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ドイツ年間ゲーム大賞2023に『ドーフロマンティック』、エキスパート大賞は『チャレンジャーズ!』

ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)選考委員会は16日18時00分(日本時間の25時00分)、ベルリン市内のホテルにて今年度大賞の発表と授賞式を行った。5月に発表されていた(TGiWニュース )各3タイトルのノミネート作品から、赤いポーンの大賞には『ドーフロマンティック・ボードゲーム』、灰色ポーンのエキスパートゲーム大賞には『チャレンジャーズ!』、青色ポーンのキッズゲーム大賞には『ミステリウム・キッズ』が選ばれた。

ボードゲームジャーナリストやボードゲーム評論家の審査員11名によって選出されるボードゲーム賞。授賞式にはデザイナーと出版社代表が参加し、その様子がYoutube配信で中継された。はじめに大賞を4回受賞し、4月に逝去したK.トイバーの追悼ビデオが流された後、キッズゲーム大賞、エキスパートゲーム大賞、ゲーム大賞の順にノミネート紹介と大賞発表が行われた。

ハリコフ出身で、ロシアの軍事侵攻後もウクライナの避難所などでボードゲーム会を開催しているM.マリウテンコ氏がプレゼンテーターとして招待された。各ノミネート作品のデザイナーと出版社も出席したが、エキスパートゲーム大賞にノミネートされた『IKI』の山田空太氏は欠席し、フランス語版からドイツ語版にローカライズを行ったジャイアントロック社の方が代表して登壇した。

『ドーフロマンティック・ボードゲーム』はテンデイズゲームズから、『チャレンジャーズ!』はホビージャパンから日本語版が発売予定となっている。各賞の結果と審査員会からのコメントは以下の通り。

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大賞受賞を喜ぶパルム氏(右)とツァッハ氏(左)。その左はSdJ審査員のシュラーパー氏

ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)2023

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ドーフロマンティック・ボードゲーム(Dorfromantik: Das Brettspiel)
ゲームデザイン:M.パルム&L.ツァッハ、イラスト・P.リーベ
出版社:ペガズスシュピーレ
1~6人用、8歳以上、30分
当サイトのプレイレポート

審査員会コメント:『ドーフロマンティック』は日常生活のストレスを取り除く。この気持ちいい協力ゲームでは、ゲームのたびに新しいエキサイティングな目標が設定されるが、決して負けることはない。簡単に解ける課題から徐々に難しい課題が追加されていくが、すべてが快適な範囲にある。この共同パズルゲームでは、誰かが最善手を思いつくこともあれば、ほかの人が出すこともある。キャンペーン式で、またゲームを遊びたくなり、そして、説明が終わってからも、途中からでも参加できる。

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ドイツ年間エキスパートゲーム大賞(Kennerspiel des Jahres)2023

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チャレンジャーズ!(Challengers!)
ゲームデザイン:J.クレナー&M.スラヴィシェック/イラスト:J.ハーヴェイ
出版社:ワンモアタイムゲームズ+ズィーマンゲームズ
1~8人用、8歳以上、45分
当サイトのプレイレポート

審査員会コメント:『チャレンジャーズ!』は、ボードゲームの夕べをイベントへと変える斬新なコンセプトを提供し、成績優秀者2名による決勝戦まで、エキサイティングで波乱万丈である。特に多人数グループでは、次々と対戦相手が変わる個人戦が生み出す大会の雰囲気を楽しむことができる。さまざまな組み合わせが可能なため、繰り返し遊べる魅力も高い。

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ドイツ年間キッズゲーム大賞(Kinderspiel des Jahres)2023

Challengers

ミステリウム・キッズ(Mysterium Kids)
ゲームデザイン:A.ボカラ&Y.ヒルシュフェルト/イラスト:O.ダンシン
出版社:リベルー+スペースカウ
2~6人用、6歳以上、21分

審査員会コメント:タンバリンで子どもたちはすぐに魅了される。正しい音を出し、耳を澄ませるというチャレンジと相まって、独特の雰囲気がある。プレイヤーが一緒になって探していたものが見つかったときの喜びはひとしお。『ミステリウム・キッズ』は、エキサイティングなタスクとユニークなゲーム用具で、満足できるゲームである。

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ドイツ年間ゲーム大賞2023ノミネート作品を比較する

ドイツ年間ゲーム大賞2023の発表と授賞式が、本日18時(日本時間25時)に行われる。今年はたまたま発表前にノミネート3作品を遊ぶことができたので、発表前にそれぞれの特徴を比較し、受賞可能性を考察する。

まずはここ5年の受賞傾向から。

2018年 大賞:アズール ノミネート:ルクソール、ザ・マインド
2019年 大賞:ジャストワン ノミネート:ラマ、ワーワード
2020年 大賞:ピクチャーズ ノミネート:マイシティ、ノヴァルナ
2021年 大賞:ミクロマクロ:クライムシティ ノミネート:ロビンフッドの冒険、ゾンビティーンズ:進化の鼓動
2022年 大賞:カスカディア ノミネート:スカウト、トップテン

基本的にユーロ枠、パーティー枠、ライト枠があり、そのうちユーロ枠かパーティー枠が受賞していることがわかる。どちらが受賞するかは、個別タイトルの出来栄え次第といってよい。ライト枠で受賞したのは2013年の『花火』しかない(しかもこの年にはもう1点、ライト枠の『クウィックス』がノミネートされている)。ドイツ年間ゲーム大賞はロゴ使用料で運営されているため、単価の安いライト枠は選ばれにくいという噂もある。

2023年のノミネート作品をこの枠に当てはめると、『ドーフロマンティック・ボードゲーム(以下ドーフロマンティック※)』がユーロ枠、『ファンファクト』がパーティー枠、『ネクストステーション・ロンドン』がライト枠ということになる。これまでの傾向から言えば『ドーフロマンティック』か『ファンファクト』が有力ということになる。

次に、ドイツのボードゲーム雑誌『シュピールボックス』の評価を見る。ドイツ年間ゲーム大賞の審査員11名のうち3名が関係者であり、同誌での評価が高ければ、受賞可能性も上がる。

ドーフロマンティック 平均8.4点/評者8人
ファンファクト 平均7.2点/評者9人
ネクストステーション・ロンドン 平均7.6点/評者11人

『ドーフロマンティック』がずば抜けており(平均評価で年間3位)、ユーロ枠・大箱・高評価の3本揃いで最も大賞に近いといえる。

最後に、3作品をプレイした感想であるが、リプレイ性の高さにおいて『カスカディア』『アズール』をしのぐ。初回プレイは最低限のコンポーネントでプレイするため、特にゲーマーにはピンとこない。協力ゲームに起こりがちな奉行問題も野放しであり、1人用ゲームをみんなで遊んでいるという印象を受ける。

これがゲームが終わるたびに新しい要素がアンロックされてくると、様相が変わる。タイル枚数も得点パターンも増えて1人では見落としが起こりやすくなるのだ。多くの目で盤面を見渡し、今後出てくる可能性のあるタイルを検討し、得点パターンの両立も考えてタイルを置く場所を決める。奉行行為にも自ずと限度が出てきて、みんな一緒に夢中になる感覚を味わえる。

『ネクストステーション・ロンドン』はフリップ&ライトゲームに起こりがちな「みんな似たような感じになる可能性」を、別々の色で路線を引くことで回避する。『ファンファクト』は、プレイヤーに「ちょっとした自己開示をさせる」ことでお互いの性格を知り合う機会を作る。それぞれにノミネートされるだけの特徴はあり、日本語版の発売が期待される。

TGiWレビュー:ドーフロマンティックファンファクトネクストステーション・ロンドン

※Dorfromantikはドイツ語なので「ドルフロマンティク」と表記するべきところだが、英語読みで「ドーフロマンティック」という表記も行われている。テンデイズゲームズからの日本語版は英語読みで発売されるようだ。

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