社長も楽じゃないよ
先日、経済産業省の元審議官がインサイダー取引容疑で逮捕された。半導体大手の企業の株券が上がるという情報を、職務を通じて入手し、値上がりする前に妻名義で購入し、値上がりした後売却して200万円の利益を得たという。
インサイダー取引は株式の信用を揺るがす行為であるが、自分だけ知っているという優越感は魅力的なのだろう。しかしこのゲームでは、インサイダー取引ができる立場でも、配当を得るため株価を上げるほうがずっと難しいことが分かる。おいしい話はそうそう転がっていないものだ。
『フォーラム・ロマーナムの商人』など、カードゲームとは思えないプレイ感たっぷりのゲームを作っているイゼンゼー出版。2005年から毎年1タイトルずつコンスタントに発表しており、注目すべきメーカーになりつつある。
ゲームは株の売買フェイズと配当フェイズを繰り返す。登場するのはカロ・コーラ社やエッペル社など6社。売買フェイズでは好きな株を購入・売却できるが、一度にたくさん買ったり、独占したりはできない。各社別に、一番多く株券をもっている人が社長になる。
分配フェイズではまず、自分が社長をしている会社で、株の購入に使われたお金カードを取る。お金カードの裏は会社の名前と数字が書いてあり、5枚の分配カードの上に出していく。1の上には2、2の上には3というように上書きでき、全員がパスしたとき一番上にある会社の株価だけが上昇し、配当がある。上書きされたり、そもそもカードが出されなかった会社の株価は下がり、配当も行われない。
配当は、一番上にある会社の社長が、そこに置かれたお金カードを自分と、その株をもっている人に配るというかたち。社長は1枚多くもらえ、苦労が報われる瞬間だ。
再び株の売買に戻る。売却は、1社ならば一度に何枚でも売れる。そして売った枚数だけ株価が下がる。高くなったところで、ほかの人より先に売り抜けたいものだ。売却益はスイス銀行口座に入金され、誰かが2500万ドルに達したラウンドに持ち金の多い人が勝ち。なお、口座から現金を下ろすときは200万ドルにつき100万ドルの税金がかけられるので要注意。
カードの流れは、手札→各会社→分配カード→手札となっている。この流れをつかんで、自分に有利なカードをキープし、あわよくばほかの人から奪うのがポイント。自分が社長を務めている会社の強いカードをもっていれば株価を自由自在に上げ、最高値で売るチャンスが回ってくる。ほかの人が社長でも、いいカードを持っていたら株を買いにいったほうがよい。誰も知らない手札の中身にインサイダー取引のかおり。
ほかの人が手を出さないうちに緑の株をすぐ値上げしていったdjさん。独占状態で最高値で売って一挙にトップ。そのままhataさんの株も一足お先に売り抜けて1位となった。tomokさんは社長になった株をみんなに買われて資金が回らなくなり、最後まで浮上できず。社長の座を手放したくなくて、誰も終盤まで株を手放さなかったので、最後の最後に大暴落が起きてすごかった。
Aktienrausch
F.イゼンゼー/イゼンゼー出版
2〜5人用/10歳以上/30分