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辰年のボードゲーム

毎年お正月になると、干支にちなんだボードゲームを探したくなる。なかなか探せない年もあるが、辰年はドラゴンだから、枚挙にいとまがない。
そんな中、ヨーロッパ・ボードゲームコレクター協会のホームページにドラゴンが登場するゲームがまとめられているのを発見した。その数60タイトル以上。国内で一般発売されているものも少なくない。
Europäische Spielesammler Gilde e. V.:Sondergehege 2: Drachen
この中でも、新年といえば『ドラゴンイヤー(Im Jahr des Drachen)』を真っ先に思い出す。飢饉、疫病、圧政、モンゴル軍の襲来……毎月次々と襲い掛かる災害を耐え忍び、豊かな国を築き上げるドイツのボードゲーム。中国では、辰年には天変地異が起こるという俗信があり、それがゲームのタイトルになった。
飢饉には農民、疫病には薬師、モンゴル軍には兵士といった対抗策を取っておかないと痛い目に遭うが、災害対策だけでは得点にならない。同時に花火師、学者、宮女、僧侶で国を豊かにする必要がある。災害対策を手厚くしすぎても、手抜きしてもいけない。苦しい中でも将来につながる投資が必要であることを教えてくれるこのボードゲームは、震災復興の日本とも重なる。
S.フェルト作、アレア(ラベンスバーガー社)、2007年発売。2〜5人用、12歳以上、75〜100分。

TGW:ドラゴンイヤー
キッズ・ライトゲーマー向けには『ドラゴン・ディエゴ(Diego Drachenzahn)』がおすすめ。こちらもドイツのボードゲームである。火炎をはくドラゴンが、どの的を狙うか予想する。
1人がドラゴン役となり、引いたカードに指示された的を狙って3個の赤いビー玉(火炎を表す)を弾く。ほかの人は、ビー玉の軌跡を見て、ドラゴン役がどの的を狙っていたか当てる。ビー玉が見事3個的中しても、狙い方があからさまでは他の人に得点されてしまうし、かといってカモフラージュしすぎれば的に入らない。偶然に見せかけて的を狙うのは大人でも難しい。一方、子供はカモフラージュが妙に上手かったりする。
M.ルートヴィヒ作、ハバ社、2009年発売。2〜4人用、5歳以上、15分。ドイツ年間キッズゲーム大賞受賞作。

TGW:ドラゴンディエゴ
あなたのお気に入りのドラゴンゲームは何でしょう?

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エセ芸術家ニューヨークへ行く(Fake Artists go to New York)

心の目で描く

出来上がった絵は、まるで現代美術を見るかのようである。現代美術館でも、下に貼ってあるプレートを見ないと、何を描いたのか分からない絵が多い。その絵をみんな共同で描いているとしたら? そしてその中に1人だけ何を描いているのか分からない人がいるとしたら?
ストレイシーフ』『藪の中』でゲームと非ゲームの際どい境界線を歩み、注目を浴びているオインクゲームズの新作が、このお絵描きブラフゲームである。多人数、お絵描き、ブラフ、そしてオインクゲームズとあっては注目しないはずがない。

エセ芸術家ニューヨークへ行く

はじめに親が、今回のお題を決め、全員分のプレートに書きこむ。ただし1人だけ何も書かない。これを全員に配り、スタートプレイヤーを決めたらお絵描き開始。親以外が共同で1つの絵を描く。

絵は順番に、自分の色のペンで一筆ずつ描き加えていくかたち。エセ芸術家=1人だけお題を知らない人は、それまで出来上がった絵を見て、さも知っているかのように描き加える。2周したら、ペンの色からエセ芸術家だと思う人を一斉に指さす。「おまえだ!」

エセ芸術家がカモフラージュに成功し、指さしで最多数に選ばれなければ、エセ芸術家と親の得点。最多数に選ばれれば、エセ芸術家と親以外が得点……の前に、エセ芸術家に1回だけチャンスが与えられる。それは何を描いたかお題を当てられるかどうか。当てられればカモフラージュ成功と同様、エセ芸術家と親が得点する。

すなわち、エセ芸術家以外の人は、何か分からないような絵を描かなければならない。分かりやすい絵を描けば、エセ芸術家のカモフラージュが成功しやすく、カモフラージュに失敗してもお題を当てられてしまうだろう。しかし、分かりにくすぎても、エセ芸術家のカモフラージュが成功してしまう。1周目は様子見で棒でも引いておいて、2周目にさりげなく自分はお題を知っているアピールをするのがよい。

今回出来上がった現代芸術作品はエビ(右下)、ネコ(左下)、サンタクロース(上)。エビはくさのまさんが描いた尻尾でバレてしまい、ネコはエセ芸術家だったcarlさんの変な線を見ぬくことができなかった。サンタクロースは2番手という不利でエセ芸術家であることがばれたぽちょむきんすたーさんが、お題を当てられず。carlさんが一気に5点を取って1位。tomok画伯が直線一本だけで「そこはありえねー」とウケを取っていたのはさすがだった。

よそのゲーム会で遊んだ話を聞くと、毎回エセ芸術家がつかまってしまったというところと、1回も捕まえられなかったというところがあった。今回は両方あって、微妙なところを楽しめたと思う。

エセ芸術家ニューヨークへ行く
佐々木隼/オインクゲームズ(2011年)
5〜11人用/8歳以上/20分
オインクゲームズ:エセ芸術家ニューヨークへ行く