オボンダービー(Obon Derby)
ご先祖様に早く帰ってきてほしいあまり
お盆のお供え物として飾られる足を付けたキュウリやナス。ご先祖様が早く帰ってこれるようにという願いが込められた「精霊馬(しょうりょうば/うま)」である。これをテーマにした粋なゲームがゲームマーケット2021秋に発表された。発売したのは『ソクラテスラ』『サメマゲドン』のAzb.Studioで、今回もカードの組み合わせで変な精霊馬が作られる。
ゲームボードと馬コマがあり、ランダムに割り当てられた順番でカードを出し、その効果を使ってゴールを目指す。カードの効果は「1マス進む」といった単純なものから、「同じマスの馬を1頭戻して1マス進む」といった足の引っ張り合いになるものまでさまざま。手札を使い切ったら配り直してレースを続ける。
だいたい3ラウンドぐらいで誰かがゴールするようだ。ゴールしたときに出していたカードはディスプレイに並べて讃えられ、先に2勝したプレイヤーの勝ちとなる。3ラウンド目の順位決めで上位を引ければだいたい勝利できるが、たまに肝心のカードが手札になくて勝利が転がり込んでくることもあった。
キュウリやナスばかりでなく、バナナや缶チューハイやエビフライなど、およそ精霊馬にふさわしくない素材もあり、レースが終わるたびに優勝した精霊馬の鑑賞会を楽しめる。
オボンダービー –合体精霊馬グランプリ–
ゲームデザイン&イラスト・Azb.Studio(2021年)
2~6人用/10歳以上/15~30分
追記:日経新聞の取材が来たとき皆が真剣に遊んでいたのはこれである。
【特集】山形県長井市にある曹洞宗の古刹、洞松寺の「ボドゲ会」。新作ボードゲームを楽しむ会です。「勝敗はどうあれいい時間を過ごしたと満足できる」のは「皆で幸せに」と説く大乗仏教の教えとも通じると住職の小野卓也さん。19日付朝刊「ボードゲーム 盤上に広がる世界」より #nikkeithestyle pic.twitter.com/ac9dsHWOM5
— NIKKEI The STYLE (@NIKKEITheSTYLE) December 19, 2021
ハーメルンケイブ(Hameln Cave)
亡霊退治も手抜かりなく
亡霊を倒しながら崩れ行く洞窟から脱出することを目指す2人協力トリックテイキングゲーム。『トゥールームズ』『カルタマリナ』と注目の2人用ゲームを制作してきたYUTRIOがゲームマーケット2021秋に発表した。デッキビルドの要素を加えることで亡霊を倒さなければ途中で船は沈んでしまうし、船を進めなければ洞窟が崩れてくるという危機的状況を生み出している。
毎ラウンド、まず手札を1枚ずつ交換する。お互い何を出すかは相談できないので、この交換で相手に送るカードだけで、お互いの手札状況を「通信」しなければならない。そしてマストフォローのトリックテイキングを行う。
カードにはスートに関係なく舵輪、亡霊、マーメイド、サーベルのマークがあり、2人が出したマークの組み合わせによって船が進んだり、亡霊を倒したりできる。船が進む場合、勝ったプレイヤー側に進み、行き止まりや亡霊のマスがあるのでうまくどちらが勝つかまでコントロールしたいところだ。
船が最後のマスまで進めば2人の勝利となるが、先を急ぎすぎてはいけない。亡霊のカードが出されたり、船が亡霊のマスに入ったりするたびにストックの亡霊カードが減っていくが、ストックがなくなるとゲームオーバーになってしまうのである。つまり亡霊カードのストックはHPのようなものであり、積極的に亡霊を倒して回復させなければならない。
しかし亡霊退治にばかり集中して船が進まないと洞窟の崩落に巻き込まれてしまう。3ラウンドと5ラウンドにチェックがあり、規定ラインを通過していなければゲームオーバーである。HPを回復させながら、できるだけ亡霊マスを踏まないようにして着々と進む。
最初の手札交換だけでなく、相手の出したカードから、何のカードが残っているかを推理して対応するところは『ザ・クルー』の面白さに通じる。一か八かという場面も少なくなく、見事狙い通りになったときは気持ちいい。6人のキャラクター能力の組み合わせによって展開も変わり、難易度調整も可能。アートワークやストーリーへの没入感も申し分なく、非の打ち所がない作品だ。
HAMELN CAVE
ゲームデザイン・秋山昂亮&高津勇星/アートワーク・ごんけ賢吾&オノデラ
YUTRIO(2021年)
2人用/10歳以上/10~20分
通販:BOOTH