ディガー(Digger)
アワアワの宝石集め
一昨日公開されたボードゲームサイト「暮しとボードゲーム」で、ゲームマーケットに毎年訪れているカクテルゲームズ(フランス)社員のインタビューが掲載されていた。フランスでは10年前までゲーマーズゲームが中心だったが、今は『ディクシット』『ドブル』『ジャングルスピード』(いずれも日本語版あり)などのパーティーゲームが流行っている。ゲーマーズゲームは売れても5000個だが、ファミリー向けのパーティゲームは10万個とケタ違いだ。
『ドブル』と同じ丸い缶ケースで発売されたのがこの『ディガー』も、この流れに乗っているゲームだろう。。10年以上前からライトで奇抜なゲームを発表しているR.フラガの作品で、制限時間内にダイスを振って宝石を集める。砂時計を見ることはできず、時間内にやめないと全没収となってしまう。同じ作者の『タイムイズマネー(2003年)』と同じ趣向で、はげしく焦ってしまう。
自分の番になったらダイスを振り、出た目の色の宝石(キューブ)を中央から取る。ただし、宝石をとれるのはその色が1個だけだったときだけ。2個以上出た色は取ることができない。ダイスは何回でも振ることができ(全部まとめて)、そのたびに宝石を取ってよいが、ある時点で振るのをやめ、取った宝石を色分けして自分のタイルに置き、「ストップ!」といってはじめて自分のものになる。
その間、となりの人は砂時計を手で隠してもっている。30秒で砂時計が終わったら「ストップ!」という。それまでに手番の人が「ストップ!」と言っていなければ、その手番の宝石は全没収。言っていれば獲得できる。
黒いダイス目は、1個だけ出ると他の人(誰でもよい)から宝石を奪うことができる。たくさん宝石を集めている人から奪いたいが、選んでいる余裕はあまりない。目についたとなりの人から奪ってしまうことも。
青いキューブは宝石ではなく、川の水を表している。中央から青いキューブがなくなったらゲーム終了。各自タイルの上に置いたキューブの得点の合計で勝敗を決める。奪い合いがあるので、勝敗は最後まで分からない。
発展ルールでは、人によって宝石の点数が変わり、ほしい宝石とあまりほしくない宝石があるので奪い合いにも駆け引きが出てくる。ニクイ演出である。
神尾さんが時間ギリギリに手番を終えるという神業で先行したが、皆に狙われる。鴉さんが後半一気に追い上げて1位。私は時間をたくさん余らせる小心者だった上に出目にも恵まれず最下位。2〜3投して何も取れないと焦りがクライマックスになって時間が分からなくなるのであった。
ダイスを素早く転がし、出目をさっと判断し、その宝石を取る。手先の器用さとパターン認識、そして時間感覚まで問われる大慌てゲームである。
Digger
R.フラガ/アスモデ(2010年)
3〜5人用/8歳以上/15分
国内未発売
乱世の豪商(Merchants in Turbulent Ages)
0.1mmの攻防
ゲームマーケットでは時折、目をみはるようなオリジナルアイデアに遭遇する。毎回ゲーム名がブース名になっている佐伯拓也氏のこの作品は、『落水邸物語』(2005年)もそうだったが、「いったいどのようにしてこんなアイデアを思いつくのだろう?」とつくづく感心する。
コマを置いたままで、ゲームボードが差し替えられるのである。透明アクリル板の下にボードを差し込むので、コマに触れずに盤面が変わる。感動的なシステムだ。
ボード上には一〜五の国があり、それぞれで商人の数を競う。一斉にカードを出して、数字の多い順に自分の商人コマを置く。これを何ラウンドか繰り返したら、国ごとに商人の数が多い順に得点。コマの数が多いほど得点が高いので、適度に競り合って皆が置き、その中で頭ひとつ抜けるのが理想だ。
商人コマは、ほかのコマや国の境界線に触れてはいけない。そのため慎重なプレイが必要で、わざわざピンセットまで付いている理由もすぐに分かる。この部分は指先の器用さが問われるアクションゲーム。緊張して指がプルプル震える。
得点計算が終わると、ゲームボードが次の時代に変わる。ボードを差し込むと国の位置ががらりと変わり、このとき国の外や境界線にあるコマは除去されてしまう。何という乱世ぶり。でも次の時代のボードはわきに置いてあるので、2つのボードを見比べて生き残れるようにコマの位置を決めることができる。「もうちょっと右かな?」とか。
商人コマには大中小と大きさが違うが、小さいほうが小さいスペースにも置きやすいというだけで平等に数える。ただし大のコマは国の中央にある城に置くことができ、同数タイで勝つという特権が得られる。大コマは置き場所がなくなる前に早めに置きたい。
3人プレイで45分ほど。実際のところ、コマは大部分が除去されてしまうがcarlさんの目視が冴えていて、いつも1,2個多く残った。しかしpsy+さんと狙いが重なってコマが生きなかった上に痛恨のミス(小さいスペースにぎりぎり置こうとして失敗)。その間に私がボーナスを確実におさえて1位。
3人プレイと4人プレイではマップが異なる。除去されすぎては前のラウンドからのつながりがなくなってしまうし、残りすぎては次のラウンドに置き直す分がなくなってしまう。ほどほどに除去されるバランスのよさも光っていた。
乱世の豪商
佐伯拓也/(自主出版)
3〜4人用/12歳以上/60〜75分