急がば回れか、善は急げか
魔法のポーションをあちこちのお城に届ける配達ゲーム。名作カードゲーム『魔法にかかったみたい(2008年)』のリメイクながら、今年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞にノミネートされた。ほかのプレイヤーとかぶらないようにカードを選択する読み合いを、ゲームボードを使って可視化したものである。
『魔法にかかったみたい』は、全員同じ内容のカード12枚から5枚を選び、そのカードを使って魔法の材料を集めたり、集めた魔法の材料で飲み物を作ったりしていき、出来上がった飲み物の点数を競うゲームだった。トリックテイクのシステムを応用しており、同じカードを選んだ人は出さなければいけない。カードを出すとき、効果の強いほうと弱いほうを選ぶことができ、強いほうは後の人が同じカードを出すと何もできなくなるが、弱いほうは確実にできる。どちらを選ぶか、ほかの人の状況をよく見て考えるところが面白さである。
『ブルームサービス』もこのシステムを踏襲しており、全員同じ内容のカード10枚から4枚を選ぶ。そのカードを使って飲み物を集め(こちらはすでに完成している設定)、近隣のエリアに移動し、そのエリアにある塔に届ける。雲があるエリアには入れないので、「雲の精」というカードで取り除かなければならない。同じカードがあれば出すところも、効果の強いほうと弱いほうを選ぶところも同じだ。
違いはゲームボードにある。ゲームボード上には自分のコマが2つあり、これが「魔女」というカードで移動していく。森、山、丘、畑、湖という5つの地形があって、湖以外、それぞれ対応する魔女カードがある。カードを選ぶとき、ほかのプレイヤーがどのエリアを目指しているか、コマの位置で推し量ることができる。少なくとも、後のプレイヤーが移動しないはずの地形があれば、その魔女を効果が強い方で出してもよいだろう。また、各エリアにある塔は配達できる飲み物の色が指定されているので、手持ちの飲み物を見ればどこに配達に行きたいかも読める。
アクションはトリックテイクのように、スタートプレイヤーが1枚カードを出して効果を選び、時計回りにほかのプレイヤーも同じカードをもっていれば出して効果を選ぶ。もっていなければパス。効果の強いほうを実行できた人が次のスタートプレイヤーとなる。最後に出す番であれば、もう覆されないから効果の強いほうを確実に実行できるが、最後から2番目だと微妙なところだ。「こんなアクション、するつもりないでしょ?」「ざまあ!」
飲み物を配達するたびに得点が入り、最後に除去した雲の数や手元に残った飲み物などでボーナスが入って合計の多い人が勝つ。
『ブルームサービス』の新しいところとして、毎ラウンドはじめにめくられるイベントカードがある。「このラウンドの最後にこの地形に自分のコマがあったらマイナス点」「選べるカードを減らすと得点」など、戦略に大きな影響を与える。さらに選択ルールで、雲や、各地形に置かれているチップで特殊効果が発生するルールもある。
4人プレイで90分。ボード上を見ると、とても点数の高い塔(ボード右上の緑の7点)があるのでとりあえずそこを目指すことにした。幸い誰とも競合せず早い段階でその塔に到着し、ほとんど移動せずに飲み物を手に入れては配達する体制を築いた。強いほうの効果や雲の特殊効果で得点を増やして1位。『魔法にかかったみたい』よりもカードが少ないためにバッティングしやすくなっており、その分考えることが多い。弱い効果で着実にいくか、勇気を出して強い効果を選ぶかが常に悩ましい。
Broom Service
A.ペリカン/アレア(2015年)
2~5人用/10歳以上/45~75分