洛陽の門にて(Vor den Toren von Loyang)
『アグリコラ』(2007)、『ルアーブル』(2008)と続けざまにヒット作を生み出し、一躍時代の寵児となったローゼンベルクが、また今秋、新しいボードゲーム『洛陽の門にて』を発表する。前作の影響もあってたいへんな注目を浴びており、早速ホビージャパンが日本語版を発売する予定になっている。
ローゼンベルクは、この3タイトルを「収穫三部作」と位置づけているが、制作されたのは『アグリコラ』より前の2005年だという。『アグリコラ』が影響を受けたとされる『ケイラス』よりも前の話だ。したがって『洛陽の門で』は、『ケイラス』の影響を受けていない。著者は、オランダの『アンティクイティ』(スプロッター・スペレン)にインスピレーションを受けて作ったと述べている。そして4年のブランクを経て、新規メーカーであるハルゲームズから発売される。
畑に野菜を植えて収穫し、売った利益で勝利点を買うゲームである。野菜は小麦、カボチャ、カブ、白菜、豆、ニラの6種類があり、後者ほど作りづらく、そして高い。これらのコマを畑に植えると『アグリコラ』のように増え、1ラウンドに1個ずつ収穫できるようになる。
一番のポイントは、収穫した野菜を計画的に高く売るにはどうしたらよいかというところだろう。そこで5種類のカードが登場し、自分の計画にあわせて毎ラウンド2枚ずつ取る。
そのうち収入になるカードは2種類。「顧客」は、毎ラウンド2種類の野菜を配達することで代金をもらえる。代金は高いが、配達できないと満足度が落ち、2回目で罰金を支払わなくてはならないという諸刃の剣。一方、「通行客」は1回だけ3種類配達すれば代金をもらえる。便利だが、顧客より通行客のほうが多いと、「何、楽な商売やってんじゃ」と怒られて代金が減る。顧客と通行客は、いろいろな組み合わせで野菜を買い取るので、自分が植えている野菜のラインナップに近くなるよう、よく吟味して手に入れたい。
収穫で足りない野菜を補うのが「市場」。ここではほしい野菜を交換で手に入れられる。また、作物の種類を増やしたいならば「共同の畑」。『ボーナンザ』の3枚目の畑のような役割をもっている。
そして、最後に20種類ある「助手」。この特殊能力をタイミングよく上手に使いこなせるかが勝敗を分けそうだ。『アグリコラ』と比べると枚数が少ないが、2つの能力の択一など、緻密な使い方ができるようになっている。中にはコンボを決められるものもあって、奥深さは変わっていない。
手番には、これらのカードを使って何アクションでもできる。そしてお金を貯め、ラウンドの最後に勝利点を買う。進めば進むほど高い。それに、全額を勝利点につぎ込んでしまえば、足りない野菜やカードを買うお金が不足する。バランスのよい経営手腕が試されることになる。
ほかにもローゼンベルクらしいカード処理がある。2枚のカードを取るときは、手札から場札に1枚ずつ出していき、場札と手札から1枚ずつ取って降りるという「カード配分」は駆け引きを生む。また、1ラウンドに1回、カードを2枚1組で買って重ねておく「パック買い」は、コンボが組みやすくなる。直感的には分かりにくいところもあるが、それはありきたりでないということだ。
収穫三部作を通して分かることは、ローゼンベルクがカードゲームデザイナーだということ。『アグリコラ』は職業や進歩カード、『ルアーブル』は建物や船カードが、実はゲームの中心であることに気がつく。『洛陽の門にて』は、ワーカープレイスメントのない旧来のシステムだが、カードの組み合わせが毎回新しい展開を生んでいくだろう。乞うご期待。
Vor den Toren von Loyang(At the Gates of Loyang)
U.ローゼンベルク/ハルゲームズ
1〜4人用/10歳以上/100分
日本語版がホビージャパンから発売予定(発売日は未定)
・Boardgame Geek:At the Gates of Loyang
・H@LL Games:Vor den Toren von Loyang
呪いのミイラ(Fluch der Mumie)
背後をすり抜けるスリル
『スコットランドヤード』はみんなで1人を追いかけるゲームだった。犯人を追い詰めるため、みんなで推理して相談するが楽しい。これを逆にして、1人でみんなを追いかけるゲームがこの『呪いのミイラ』。原題の「ミイラの呪い」も、邦題では逆になっている。作者はカサソラ。この人のゲームは興奮曲線の上がり方が尋常でない。
ピラミッドが描かれたボードを立てて、片側にミイラ役が1名、反対側に残りの探検家たちが座る。コマには磁石が付いており、立てたボードの上を移動する。ミイラのコマだけ、ボードを磁石ではさむようになっていて、探検家はミイラの動きが手に取るように分かる。これがスリルのもとだ。
一方のミイラは、ピラミッド中をうろつく探険家の動きは分からない。ただ、宝を取ったときだけ、どの宝を取ったか分かるので位置が特定できる。それをもとに推理して追いかけるというわけだ。孤独なものだが、一方ごく旅に恐れおののく探検家の顔色を見るのも悪くない。
ミイラが探検家のマスに入ると、ビヨヨーンという音がしてコマが重なり合う。これがいかにもミイラにとっ捕まった感じでものすごくいい。捕まったコマはライフを減らされて振り出しに戻る。
こうしてミイラが全員から一定数のライフを奪うか、その前に誰かが予め指示された宝を全部集めたらゲーム終了。今回は経験者stさんが裏の裏まで見透かしたように追いかけてきて、私はあれよあれよという間に瀕死。ちくたさんがリーチしたが、あと一歩及ばなかった。
探検家の動き方にも裏の裏をかいたトリッキーなものがあり、また協力プレイでおとりになるという方法もある。ミイラのすぐそばを通り抜けていくスリルは最高だ。一方、ミイラにしてみれば、リーチしている探険家をよく覚えておくほか、探検家たちの目線や手の動きの観察力も問われる。単なるおにごっこかと思ったら、意外と奥が深い。ボードゲームなのに、意外に安いのも魅力だ。
Fluch der Mumie
M.-A.カサソラ/ラベンスバーガー(2008年)
2〜5人用/8歳以上/30〜45分