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ニュルンベルクの新作評価

南ドイツのボードゲームサークル・ローゼンハイマーは5月1日から2日間にわたって、第7回「ローゼンハイムの春」を開催し、昨秋から今春にかけて発売された新作(2010年度の新作)のテストプレイを行った。代表作として予め選ばれた十数タイトルの中での評価は以下の通り。数字は0〜7の8段階評価(数字が大きいほどよいゲーム)の平均。
また、インターネットの投票サイト「シュピーレ・ウンフラーゲ」ではニュルンベルクで発表された新作の評価アンケートを行って公表している。結果は以下の通り。数字は1〜6の6段階評価(数字が小さいほどよいゲーム)をベイズ判定したもの。
【ローゼンハイムの春2010】

1位:ディクシット 5.73
2位:フレスコ 5.70
3位:ダンジョンロード 5.65
4位:エジツィア 5.60
5位:ハンザ・テウトニカ 5.48
6位:アラカルト 5.47
7位:グレンモア 5.37
8位:トバゴ 5.29
9位:バスコ・ダ・ガマ 5.25
10位:洛陽の門にて 5.24
11位:マカオ 5.10
12位:カーソンシティ 5.06
13位:権力闘争 5.05
 

【シュピーレ・ウンフラーゲ2010春】
1位:グレンモア 2.25
2位:フレスコ 2.25
3位:サマルカンド 2.63
4位:アールエコ 2.68
5位:別世界 2.76
6位:倉庫の街 2.79
7位:コボルドの宝 2.87
8位:トーキョートラン 2.94
9位:原始の生活 2.96
10位:テュトテュト 2.97

この2つの結果から、ニュルンベルクの人気作は年間大賞にノミネートされた『フレスコ』と、アレアの新作『グレンモア』あたりと言えそうだ。エッセン国際ゲーム祭で発表されたたくさんのフリークゲームに、これらがどこまで善戦するかが見ものである。
※ローゼンハイムの春の結果を加えて「エッセンのベストフリークゲーム」を集計しなおしましたのであわせてご覧ください。
Rosenheimer Spielefrühling:Ergebnis 2010
spieleumfrage:Spieleneuheiten Frühjahr 2010

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『ガールズ・アンダーグラウンド』

先月のゲームマーケットで『キャット&チョコレート』をリリースした川上亮こと秋口ぎぐる氏の新刊ノベル。ボードゲームがちょっとだけ登場する。

15年前、K市を中心として恐るべき“大感染”が起こった。やがて“重症者”が“軽症者”の上に立つという逆差別の社会構造ができあがる。ペーパーレス化が進む中、Bランク市民の少女・萌絵は古い印刷機を使い、アナログの地下新聞を作ることで反政府活動に加わる―。“閉ざされた世界”の秘密に少女たちが迫る、近未来サスペンス。

物語自体、テーマが深くストーリーもエキサイティングで一気に読んだ。逆差別という問題は多かれ少なかれ今の社会にも起こっていることであり、この本はそれをどうやって乗り越えていくかという示唆に富んでいる。
それはさておき、小説中に2箇所、ボードゲームの記述がある。ひとつは、近未来の学校では、ディベートやボードゲーム、カードゲーム、合唱、合奏、集団スポーツといったコミュニケーション能力を高めるための実習が行われているという設定。普通の勉強は携帯端末を使って家で行う。そんな世の中になっていくのかもしれない。
もうひとつは待ち合わせ場所にボードゲームカフェが登場するところ。飲み物とボードゲームを注文し、遊ぶふりをして人を待つ。著者によれば韓国のボードゲームカフェをモチーフにしているという。小説では、病気の症状に応じてSランクからCランクまで居住区が分かれているが、ボードゲームカフェは中間のBランク居住区にある。Aランクではボードゲームは子供のものと考え、Cランクはせっかちだから遊ばないというように、各居住区の様子がボードゲームの見方を通して巧みに描写されている。
小説アクア・ステップ・アップ』(安田均ほか、2001年)、『スコットランドヤード・ゲーム』(野島伸司、2006年)、『放課後の魔術師』(土屋つかさ、2008年〜)など、ボードゲームが登場する小説が少しずつ出てきた。ドイツの『小説カタン』や『カルカソンヌ運命の車輪』のように、ボードゲーム自体をモチーフにした小説が出てきてもよいと思う。