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エイジオブフローラ(Age of Flora)

欲張りすぎずに花集め

バラ、ヒマワリ、ユリ、アサガオ、ゼラニウム、アスター。これら6種類の花カードを他のプレイヤーより先に集めて貴族たちに送り届けるセットコレクションゲーム。サザンクロスゲームズの「エイジオブ」シリーズ18作目で、ゲームマーケット2022春に発売された。めくってバーストしなければゲットできるという「プッシュ・ユア・ラック」メカニクスを用いながらも運の要素を抑え、戦略的なゲームになっている。

手番には山札から花カードを1枚ずつめくって、種類ごとに分けて並べていく。6種類全部が出るか、1種類が5枚になるとバースト。好きなところでやめて、バーストしていなければ花カードを獲得できる。ただし「ONE MORE!」カードをめくると、強制的にもう1枚めくらなければならない。バーストを回避できる「排除チップ」があるので、ここぞというときは勇気を出してめくりたい。

花カードの獲得は独特で、枚数が2位の花以外を1枚ずつ取っていく。いずれかの花アイコンを先に7つ集めることが目標だが、集めている花カードが取れるかどうかと、バーストのリスクを天秤にかけてめくらなければならない。「今やめると取れるカードは……全くいらない」「あのカードを引けばほしいカードが取れるけど、バーストのリスクを冒してまで取るべきか?」

最後にめくったカードによってボーナス効果があり、タイブレーカーをもらえたり、カードの位置を交換できたり、山札からカードをもらえたり、パトロンカード(条件を達成すると勝利点)をもらえたりする。ほしいカードが取れなくても、バーストのリスクを取るよりもこのボーナス効果で満足できることもある。

しかし花カードのコレクションは早いもの勝ち。同じ花アイコンを7つ集めたプレイヤーは「メイン契約」達成で勝利点が入り、その時点でその花アイコンが2位のプレイヤーは「サブ契約」で少しの勝利点とボーナス、3位以下のプレイヤーは排除チップなどを獲得する。いずれも花カードは捨て札になってしまうため(1,2位は全部、3位以下は1枚だけ)、他のプレイヤーの状況を見て1位を取れそうな花を集めたいところだ。

何枚か契約が達成されると契約カードの山札の下からゲーム終了カードが出てくるので、そこから最終ラウンドを行ってゲーム終了。契約の得点と、花のボーナスでもらえるパトロンカードの条件達成の得点を足して勝者を決める。

カードをあと1枚めくるたびに状況が変わり、その都度そこでやめるかさらにめくるか、またバーストしてしまったときに回避するかどうかの選択が悩ましい。悩んでいるうちに次の1枚への期待も高まり、いいカードを引けたときは超嬉しい。

Age of Flora
ゲームデザイン:N2/監修:北条投了
サザンクロスゲームズ(2022年)
1~4人用/10歳以上/30~60分
通販:ディスカバリーDDTバトンストア(楽天)/バトンストア(PayPayモール)

Posted in エッセイ

下手の考え休むに似たり

この格言は碁や将棋から生まれたという。下手な者の長考は時間を浪費するだけで、何の効果もない。相手が考え続けるのをあざけっていう。

長考問題はボードゲーム愛好者の中で定期的にあがる話題である。自分の手番で選択に迷ったり、盤面の状況を読んだりして長い時間を費やすこと。多くのボードゲームはルールとしての制限時間がないため、どれくらいから長考になるかはゲームやメンバーによって変わる。

例えば『麻雀』では10秒を超えると長考とみなす人が多いというし、『カルカソンヌ』の大会ルールは15分の持ち時間があり、これを手番数で割ると25秒。『アグリコラ』はプレイ時間が1人あたり30分で約40手番なので1手番あたり平均45秒、『コードネーム』はプレイ時間15分で10手番くらいなので1手番あたり90秒(親がヒントを考える時間はその半分くらい)でデザインされている。あくまで平均なので、これらをちょっと上回ったくらいでは問題にならないが、何倍もの時間を費やしたり、それが繰り返されたりすると長考とみなされる可能性が高い。

長考問題の基本は次の2点である。定期的に話題に上がるのは、②がたびたび起こっているからだろう。

【①マナー違反】
他プレイヤーに無為な時間を過ごさせ、みんなの貴重な時間を奪うのはマナーとして良くないことである。

【②無自覚へのストレス】
周囲が長考だと思っても本人は自覚しておらず、かといって注意もしにくいのでストレスがたまる/トラウマになる。

それならば長考に対する注意を喚起しよう、あるいはもう同卓しないことにしようということになるが、③のように一概に言いきれない面もある。これも定期的に話題になる理由だ。

【③しかし一概に禁止できない】
自分の手番をうっかり忘れていることもあるが、周囲から急かされるのは不快なものだし、注意されて焦ればもっと長考になる恐れもある。ルールを十分に把握していない場合や、予め自ら断って行う場合もあり、ある程度までは大目に見ないと息苦しい。

【長考する他プレイヤーに対して】
どのような対策が可能なのか。まずボードゲームの目的にはコミュニケーション・勝敗・思考などがあって、それぞれどれくらい重きを置くかはその人次第であることを認識したい。
プレイスタイルが違いすぎる人が同卓すると、長考問題だけでなく、さまざまな問題が発生しやすい。ならば自分と合わない人を避ければいいのかというとそうでもなくて、コミュニケーションメインであっても、勝敗を目指さないプレイや、全く考えない手番も長考と同様に興趣を損なうため、みんなが楽しむためにはプレイヤー間の摺り合わせ(一般に経験者が多いほうが少ない方に寄り添うこと)が必要である。
また、前の人の手番で盤面が大きく変わったり、選択肢がやたら分岐したりするなどゲーム自体のデザインもある。チェスクロックアプリなどで制限時間を設けるという方法もあるが、時間ばかり気になって楽しめないかもしれない。与えられた時間と、プレイヤーの向き不向きを踏まえたゲーム選びによって緩和するという方法もある。

【長考する自分に対して】
前の人の手番から考えておくなどしてテンポよくプレイできるよう心がけ、長考になりそうな場合は予め「長考しまーす」「ちょっと待ってくださいね」などと断るほか、ときには諦めも肝心である。
「下手の考え休むに似たり」は、長考している他プレイヤーに言うべきでないが、自分自身が長考しそうになったときに思い出すとよい言葉だ。「迷うくらいならどっちもどっち」「悪手/好手だと思っても後々そうとは限らない」「運や他プレイヤーの選択で結果が変わるかも」「失敗したら他プレイヤーから狙われなくなってラッキー」ぐらいで考えておくと、思いつきの一手が案外いい手になるかもしれない。

以下のリンクはこれまでボードゲームの長考問題に関して書かれた記事である。上記の内容もどこかですでに言われていることばかりだが、要約として読んで頂ければ幸いである。
(写真・リンク:ハシビロ製作所)

2005年
biscoの地雷備忘録:長考反対キャンペーン!!
ジョーコデルモンド:長考反対キャンペーン
2009年
希望の船:長考とダウンタイム
2011年
部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女:ゲームにおける「長考」について長考してみた
togetter:ボードゲームのマナーと長考について
2013年
遊星ゲームズ:長考反対?(超いまさらな話題)
晴耕雨読:決定にいたるプロセスについて考える(“長考”に対する緒言のようなもの)
togetter:「#こんな長考はよくない」のまとめ
TGiW:困るんです―長考型
TGiWアンケート:長考
非電源ボードゲームで未来のゲームを妄想する:ボードゲームにおける長考問題は解決されるべきではない
失われた時を求めて:ボードゲームの長考について
2015年
ボドゲ神拳:長考問題を解決する3つの方法
2016年
iwatamの個人サイト:ボードゲームの長考
Aoi Yuki Blog:ボードゲームの長考問題を考える(‘-‘*)
2018年
メシフクロウの雑記:ボードゲームで長考する人について思うこと
2019年
びろぐ:長考は悪なのか?理想のプレイヤーとはどうあるべきなのか?
キリンノックスのボードゲームブログ:ボードゲームにおける長考問題
2022年
フェアリーノート:ボードゲームの長考について考えてみる。
ネルログ:ボードゲーム長考問題 本質は長考の是非じゃない
フェアリーノート:ボードゲームの長考について考えてみる。
ほらボド!:第421夜オンライン収録「長考問題について考えよう」
灰銀:長考か早打ちか問題。
・TGiW:下手の考え休むに似たり