『ドミニオンレシピ』
優れたボードゲーム評論サイト「遊星からのフリーキック」が、ゲームマーケット2009で頒布した同人誌。A5版、42ページ、400円。残部の通信販売もある(なくなり次第終了)。
ドイツ年間ゲーム大賞、ドイツゲーム賞を受賞し、まもなく発表されるドイツカードゲーム賞も有力候補となっている『ドミニオン』。否定的な意見もあるが、10年に1度あるかどうかの傑作であることは間違いがないだろう。
『ドミニオン』を遊ぶと、何やら定石がありそうなことはすぐ分かる。ありがちなのは「○○最強説」(『プエルトリコ』の宿屋とか、『サンクトペテルブルグ』の18貴族とか)だが、ドミニオンはカードのコンボとバランスの両方があるため、そう単純ではない。そんなときに、ハンドブックとして重宝するのがこの『ドミニオンレシピ』だ。
本書の構成はまず戦略の基本と各カードを概説した上で、いくつかの作戦を紹介している。一時期ネットで物議をかもした「お金プレイ」(本書では「ステロイド」)、巷で流れる「村最強説」を支える鍛冶屋とのコンボ(本書では「鍛治村」)は基本中の基本。このほかに「地下書庫」「高圧縮」「庭園ビートダウン」「魔女コントロール」「軽圧縮」「古本市」「属州枯渇」とどれも試したくなるような作戦ばかり。
それぞれの作戦では概要を説明した後、必要なカード構成、理論、ほかの作戦との相性、バリエーションなどを解説する。検証用プログラムまで使ったそうで説得力があり、なるほどと思うことばかり。それでいて、「はじめに」で本書に書いてあることは絶対ではないと述べ、この本を論拠に他人のプレイングを批判することを諌めている。
この本の目的は経験の差が大きく出がちな『ドミニオン』において、その経験の差を埋めることであるという。メンバーが誰もやりこんでいないならば、みんなで遊びながらこうした作戦を発見していくのも楽しみのひとつである。でも数多く遊んでいない人が、やりこんでいるメンバーに入るならば、一読していくことをオススメしたい。
ハウラ(Hau La)
上へ上へ押すな押すな
『マングローブ』と並んで、今年のゲームマーケットの目玉となった賽苑の作品。スポンジ製のピースを自由に取り付けて、自分の色のタグが一番上になるようにするという、ほかに類を見ない異色の作品だ。
手持ちのピースは長さが3種類あり、全員同じものをもっているが使い順番は自由。長いピースはここぞというときに使いたい。地面やほかのピースにある穴から、新しいピースを差し込んで、できるだけ高いところに自分の色のタグを付ける。次の手番には、タグがあったところからさらに上を目指す。
毎ラウンドトップを取った人は、ボーナスピースを取り付けることができるが、高いところはすぐ狙われて下になることになるだろう。スポンジ製であるため、重力やほかのピースとの絡みですぐ垂れ下がってしまう。
勝敗は最後の最後のピースが入るまでわからない。短いピースで最後のひとあがきをするさまは、思わず笑いを禁じえない。ゲームマーケットの評価アンケートでは、ゲームとしての出来を疑う声も寄せられたが、先手番でもよい場所を見つけられれば決して不利ではないように感じた。
アブストラクト風なのに厳密に計算できないアナログ感、みんなの予想を裏切るピースの差し込み方で形勢が逆転する創造性、そして現代芸術のような見栄えのよさと申し分ない。『マングローブ』と同様、これまた国内でも海外でも、どこかのメーカーが権利を買い取って工場で量産してほしいほどだ。
Hau La
作者不明/賽苑
2〜4人用/8歳以上/15分