用し、最後にオススメ度と評価を詳しく書きこむ。管理人COQさん。
ボードゲームおっぱいURL) 2010-現在
ボードゲームポッドキャストを定期的に配信している。バブル大佐とマダムザザ(どちらも男性)が2人で飲みながらボードゲームの話をするのが、どんどん脱線していくのが面白い。CDに焼いて、車の中で聴くほど好き。
部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女URL) 2010-現在
個人輸入の仕方やボードゲームの社会的認知など、レビュー以外のエッセイにも力を入れている。意見は至極真面目なのに随所に笑いがさりげなく散りばめられており、読んでいて楽しい。管理人jun1sさん。
以上、約15年にわたって管理人が見てきたサイトを紹介した。このほかにも、読者の皆さんにとって思い出深いサイトがたくさんあることと思うので、コメントかツイートして頂けたら幸いです。すでに動画サイトも始まっているが、これからまた5年、10年とどんなスタイルのボードゲームサイトが生まれるか楽しみにしよう。
ボードゲームサイト史(-2000)
ボードゲームサイト史(2001-2005)