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トレーダー(Trader)

簡単には買わせてもらえず

1枚ずつカードを購入し、掛け算で売って儲けるカードゲーム。2001年にウィニングムーヴズ社から出された『コンビット(Combit)』を、3〜4人でも遊べるようにリメイクして、フランスのカクテルゲームズから缶ペンケースみたいなパッケージで発売された。20分という短いプレイ時間が信じられないくらいの遊びごたえがある。
場に並んだ5列のカードは、パリやニューヨークの証券取引所を表している。自分の手番には買うか売るかのどちらか。買うならば、どの列でもよいので一番下にあるカードを買い、売るならば、同じ色のカードを2枚売る。
利益は2枚の掛け算である。カードの数字は2〜6があるので、一番効率がよいのは5×6=30ユーロ。5は5ユーロ、6は6ユーロで買うので、19ユーロの儲けになる。これが2×3=6ユーロになると、儲けは1ユーロにしかならない。
3人で遊ぶ場合、勝った後に1列に「市場封鎖カード」を置いてブロックできる。当然、同じ色が集めにくいように邪魔するわけで、同じ色の5と6なんていうのは簡単に手に入らない。カードの列は全部見えているので、計画的に買っていこう。
絶妙なことに、最初の資金は何枚か買うとなくなるくらいしかない。したがって集めまくって揃ったら売却という方法ができず、序盤で1回は売っておく必要がある。当座の資金を手に入れる序盤の攻防と、大金を狙う終盤の攻防があるのが面白い。
3列が売り切れたら最終ラウンドで、所持金の多い人が勝ち。
くさのまさんが中盤に大金を手に入れ、そのまま安定した収支で勝利。私は最後の最後に5×6を売却できたが及ばなかった。相手はどの列を封鎖するか、そうすると次に自分はどのカードが買えそうか、そもそもお金は足りているかなど、先の先を考えて選ぶのは本当に悩ましく、遊びごたえ十分だった。
Trader
K.パレーシュ、H.-R.レーズナー/カクテルゲームズ(2009年)
2〜4人用/10歳以上/20分
テンデイズゲームズ:トレーダー

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日本のボードゲーム人口

よく話題になるけれども、結局つかめないものとしてボードゲームのプレイ人口がある。実際のところクラスタなどというものは幻想で、コアなゲーマーから、付き合いでたまに遊ぶ人、何年かに1回人生ゲームやウノを遊ぶ人と、グラデーション状に広がり、その中をマントル状に流動しているのだと思う。
したがってどこに境界線を置くかで、プレイ人口は大きく変わるわけだが、mutronixさんが興味深い分類を行っている(焚書官の日常)。

1.遊ぶけど買わない人

2.評価の定まったものを決め打ちで買う人

3.評価がよくわかんなくてもとりあえず買う人

mutronixさんの論はそれぞれのターゲットに合わせたマーケティングだったが、この分類によって、ボードゲーム人口の推定を行ってみたい。
まず3.評価がよくわかんなくてもとりあえず買う人は、メビウス頒布会の加入者数を中心として考える。頒布会の趣旨の中に、まさにぴったりの内容がある。

頒布会の性格上、お送りするゲームはまだ評価の定まったものではありません。いろいろと情報を得て選んではおりますが、リスクがあることは確かです。そのため、頒布会での価格は、通常一般販売価格より2割程度安くなっております。

頒布会の加入者数は現在80人。このほかにバネストファンや個人輸入する人もいるだろうが、多くは重なるはずなので、約2倍と見積もって150人と推定する。
2.評価の定まったものを決め打ちで買う人は、『アグリコラ』と『スモールワールド』の日本語版の購入者ぐらいとすると大きくぶれがないように思う。この2タイトルは、どちらも高価な上に、相当なプレイ時間とルール理解力が必要なので、うっかり買ってしまったということは考えにくい。 『アグリコラ』と『スモールワールド』の販売数は、どちらも約3000セットなので、3000人と推定する。
1.遊ぶけど買わない人は、単純に計算すれば2の3〜4倍(多くのゲームが3〜4人用なので、1つ買えば3〜4人が遊べる計算で)になるわけだが、そんなには多くないように思う。というのも、ボードゲームを趣味にしている人は買うことや所有することも趣味の一部であり、誰かが買えば買わなくていいと割り切れる人はそれほどいないためである。いつも遊ぶメンバーで、それぞれ違うゲームを買って持ち寄るということもよく見る。
2009年、草場さんの主宰で行われた最後のゲームマーケットの入場者数は1500人だった。この年、TGWで「今年のゲームマーケットには行きましたか?」というアンケートを行ったところ、41%がYESと回答した。ここからゲームマーケットを知っていた人を1500÷0.41と計算すると3700人になる。2010年のゲームマーケットの入場者数は2200名と約1.5倍に増えたから、3700×1.5で5500人。だいたい6000人くらいと推定する。
仮説に仮説を重ねた数字だが、2の3000人から2倍というところを見ても妥当な線ではないかと思う。
さらにこの外側に、0.カジュアルな流動層というのもいると思う。テレビや雑誌で取り上げられたとかで、1タイトルくらいやってみて、あとはそれっきりという人たち。これもプレイ人口に含めていいのかどうか分からないが、流動層であるがゆえに推定は難しい。
朝日新聞アスパラクラブのアンケートでは、回答者2495名のうち「よく遊ぶ」と答えた人は3%、「たまに遊ぶ」が25%で、合計28%の人が遊んでいることになる。この計算で行くと、日本の生産年齢人口8000万人の28%で2240万人となるが、アンケートで挙げられたタイトルを見ると、『オセロ』や『人生ゲーム』を知っている人の数字くらいと捉えたほうがよいだろう(人生ゲームの累計販売数は40年間で1200万セットであり、『オセロ』の競技人口は6000万人という説もある)。新聞の定期購読者かつ、このようなアンケートに答える層ということで、実際は28%よりだいぶ下回るだろうが、潜在的なボードゲーム人口としてはありうる数字かもしれない。
伝統ゲーム・古典ゲームを含めず、現代ボードゲームに限定すると、数はぐっと下がる。mixiのボードゲームコミュのメンバーは現在4431人。総加入者数は2000万とされるので0.2%に過ぎない。この比率ならば日本の生産年齢人口8000万人では約18000人となる。また『ドミニオン』日本語版の販売数が約15000セット、2010年にTGWを訪れたユニークユーザー数は33000人というところから、15000〜30000人くらいと推定する。
まとめると、日本のボードゲーム人口は次のような同心円で広がっているものと推定される。日本人の6人に1人がボードゲームを知っているが、『ドミニオン』や『カタン』まで知っている人は4000人に1人、よく遊んでいる人は2万人に1人、買ってまで遊んでいる人は4万人に1人、何でも買っている人は80万人に1人ということになる。
0.カジュアルな流動層 15000〜30000人
1.遊ぶけど買わない人 6000人
2.評価の定まったものを決め打ちで買う人 3000人
3.評価がよくわかんなくてもとりあえず買う人 150人