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『グレート・ウエスタン・トレイル:北部への道』日本語版、4月4日発売

アークライトは4月4日、牧場経営ゲームの拡張セット『グレート・ウエスタン・トレイル:北部への道(Great Western Trail: Rails to the North)』日本語版を発売する。ゲームデザイン・A.プフィスター、イラスト・A.レーシュ、2~4人用、14歳以上、75~150分、3800円(税別)。
ドイツゲーム賞2017で『テラフォーミング・マーズ』に次ぐ2位となってから1年。エッガートシュピーレが発売した初の拡張セット。家畜の出荷先にシカゴ、デトロイト、ニューヨークといった北部の都市が追加され、さらなる戦略と奥深さが生まれる。
北部の都市に出荷するには、もう一つの追加要素「支社を開設する」アクションが必要。支社を置くことで遠くの都市に出荷できるだけでなく、追加のアクションを行うこともできるようになる。どの都市を目指し、どのようにネットワークを広げるのか、広い選択肢が用意されている。
内容物:拡張ゲーム盤1枚、追加の駅長タイル6枚、追加の私有建物タイル8枚、プレイヤー補助タイルⅡ4枚、支社コマ60個、中都市タイル10枚、交換トークン20個、追加のディスク4枚
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ボードゲームシンポジウム2019 in 大阪レポート

3月9日、大阪・高槻現代劇場にてNPOゆうもあによる「ボードゲームシンポジウム 2019 in 大阪」が開催された。テーマは「キッズゲーム分野への挑戦」で、85名ほどが聴講した。
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ゆうもあは2004年から3年間、大阪と東京でボードゲームシンポジウムを開催していたことがあり、13年ぶりの開催である。その間に日本のボードゲームシーンはどんどん盛り上がっているが、子供向けは今ひとつ振るわない。そこでこのシンポジウムを通して問題点を共有し、新しい風を起こそうというのが趣旨だった。
プログラムは丸田康司氏(すごろくや)の基調講演に始まり、分科会でTTBこと富本尚志氏の「子育てから親育ちへ~ボードゲームで想い出づくり~」、草場純氏の「日本の伝統ゲームと子どもの遊び」、畑直樹氏の「子どもの育ちからみたボードゲーム製作のポイント」、最後にこの4名によるパネルディスカッションという豪華で充実した内容である。
すごろくやはキッズゲームにも力を入れており、客層は親子とカップルと大人がほぼ1:1:1と、ボードゲーム専門店にしては親子が多い。丸田氏によると、大人のボードゲーム愛好者が考える「キッズゲーム」は、絵柄や単純さなどの点で自分には面白くないゲームを意味することが多いが、「ちょうどよい」難易度で、「子供も遊んでくれるし自分も楽しい」ものと捉え直した。子供に大人が付き合うのでは続かない。大人も本気になれることが大切である。
『ナンジャモンジャ』だけでなく、すごろくやのオリジナルゲームのラインナップ『イチゴリラ』(3歳~)『すずめ雀』(6歳~)、子供専用のお題を大幅に追加した『ベストフレンドS』(7歳~)、さらに来月発売予定の『かたろーぐ』(5歳~)も、このコンセプトに沿った商品であることが分かる。また、すごろくやの体験イベントでは必ず親を参加させ、子供だけで遊ばせることは稀というのも、親に「これらは子供用のおもちゃ」ではなく、「むしろ自分が楽しいもの」と気付いてもらうことを意図しているという。
このような趣旨でキッズゲームを親子に広める際の課題として、家族同士の交流が少ないことや、家族内でボードゲームのルールを共有できないことが挙げられた。親がボードゲーム好きでも、子供が付き合わされているだけという例も多い。ただルールを理解するだけでなく、駆け引きをしたり、同年代の子供を気遣って一緒に楽しく遊ぶということが見受けられるため、少し難易度を下げてでも、子供自らの考え甲斐を引き出せるゲームを見極めることが必要とした。


分科会は滅多に聞くことができないと思ってTTBこと富本尚志氏の講演へ。ゆうもあゲーム会で毎月子供を相手にボードゲームを遊ばせてきた現場の声である。「親が一緒にしないといけないので、子供が遊んでいる間に用事を済ますことができない」ことがボードゲームのデメリットとされていること に嘆いてみせつつ、親を頼ることが可視化される、負ける練習ができるといったボードゲームの良さを熱く語った。
富本氏は自身の活動を25年ぐらい頑張ろうという。それは一世代伝わればボードゲームの火は消えないからである。子どもたちは遊んだことを忘れていても、やがて大人になり、親になれば思い出してくれる。少なくとも、ボードゲームに対する拒否反応はなくなる。
また、ボードゲームは知育にいいのかという質問に対しては、実際はそうとも言えないけれども、「鰯の頭も信心から」で、そう信じる親を肯定していくという。親子の関わりを深めるのは別にボードゲームでなくてもよいが、非常に有用であると結んだ。
ご自身「親ばか」を自称する子育ての話や、子供がずるやインチキをしたとき、負けて泣いているときの対処(腕を掴む、卓から一旦外して楽しい様子を見せる)など、実用的な話も伺うことができ、終始子供への愛情が溢れ出ていて感動的なお話だった。


最後のパネルディスカッションは、ゆうもあの一階理事長が用意した質問にひとりひとり答えていく。対立する論点はほとんどなかったが、貴重な意見を聞くことができた。以下箇条書き。
①好きなキッズゲーム
『カルテット』と『ネコとネズミの大レース』(丸田)、『ドラゴンディエゴ』と『ミスターダイヤモンド』(草場)、『ミスターウルフ』(畑)、『こやぎのかくれんぼ』(富本)
②日本のキッズゲームの問題
大人が面白さを知らない(畑)、よいキッズゲームを知らない(草場)、根拠をもって考える習慣がない(丸田)、次の世代に期待(富本)
③知育ゲームはゲームなのか?
頭が良くなるとは思っていないが、親の言うことを認める(富本)、「おもちゃ」のネガティブイメージを払拭するための方便(畑)、学校の勉強と分けて、幸せに近づくためのステップと捉える。ゲームを楽しみたかったらもっと勉強しよう(丸田)、ゲームは遊ぶために遊ぶものであるべき(草場)
④こんなキッズゲームがあったらいいな
電車(丸田)、おいしゃさん(畑)、作るのは簡単ではなく、デザイナーには挑戦しがいがあるジャンル(草場)
⑤みなさんにおすすめしたいキッズゲーム
ワイルドバイキング、ありがた迷惑(丸田)、スティッキー(ダイスなし)、イチゴリラ(5なし)(草場)、四匹いるよ/森のかくれんぼ/仲間探し(富本)
⑥メッセージ
ボードゲームは数ある選択肢の一つだが、結構いいものです(丸田)、口コミで認知度を上げるきっかけに(畑)、キッズゲームはボードゲームのフロンティア(草場)、マジックアイテムではないが、活用できれば親が親になるのにいいツール(富本)


会場内には物販コーナーも設けられ、参加者には500円引き券が配られてお買い物も楽しむことができた。愛好家、デザイナー、親、教育関係者、いずれの立場にとってもヒント満載で刺激的なシンポジウムだったと思う。ゲームマーケットの前日に設定し、昨年秋からチラシを配って宣伝したにもかかわらず、参加者が思うように集まらず、担当の畑さんが「これでは大赤字でヤバい」とツイートしていたが、最後は駆け込みで一気に増えて持ち直したという。集客の問題もあって次回は未定だというが、せっかく復活したイベントなのでまたの開催を期待したい。
ボードゲームシンポジウム 2019 in 大阪 ~キッズゲーム分野への挑戦~