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シュピール’12:新しい伝統

ドイツのボードゲームメッセ「シュピール」では、来月発行予定の『アメージングテーブルゲーム』3号の取材を依頼されていた。ドイツでは日本と違ってボードゲームを普通に楽しめる環境があるという記事で、家族連れで遊んでいる様子や、デパートのボードゲーム売り場をレポートするようにとのこと。
そこで会場内で遊んでいる家族に声をかけて写真を撮らせてもらい、インタビューを行った。以前に『シュピール』でもやったことがあるので割と手慣れたものである。家族もほとんどが喜んで協力してくれる。
インタビューの内容は本誌をご覧いただくとして、今年は平日から家族連れがとても多かったように思う。ドイツでは学校の秋休みが州ごとに定められており、シュピールの期間と重なる年と重ならない年がある。去年は重ならなかったが、今年は重なっているので参加する家族が増えたようだ。
たまたま会ったボードゲームジャーナリストのH.シュレーパーズ氏(games we play)に、どうしてドイツではこんなに多くの家族がボードゲームを遊ぶのか尋ねてみた。日照の少ない天候(特に冬)や論理を重んじる国民性などが理由としてよく挙げられるが、専門家の見方はどんなものだろうか。
シュレーパーズ氏は、「親が遊ぶから子供が遊ぶのだ」と答えた。なぜ親が遊ぶかといえば、大人向けのボードゲームが80〜90年代にドイツでたくさん発売され、その時期から遊んでいたからだという。実になるほどと思った。
日本でも、ボードゲーム中心世代は30代で、子供の頃にボードゲームブームを経験している。しかし(私も含めて)その大方はファミコンブームなどでボードゲームを中断し、最近(10年以内)に再開している。一方ドイツでは、この間にも面白いボードゲームが供給され続け、中断することなく10代、20代を送ってきたというわけだ。
ドイツでも、70年代以前にはキッズゲームが中心で、大人だけで遊ぶことはなかったという。「新しい伝統だ」とシュレーパーズ氏。
なぜ大人だけで遊ぶことを前提としたボードゲームがドイツでかくもたくさん発売されたのかは、分析の余地があるだろうが、ドイツ年間ゲーム大賞の果たした役割は非常に大きい。大人向けのボードゲームなど、もとよりヒットを期待できないわけだが、受賞することで売上が10倍にもなる賞があることは、出版社にとって大きなインセンティブになる。
ドイツの親(といってもシュピールに参加するくらいの愛好者に限られるだろうが)は、決して子供のためにボードゲームを始めたのではない。子供がボードゲームができる年齢になるのを待ちに待って、ボードゲームを始めさせるのである。日本でもそんな大人が増えたら、ボードゲームを普通に遊ぶ文化が根付くのではないだろうか。

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『ボツワナ』日本語版発売

ボツワナニューゲームズオーダーは15日、R.クニツィアの動物並べゲーム『ボツワナ(Botsuwana)』日本語版を発売した。2〜5人用、8歳以上、30分、3500円。
動物のミニチュアフィギュアが目を引く作品。手札からカードを出して好きな動物を取っていき、いずれかの動物にカードが6枚置かれたら終了。その時点でそれぞれの動物の一番最後に置かれたカードがその動物の価値となり、手持ちの動物の価値の合計で勝敗を競う。
オリジナルはアミーゴ社(ドイツ)の『フリンケ・ピンケ(Flinke Pinke)』というカードゲームで、ゲームデザイナーR.クニツィアの代表的作品。シンプルながら駆け引きの熱いゲームとして改版・リメイクされ続けている。本作品はグリフォンゲームズ(アメリカ、2010年)によるもので、これまでもニューゲームズオーダーが英語版を販売していた。
ニューゲームズオーダー:ボツワナ日本語版
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