いつも遊んでいるゲームの呼称
日本で「ゲーム」といえばテレビゲームだが、ドイツでも近年”Game”はテレビゲームを指すようになり、エッセン国際ゲーム祭で出展されるようなボードやカードを使うゲームはドイツ語で”Spiel”(シュピール)と呼んで区別しているという。それならボードやカードを使うゲームは日本語でどう呼ばれているか。どう呼ぶべきか?
「テーブルゲーム」
私がホームページ「Table Games in the World」を立ち上げたのは96年。「テーブルゲーム」という言葉を使ったのは、ボードを使わないカードゲームを含めたかったからだが、英語で”Table Game”といえばポーカーやブラックジャックなどのギャンブルゲームを指すらしい。日本語で「テーブルゲーム」というとSLG、TRPG、TCGが含まれ、さらに最近はオセロ、チェス、麻雀などのオンラインゲーム、コンシューマゲームも色濃い。その分、ドイツやヨーロッパの輸入ゲームの影は薄くなっている。「テーブルゲームフェスティバル」というイベントも過去にはあったが、「テーブルゲーム」という言葉は時代遅れになりつつあるのかもしれない。類似する言葉として「テーブルトップゲーム(卓上ゲーム)」という呼称もあるが定着には至っていない。
「ボードゲーム」
現在は「ボードゲーム」という呼称が一般的になってきた。英語の”boardgame”、ドイツ語の”Brettspiel”も一般的なので、国際的にも通じやすい。かつて「ボードゲーム」といえば、ボードを使わないカードゲームやダイスゲームなどを含まなかったが、一般化に伴ってこれらも含めた総称になりつつある。部分によって全体を表す言葉(提喩、シネクドキ。「お茶」→飲み物、「ごはん」→食事)と考えることもできる。そして、比較的新しい言葉であるがゆえにSLG・TRPG・TCG色が薄く、ドイツ市場を中心とするバラエティ豊かなゲームのジャンルを指すことができる。サークル名やサイト名に「ボードゲーム」を入れるケースも多い。伝統ゲームや『人生ゲーム』を含めたくない人たちからは「モダン(現代)ボードゲーム」と限定する方法も見られるが、年代で新旧を区別しにくいこともあり、そこまで一般的ではない。
「アナログゲーム」「非電源ゲーム」
日本で「ゲーム」がテレビゲーム中心であることに対抗して作られた言葉であるが、英語で”analog game”という表現はせず、また”unplugged game”も一般的ではない。デジタルゲーム以外なら何でも入るので、SLG、TRPG、TCG、ドイツゲームを含む広い概念だが、TRPG、同人ゲームで使われることが多いようで、その分、ヨーロッパからの輸入ゲーム色が薄い。
「ドイツゲーム」
90年代にドイツはボードゲームやカードゲームの傑作を立て続けに発信して最先進国となり、その後もドイツ市場を中心に新作が発表されている。英語でも”German game”、”German-style game”という呼称がある。狭義の「ドイツゲーム」はドイツ産であるが、広義ではドイツ市場で発表されるゲーム、さらにデザイナー名が前面に打ち出されているゲーム(”Autorenspiele”/デザイナーズゲーム)を指す。「ドイツゲーム」はほかにも戦術性、運の要素、インタラクション、プレイ時間、コンポーネント、ルールの長さ、テーマなどで特徴があるが、多様化も進んでおり決まったものはない。日本で「ドイツゲーム」という言葉が広まったのは、ゲーム情報誌『ノイエ』によるところが大きい。デザイナーズゲームであっても、アメリカのゲームならドイツとの同時発売があるので含められるかもしれないが、日本や韓国のゲームまでは含みにくいという難点がある。しかしメディアでも登場する機会が増え、今最も勢いがある。
「ヨーロピアンゲーム」「ユーロゲーム」「ユーロスタイルゲーム」
ドイツゲームから地域的な広がりを承けて、ヨーロッパを冠する呼び方もあり、さらにヨーロッパ以外にも広がったことで、「テーマよりもメカニクス重視のゲーム」というジャンルの呼称で用いられている。ジャンルの多様化・複雑化に伴ってごく一部のジャンルの呼称にとどまっており、総称としては用いられにくくなっている。
「マルチプレイゲーム」
「複数の人で遊ぶゲーム」という観点での呼称。ドイツ語の”Gesellschaftsspiel”、フランス語の”Jeux de société”も意味は同じである。テレビゲーム、オンラインゲームも含まれる。「マルチ」がマルチ商法を喚起するせいかどうか分からないが、一般的ではない。インタラクションが強く、直接攻撃ができるボードゲームというややネガティブな意味で使われることもある。
こうして比べてみると、「ドイツ市場を中心に毎年新作が発表されており、その影響でアメリカや日本など他国でもデザイナー主導で制作されたゲーム。ボードやカードを使って複数の人で遊ぶが、SLG、TRPG、TCGは除く」というゲームは現時点で「ボードゲーム」と呼ぶのがベストのようだ。ホームページの名前を”Boardgames in the World”にするつもりはないけれども。あるいは、ほかによい呼び方はあるだろうか?
秋葉原でボードゲームプレイワークショップ
国際ゲーム開発者協会日本は8月9日(日)14時から、秋葉原のUDXマルチスペースにて「ボードゲームプレイワークショップ」を開催する。
この集まりは、同会の5回目となる交流会で、ボードゲームの開発に携わる人がプロ・アマ問わず参加して行われている。参加者の交流とともに、ボードゲームやカードゲームのシンプルで奥深いゲーム性を通して「面白さ」や「駆け引き」のデザインやテクニックを学ぶのがねらい。
今回は会場主となる秋葉原UDXの協力によって、「UDXオープンカレッジ」というシリーズの1つに位置づけられる。そのためテーブルゲームに関心があれば誰でも参加できる(事前申込は必要)。定員は100名。
スケジュールは全体ゲームとゲスト紹介の後、自由にボードゲームを遊ぶ。「ドミニオン大会」も行われる。たっぷり遊んで19:30に第一部終了、20:00から懇親会。懇親会では、G.バースのコレクターとしても知られるずーあー氏が、自身のコレクションを実演を交えて説明するというイベントも予定されている。
参加費は1500円(第一部のみ)/5000円(第2部まで)。問い合わせや申込方法など詳細は以下のページにて。
・IGDA日本:UDXオープンカレッジ「ボードゲームプレイワークショップ」