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セネターズ(Senators)

プレイ時間に比例しない深さ
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このゲームの日本語版がリリースされたゲームマーケット2019秋、B2FGamesの吉田店長からプレイ時間の長さとゲーム体験の深さは別物だという見解を伺った。プレイ時間が長いからといってルールをなぞっているだけでは深くならないし、プレイ時間が短いからといってライトゲームとは限らない。このゲームを遊んでみて、吉田店長が何を言わんとしているか理解できた。箱も小さく、プレイ時間は40分程度というミドルクラスでありながら、一手番一手番に濃厚なジレンマがあり、終わってからの満足感が半端ない。しかも「あの時こうすればよかった」「ここでこのカードが出ていたら展開は勝てたかも」と、ゲームが終わってからもしばらく余韻が持続する。
基本はセットコレクションである。カードを入札で獲得し、揃えて売り、そのお金で元老院の支持を上げる。手番ごとにめくられるイベントカードの中から「戦争」が4回出たところでゲーム終了となり、その時点で支持が最も高いプレイヤーが勝利する。
入札の値付けは選択式だが、それでも悩ましい。手番プレイヤーがその金額を受け取って入札したプレイヤーにカードを渡すか、その金額を入札したプレイヤーに支払って自分で取るか選ぶことができる。お金はいつもカツカツで、自分が要らないカードはできるだけお金にしたいが、みすみすカードを相手に渡したくもない。どれくらいの金額なら手を打てるか、ものすごい駆け引きがある。
入札にかけられる4枚のカードのうち3枚は、色と数字のついているカードで、揃えてお金にする。最後の1枚は元老院カードで、その色ならどの数字にもなる「属州監督」、票を奪う「監察官」、票を安く買える「執政官」、どんな組み合わせでもカードを売れる「財務官」がある。タイミングが良ければ逆転できるカードだが、「属州監督」は、イベントで「属州監督裁判」が出ると捨て札になってしまうなど、リスクも伴う。1位のプレイヤーは、「監察官」がほかのプレイヤーの手に渡らないようにするだろう。
さらに毎手番の最初にめくられるイベントカードにいちいち頭を抱える。「財政赤字」が出たら、全員がコインを握り、合計額が規定以上なら一番多く握った人が票を得、規定以下なら一番少なく握った人が票を失う。最多/最少でなくても握ったコインは全て支払わなければならず、囚人のジレンマを味わう。
イベントカードから4枚目の「戦争」が出るのは、いつになるか分からないところも緊張感がある。先行逃げ切りは攻撃を受けやすく、3枚目が出ると皆一斉に票を買いに走るが、そこで間に合うかどうかは分からない。
さらに手番には「強請」というアクションがあり、他プレイヤーから欲しいカードを提示額で買い取ることができる。相手は提示額を逆に支払うことで拒否できるが、お金はできるだけ票を買うのに使いたいし、不意の支出もある中で、プールしておけるお金はさほど多くない。
このように至るところに駆け引きとジレンマが組み込まれており、タフさが求められる。終わった後の疲れが心地よく、深いゲーム体験というものがどういうものかをとことん味わうことができる。
Senators
ゲームデザイン・H.タータ&R.タータ/イラスト・S.グスタフソン他
フェルティ(2017年)+ニューゲームズオーダー(2019年)
3~5人用/10歳以上/40分

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『伝統ゲーム大事典 ―子どもから大人まであそべる世界の遊戯―』

著・高橋弘徳(大阪商業大学アミューズメント産業研究所研究員)、朝倉書店(2020年2月1日)。
ボードゲーマーの多くは、現代の欧米ボードゲームを中心に遊んでおり、伝統ゲームと言われてもピンとこないかもしれないが、『マンカラ』『ごいた』『投扇興』『彦根カロム』などと言われれば聞いたことぐらいはある人も多いのではないだろうか。これらをはじめとして、日本および世界各国で古くから遊ばれてきた伝統的なゲームを242種、分類して紹介する。
各ゲームの概要には、どこの国のゲームか、ほかのゲームとどのような関係があるかなどの解説があり、実際に遊べるように「使用するもの」「ゲームの準備」「ゲームの進行」「ゲームの終了と勝敗」が記載されている。ほとんどのゲームは紙に線を引いて、適当なコマを使うくらいなので、読んでいる内にやってみたくなったゲームはすぐに遊ぶことができる。
ゲームの分類は「盤のゲーム」「札のゲーム」「サイコロ」「動作のゲーム」「スポーツのゲーム」「言葉のゲーム」「飲食と五感のゲーム」「動物のゲーム」「くじと当てもののゲーム」「比べ合うゲーム」に分かれており、さらに細かい分類がある。索引では地域別や五十音順に探すこともできる。日本のゲームが圧倒的に多いが、名前も聞いたことがないような世界中のゲームも少なくない。
ボードゲームのシステムに関心のある方は、各分類の説明が参考になる。例えば陣取りゲームは、『囲碁』が紀元前から中国に存在しており、『リバーシ』が1870年代にイギリスで発明されるまで、2500年以上も空いているという。複数のゲームを歴史的・系統的に関連付けているのは大変興味深い。
現代のボードゲームも、つまるところこういった伝統ゲームの要素を抽出し、他のものと組み合わせ発展させて出来上がっている。単純であるからこそ、面白さの源泉が詰まっているともいえるだろう。ゲームデザインのヒントにもなりそうだ。
ゲームの紹介だけでなく、まくら投げや雪合戦から、マウスパッドや携帯電話を投げる大会まで、国内外で行われているゲーム(珍スポーツ)のイベントも集めている。遊びの世界は本当に奥が深い。