ノボレ!(Climb!)
クライミングは戦略ゲーム
近所のショッピングモールに、フリークライミングのジムがあった。壁に色とりどりの足場が埋め込まれており、命綱を付けてよじ登る。高所恐怖症の私はやらなかったものの、練習している人を見て「こんどはあの黄色い足場かな、それとも緑?」などと思っていた。
フリークライミングは腕力、体力のほかに、体の向き・位置・手足の動かし方などを計算する戦略的な要素があるという。これをカナダノメーカーが指で遊べるようにしたのが『ノボレ!』だ。見た目ではおバカなアクションゲームに見えるが、いざやってみるとその戦略性に驚く。
順番に1枚ずつカードを並べ、穴が10個あるコースを作る。この穴に指を入れながら頂上を目指す。多くの穴に指が入れば入るほど、得点が高い。3コースを全員1回ずつ登って、合計点を競う。
穴は色分けしてあって、黒は親指、青は人差し指、緑は中指、黄色は薬指、赤は小指を置かなければならない。中には指定された2つの指を置かなければいけない穴や、2つの指のうちどちらを置いてもよい穴も。
スタートに指を1つ置いて、最初のカードに残りの指を置く。できるだけ多くの穴に置いて、無理だと思ったら得点。1本だけ残して、次の穴を目指す。こうして何回か得点しながらゴールをめざす。
色違いの穴に指を置いたり、カードをずらしてしまったら滑落となる。うまく手を回転させて、慎重に登らなければならない。
ポイントは、右手と左手を選べるというところと、最初の指を選べるところ。この選択が、指の器用さ以上に得点に影響する。コースを作ったら、始めにすることはシミュレーション。「まず左手の小指から始めて、こうやって、ああやって……」先の先を読まなければならない。ゴールから逆算していくという方法や、後手番の人は、高得点者の運指を記憶しておくという手も。
先が読めるとはいえ、人によって指が意外に届いたり、届かなかったりで結果が変わる。アクロバティックな置き方ができたときは拍手喝采が起こるだろう。
神尾さんが初っ端からカードをずらして滑落し、私も2ラウンド目で指を間違えて滑落と出遅れた。ぽちょむきんすたーさんが奇跡の五指連続制覇で1位。神尾さんが夢中になってテーブルに上っていたのが笑えた。
Climb!
B.ミショー/ル・スコーピオン・マスク(2008年)
1〜5人用/10歳以上/20分
ゲームフィールド:ノボレ!
エクストラ(Extra!)
巨匠の遺作を何気なく
シュミット社(ドイツ)が昨年4タイトル発売した「ロール&プレイ」シリーズ。そのままダイスタワーになるプラスチックの箱とダイス、あとは得点用紙が入っている。この中の一つがまさか故S.サクソンの作品だったとは、しかもあの名作『キャントストップ』系の作品だとは思わなかった。
この作品は、S.サクソンの著書『ゲーム大全(A Gamut of Games、1992年)』に収録された『ソリティア・ダイス』を製品化したものである。この本には大賞受賞作の『フォーカス』や全体ゲームの『ハグル』をはじめたくさんのゲームが収録されている。オリジナルは1人用だが、得点用紙を用意すれば『ストリームス』のように、何人でもプレイできる。
5つのサイコロで2組のペアを作る。それぞれのペアを合計して、得点用紙に記入。また5つサイコロを振って、2組のペアを作って記入というのを繰り返す。
数字は2から12までの11種類。どの数字もマイナスから始まり、プラスに転じるのは何回か後である。始めるなら徹底的に、始めないなら決して手を付けないというモットーは『ケルト』のようだ。
確率の低いもの(2や12)はプラスに転じるまで早く、得点も高いが、その分滅多に出ないので、着手するなら早い段階から始めておきたい。また、確率の低いものに集中しすぎると、出目によってどうしようもない場面が出てしまうので、確率の高いところも用意しておいたほうがよさそうだ。
ここまでは『キャントストップ』に近いが、サイコロを5つ振るのを不思議に思った人もいるだろう。毎回ペアを作るときに1つ取り除かれるこのサイコロが、このゲームの特徴である。
最初の3回で、自分が取り除ける出目が3つ確定する。以降、このどれかの目を取り除かなければならない。そして取り除くたびに記録して、一定回数取り除くとゲームオーバーとなる。3つの目をまんべんなく取り除いていかなくてはならないわけで、これが想像以上にきつい。知恵を絞って、いい組み合わせを考えたい。
序盤はみんな似たような取り方だったが、次第にハイリスクの高得点にかける人、安全なところに集める人に分かれてきた。私ととなりのcarlさんはバランス型。出目にも恵まれ、2人が残ったが、私は最後に痛恨のスタートを余儀なくされる。結局carlさんが550点というハイスコアで1位。半分はマイナスで終わったことを考えるとすごい点数である。
各自の記入が正確かどうか確認しづらい面もあるが、人数にとらわれず、サイコロの一投一投に盛り上がるいいゲームだった。死して10年経つ今も愛好者を楽しませてくれる故S.サクソンに感謝。
Extra
S.サクソン作/シュミットシュピーレ(2011年)
1〜∞人/8歳以上/20分
メビウスゲームズ:エクストラ