アクロス・ザ・ユナイテッドステイツ(Across the United States)
延ばしたい路線≠やりたいアクション
19世紀のアメリカを舞台に、株を購入し鉄道を延伸するボードゲーム。ゲームマーケット2019春に発表されたOKAZU brandの最新作で、久々の大箱ゲームでもある。鉄道や株というと重量級ゲームだと思われるかもしれないが、ゲーム中にやりたいことがはっきり見えていて、プレイ時間も60分を超えないため、重苦しさを全く感じさせない。
最初に旅客チケットカード(指定された都市をつなぐと得点)と、貨物チケットカード(指定された貨物を集めると得点)をもってスタート。序盤は、このカードがゲームの方針になる。
手番には、4枚の手札から1枚を出し、その色の路線を延ばす(コマを置く)。そして伸ばした路線の両脇にあるマスのアクションでお金や貨物や金塊などを獲得する。さらに手札から1枚を株として自分の前に出し、手札を補充して終了。これを規定ラウンド行う。
鉄道会社は6社あり、それぞれ起点がゲームの最初に決まっている。どの路線を延ばすかは手札とやりたいアクション、手持ちのチケットカード次第だが、さらに最終的に長く伸びた鉄道会社の株を多く持っていれば得点が高いため、プレイヤー間のマジョリティーも考えなければならない。
また、ほかのプレイヤーとの利害関係もあって、協力してひとつの路線を延ばしていくこともあれば、別の路線と競合することもある。手番数は思いの外少ないため、ほかのプレイヤーが引いた路線に便乗できればしたいところだ。
お金はいつもカツカツだ。お金を払えば途中の都市に都市コマを置いて得点にしたり、株購入駅で株を買ったり、ほかの鉄道会社がいる路線に延伸したりできるほか、乗換チケット、交易品、路線の延伸もできる。しかし収入は資本金駅に行くか、駅のアクションをパスすることでしか手に入らない。
ゲームが終わったら得点計算。つながった旅客チケットカード、集まった貨物チケットカード、鉄道会社ごとのマジョリティー、お楽しみの金塊、余ったお金や交易品を得点にして合計点を競う。
3人プレイで45分。西部に起点駅がなかったため、東側からひたすら延ばしていく展開となった。幸い一路線が長く延びてくれたおかげで何とか旅客チケットカードをクリア。交易品も、都市コマを全部建てながら無事に集まった。勝ちそうだと思ったが終盤に遠回りして路線敷設した分、得点が入らず僅差で2位。
マップは同じアメリカでも、駅チップの初期配置がランダムであるため、要所もゲームごとに変わる。また手札運がほどほどにあるのも重苦しさを緩和し、ほかプレイヤーの動向を踏まえてほしい路線に優先順位を付け、タクティカルに勝ち筋を探っていくのが楽しい。OKAZU brandの魅力をたっぷり詰め込んだ、完成度の高い作品である。
アクロス・ザ・ユナイテッドステイツ
ゲームデザイン・林尚志/イラスト・ryo@にゃも
OKAZU brand(2019年)
2~5人用/10歳以上/60分
朝日新聞に『スペースインベーダー・ボードゲーム』記事
朝日新聞の本日の朝刊「ニュースQ3」で、「デジタル時代にボードゲーム人気復活?」という記事が掲載された。このコーナーでボードゲームが取り上げられるのは2015年の『枯山水』記事以来。
書き出しは現在クラウンドファンディング中の『スペースインベーダー・ボードゲーム 』。30ドル以上の出資で製品が贈られるアメリカのプロジェクトで、〆切の6月15日を前にして現在のところ目標45000ドルの2倍以上となる115,500ドル(1254万円)が集まっている。これについて開発元である612エンターテインメントのアマディCEOが、3年ほど前から世界的にボードゲームの復活期が来ているとコメント。
話題は次にゲームマーケットに移り、運営の刈谷氏はSNSの後押しや、ボードゲーム市場の成長率が毎年20~30%であることなどについて話し、かつてのテレビゲーム世代が趣味として自作し、その光るアイデアが海外メーカーから注目されているという。ゲームマーケット来場者の推移グラフも掲載されている。
なお、記事中でシステムエンジニアの西野勝章氏が作った「20~80代の人生をたどるボードゲーム」はタイトルが明記されていないが、『もうひとりの私を生きるボードゲーム カレポ 』。ネット通販で3500円で販売されている。
・朝日新聞:(ニュースQ3)デジタル時代にボードゲーム人気復活?