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フランス年間ゲーム大賞2011ノミネート

今月24日から開かれるカンヌ国際ボードゲーム祭に合わせて、アスドール・フランス年間ゲーム大賞(As d’Or – Jeu de l’Année)のノミネートが発表された。この中から大賞が24日の前夜祭において発表される。
フランス年間ゲーム大賞は6人の審査委員によって選ばれており、昨年は『アイデンティク』、一昨年は『ディクシット』と、ファミリーゲーム寄りの受賞傾向となっている。
カンヌ国際ボードゲーム祭は今月25日から3日間にわたって開催され、その中で大賞・ノミネート作品も展示される予定。
【アスドール・フランス年間ゲーム大賞2011ノミネート】
キクラデス(Cyclades / B.カタラ / マタゴー)
ドジャム(Djam / W.アティア / アスモデ)
フレスコ(Fresco / M.ルスコウスキ、M.ズーセルベック / クイーン)
クウィークル(Qwirkle / S.マッキンリー / イエロ)
消えた宇宙船をさがせ!(Razzo Raketo / S.ボーゲン / セレクタ)
骸骨とバラ(Skull & Roses / H.マーリー / ルイメーム)
タコアラーム(S.O.S. Octopus / O.イーゲルハウト / フィロソフィア)
トロワ(Troyes / S.ドジャルダン、X.ゲオルグ、A.オーバン / パールゲームズ)
ウォーターリリー(Water Lily / D.エルハルト / ゲームワークス)
世界の七不思議(7 Wonders / A.ボーザ / レポス)
Festival International des Jeux:As d’Or – Jeu de l’Annee 2011 : Les Nomines

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ボードゲームにおけるタブー破り

ドイツのボードゲームデザイナー、A.マイヤーは”Spiele entwickeln(ボードゲーム開発)2010“において、「ボードゲームの中のタブーとタブー破り」と題する寄稿を行っている。タブー(禁忌)の原義から説き起こして、社会学のアンケート結果、芸術・文学・映画におけるタブー破りの例へと進み、ボードゲームにおけるタブー破りを論じる。傷つく人ができるだけ少ない「害のない」タブーを取り上げることが望ましいが、完全に害がないタブーはタブーではない。実際は境界線にあるタブーがボードゲームで取り上げられる。
『グラス(Grass)』:麻薬密売人となってお金を儲けるゲーム
『むかつく友達、行きたくないパーティ(Fiese Freunde, Fettee Feten)』:同性愛が「普通」の選択で、カミングアウトすることがゲームの目的となる
『プロジェクト・ポルノスター(Project Pornstar)』:ポルノ映画の監督となって、仕事上の困難と闘う
『フレッシュミート(Frischfreisch)』:食料の少ない島で、ほかの人を食料にしながら救助を待つ
『三戒(Die 3 Gebote)』:みんなが神官となり、どんなに無意味なものでも掟にする
死・殺人・テロはコミックに描かれることでボードゲームに用いられているという。
『キャッシュ&ガンズ(Cash’n Gans)』:銃口をお互いに向け合って、上手にかわすことで生き残ることを目指す
『スーサイドボンバー(The Suicide Bomber Card Game)』:罪のない人をテロで大量殺人する
『レッツキル(Let’s Kill)』残虐に殺すことだけが目的で、たくさん殺せば殺すほど得点になる
さらに歴史的な殺人をテーマにしたゲームが挙げられる。
『ギロチン(Guillotine)』:処刑による殺人が手段でもあり目的。タイミングによって得点が増える
『ヘッズ・オブ・ステート(Heads of State)』:ゲームの中での処刑による殺人。ゲームが進む上で不可欠なもの
『ミスタージャック(Mr. Jack)』:連続殺人をもとにした推理ゲーム。殺人はゲームに出てこない
『ウォー・オン・テラー(War on Terror)』:ゲーム中に虐殺やテロが登場
結論としてマイヤーは、「イノベーションは境界線を超えることで起こることが多い」というコンラートの言葉を引用し、タブー破りがイノベーションにつながる可能性を説いている。
以上はゲームデザインからの視点であるが、遊ぶ側にとっても、タブーを破ったテーマはひとつの楽しみになるだろう。一昨日は『プゥー』、昨日は『プライバシー激辛』を取り上げたが、普段は触れることが憚られるテーマにボードゲームを通して触れることは、解放された気分になれる。
タブーを破るゲームといえば、同人作品だが、オウム真理教をテーマにした『ナンバー2』や、のし袋を手探りする『ほんのきもちです』をすぐに思い出す。考えてみればタブーは文化に依存するものだから、国産のほうが期待できるだろう。上記の例は全てマイヤーが挙げたものだが、ほかにもたくさんあると思うので探してみよう(こんなのはどう?というのがあったらツイートかコメントでどうぞ)。