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遠い過去のゲームの日本語版

ホビージャパンのてこ入れでボードゲームの日本語版製作が盛んだ。ホビージャパンだけで10タイトル以上(既発売分を含む)になるそうだ。ホームページではまだ発表されていないが、BGGのクレジットでは”Colossal Arena“、”Middle-Earth Quest“(以上FFG)、”Wings of War – WW2 Deluxe set“(Nexus)が見える。
これらは全て、外国のメーカーにデータを送って作ってもらう日本語版である。このパターンではメビウスゲームズの『サンファン』、クロノノーツの『バトルライン』、New Games Orderの『ロール・スルー・ジ・エイジズ』などがある。「輸入日本語版」と呼んでおく。1000セットほどの最低ロット数(日本ではかなりの人気作でなければ売れない数である)が定められており、送料が高いという問題はあるが、それでも一から作るよりははるかに簡単で品質も高く、新しい生産方式としてこれからも盛んになりそうだ。
一方、同じ日本語版でも、国内のメーカーが作っているものがある(生産は中国の工場でも)。カプコン・ハナヤマの『カタン』、バンダイの『チケットトゥライド』をはじめ、メビウスゲームズの『キュージェット』と『お先に失礼しま〜す』、ビバリーの『ブロックス』と『アップルトゥアップル』、幻冬舎エデュケーションの『ドメモ』、そしてアトラデザインの『ウントチュース』がこれに連なる。「国産日本語版」と呼ぶ。
国産日本語版には、発売までタイムラグがあって愛好者には今さら感が漂う(だからホビージャパンが年度内に出そうとするのには意味がある)ほかに、コンポーネントがドイツものと比べてチープだったりして不興を買うこともあるが、日本人好みのデザイン変更とロゴで、ボードゲームをあまり遊ばない人にもなじみやすいというメリットは大きい。
でも、それ以上に注目したいのは、オリジナルが発売されてから日本語版が発売されるまでのタイムラグである。1,2年では今さら感があるが、10年も経ってからだと感慨深さが湧いてくる。
『キュージェット』(2004)はオリジナルの『アベカエサル』(1989)が発売されてから15年、『お先に失礼しま〜す』(2008)はオリジナル『皿洗いゲーム』(1991)から17年、『ウントチュース』は1997年の初版で12年、『ドメモ』は1975年が初版だから今年出るまで実に34年も経っている。
これだけ長いと、オリジナルは遊んだことがないという人も多いだろう。しかしこの間、誰かがずっと遊び継いできたわけで、その人気の息の長さに感動を覚える。また、これだけ新しいゲームが出続けている中で、あえてその古典が日本だけで発売され(結局『アベカエサル』は日本に後れること2年でリメイクされたが)、新たな人気を集めているという事実に、日本人独特の精神文化が伺えなくもない。
というわけで『キュージェット』、『ドメモ』、『ウントチュース』の日本語版を企画した方々の眼力(と勇気)に敬服する。日本語版はただ新作を追いかけるだけでなく、これからも時々10年も20年も経った隠れた名作の掘り起しと、日本人にしっくり来そうな新しいデザインでのリメイクを図ってほしい。

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広がるボードゲームレンタル

ボードゲームは輸入物が多いため、値段も高くなりがちだ。ユーロ高は一時ほどではないものの、1ゲーム5000〜6000円はごく普通。それで1回遊んだだけでお蔵入りというのはもったいない。
ドイツには、ボードゲームの貸し出しをする施設がある。ビブリオテーク(Bibliothek、図書館)とシュピール(Spiel、ボードゲーム)を合成してシュピーリオテーク(Spieliothek)という。自治体や篤志寄付で運営され、1ユーロ程度の料金で遊ぶことができる(『ボードゲーム天国』p.112)。
近年になって、このシュピーリオテークに近い活動が日本でも始まっている。ひとつめは栃木県那須塩原市のレンタルショップ「ハーミット」。300〜600円で7泊8日借りることができる。250タイトル以上あり、フリークゲームや同人ゲームもあって幅広い。セールスポイントは、借りるときにゲームのルールを説明してもらえること。ルールを読む手間を省いて遊べるのは大きい。開店時間は平日の夜8時〜10時。
次は愛知県刈谷市にあるおもちゃと絵本のお店「カルテット」。アミーゴ社、ハバ社など子供ゲームの品揃えが豊富なショップだが、開店5周年を記念して、この2月から体験レンタルを開始した。店頭で会員登録をすれば、人気のカードゲームなどを借りられる。購入の検討用でなくてもよい。また、保育園でのゲーム貸出コーディネートも行っている。
最後に鳥取県倉吉市のNPO法人「こども未来ネットワーク」。子供が仲間や家族、地域の人たちとの交流を深めながらいきいきと生活できるようサポートすることを目指す団体だが、幼児と親のためのおもちゃ体験会「トイスタート」に続いて、ボードゲームやおもちゃの貸し出しを中心とした「トイボックス」事業を始めた。登録すれば2週間借りることができる。ゲーム大会も開かれ、好評を博しているという。
以上、レンタルショップ、木のおもちゃ屋、NPO法人とそれぞれ特色を生かして貸し出しを進めているところを紹介してきたが、全て地方の非県庁所在地であるところが興味深い。地域振興にも一役買っているといえよう。また全国どこでも、ボードゲームを広める活動が十分可能な証左でもある。
たくさんのボードゲームを死蔵させている方、上記の例を参考に、商売でなくとも友人や地域の団体・施設などにボードゲームを貸し出してみてはいかがだろうか?
海外輸入ボードカードゲームレンタルのお店 ハーミット
木のおもちゃと輸入おもちゃのカルテット:ファミリーゲームブログ記事
NPO法人こども未来ネットワーク新聞記事ブログ記事