翡翠の商人(Merchants of Jade)
8枚を競りで分ける
競り/オークションゲームは、プレイヤー間でバランスを取るものが多く、相場感を共有しないと面白さが味わえないことから中級向けに位置づけられることが多い。『ナショナルエコノミー 』のスパ帝国が今年発表したこの競りゲームは、「8枚のカードをみんなで分ける」という仕組みによって、相場感を分かりやすくし、経験を問わず楽しめる作品となっている。
山札から8枚のカードを場に並べたらゲームスタート。手番プレイヤーから時計回りに、何枚ほしいかを宣言する。4人ならだいたい2枚といったところだろう。以降のプレイヤーは、降りるか、前のプレイヤーより少ない枚数をいう。こうして一番少ない枚数を言って、ほかの全員が降りたら、その枚数だけ場から好きなカードを取る。ほかのプレイヤーは残ったカードを再び競っていく。最後に残った1人は残り全部をもらえるが、それは全員が選ばなかったものなのであまり魅力がないかもしれない。
カードは集めれば集めるほど得点効率(1枚だと1点だが、2枚で3点、3枚で6点……12枚で78点!)が高まる「翡翠」、純粋に得点になる「金」、金の得点を超えなければ得点になる「贋金」、最も多く集めた順に得点になる「香辛料」、A~Eを揃えれば得点になる「書物」の5種類。ゲームが進むにつれて、カードの欲しさがプレイヤーによって変わり、宣言枚数に影響を及ぼす。
さらにこのゲームの特徴として、「○枚取って1枚返す」という宣言ができる。優先順位は「3枚取る」>「3枚取って1枚返す」>「2枚取る」>「2枚取って1枚返す」>「1枚取る」>「1枚取って1枚返す」となっている。金の得点を超えてしまった「贋金」はもう返せないが、ほかの人より多く取りすぎた「香辛料」、重複して取った「書物」などを返すことで、よりよいカードを取りたいところ。でも、返したカードはほかの人が取っていくことになるので、どこまで敵に塩を送ってよいかも判断しなければならない。「このカードを返したら、あの人が取っていくはずだから、そうすると得点がドカンと増えて……」
山札のカードがなくなったらゲーム終了&得点計算。全てのカードが出てくるので、「まだ金の8は出てないな」といったカウンティングも判断に関わってくるだろう。
3人プレイで20分。3人だと「2枚、3枚、3枚」ぐらいの分け方が基本になるが、状況によって「2枚取って1枚返す」「1枚取る」もあり、残りの人がたくさんカードを取ってしまうので悩ましい。終盤は香辛料のトップ取りと、贋金がオーバーするか否かの瀬戸際でどんどん盛り上がった。自分が損をしても相手に大得点チャンスを与えないといったプレイも可能で、まだまだ研究の余地がありそうだ。
翡翠の商人
ゲームデザイン・西村裕/イラスト・長谷川登鯉
スパ帝国(2019年)
2~5人用/10歳以上/20~30分
協力して脱獄ルートを封鎖『バンディド』日本語版、6月15日発売
すごろくやは6月15日、協力カードゲーム『バンディド(Bandido)』日本語版を発売する。ゲームデザイン・M.N.アンダースン、イラスト・L.G.ペレズ、1~4人用、6歳以上、10~15分、1400円(税別)。
ヘルベティク社(スイス)から2016年に発売された作品。牢屋にいる悪党が穴を掘って脱獄しようとしているのを、相談して通路カードを配置し、全てループか行き止まりにすることを目指す。
簡単に見えて通路カードはどんどん分岐していくため、先の先まで考えた配置が求められる。美しいデザインと相まって、気軽に出したくなる小箱ゲームだ。
ヘルベティク社は昨年のエッセン・シュピールで複数の日本人から注目を集めた出版社で、ゲームストア・バネストで輸入版13タイトルが取り扱われている(こちらから製造元「Helvetiq」で検索)。
・すごろくや:バンディド