権力闘争(Power Struggle)
この会社はもう終わってる
会社を舞台に、ポストと特権をめぐって仁義なき戦いを繰り広げるボードゲーム。作者名は伏せられているが、エッガートシュピーレの人に聞いたら、自分が勤めている会社の実話に基づいて作っているので明かせないのだという。今、アメリカの資本主義に飲み込まれつつあるドイツらしく、エリア・マジョリティ(配置したコマの多い人が利益を得るシステム)という地道な部分と、イベントや特殊能力という派手な部分が融合したゲームとなっている。
プレイヤーの権力状況は影響力、持ち株数、メインオフィスの数、汚職実績、社外顧問数で表され、勝利条件となっている。手番にはこれらのパラメータを伸ばすアクションを行う。さらに最初にランダムに指定されるライバルに3つの領域で勝つことという勝利条件があり、合計6つの勝利条件の中からどれでも4つを最初に満たせば勝利となる。
基本的な流れはこうだ。まず、6つある部署に課長と社員を配置して勢力を築く。課長が一番多いと部長を出せる。部長を出すと特権が手に入り、また取締役に人員を送り込める。取締役が一番多いと社長を出せる。でも社長は1年でクビだし、取締役も席に限りがあり、新人が入ってくると前にいた人からクビになる。クビになったらまた課長から権力を築きなおしだ。
ラウンドのカギを握るのは通信部の部長だ。最初にイベントカードを自分の好きなように並べ、その順にラウンドが進む。1ラウンドで何アクションできるかも、通信部の部長のみが知っている。通信部の部長はスタートプレイヤーでもあるので、そのアクションを見て、次のラウンドはあるかどうかを判断しなければならない。
風刺もたっぷり。メインオフィスは、2つの課を統合して作るが、そのとき社員はリストラされる。法務部の部長は、社員をクビにして影響力を上げる。いつだって、しわ寄せは労働者だ。また、社員のモチベーションを表すトラックがあるが、ゲームが始まるや否やダダ下がり。でもモチベーションが下がれば下がるほど、株を安く買えたり、ボーナスが増えたり、社員が多く雇えたりといいことずくめ。そして何よりも賄賂。社長や部長の特権を賄賂でやり取りする。賄賂をあげたほうももらったほうも汚職実績(勝利条件のひとつ)となる上に、断ると報復措置として社員を1人消されてしまう。この会社終わってるよ!
影響力・持ち株数・メインオフィスの数でcarlさんに勝つという勝利条件が与えられていた私は、carlさんが追いついてこないうちにこの3つを規定点以上にして勝利。汚職ポイントは、規定点が妙に高く設定されている上に、特権をもらって使うまで手間がかかるためそう頻繁に贈収賄できない。これを指定された人は、実質的にもう1つ別の勝利条件を目指さなければならず、たいへんそうだった。風刺をきかせたいためか、ルールが多く時間もかかるが、本当に会社の中でもがいている気分になった。サラリーマンの方はプレイしないほうがよいかもしれない。
Power Struggle
ボードリック&フレンズ/エガートシュピーレ(2009年)
3〜5人用/12歳以上/120分
ハバナ(Havana)
先手番か、大効果か
『キューバ』の発売から2年、エッガートシュピーレはその簡易版(といってもほとんど別ゲームだが)を発売した。デザイナーはこのところコミュニケーションゲームが多かったシュタウペ。『キューバ』のエッセンスを取り出し、短時間で濃密に遊べるゲームに仕立て上げている。
目標は資材・お金・労働者を集めて規定点分の建物を建てること。建物は中央に並んでおり、端にあるものから建てる。次に必要なものは何かが分かる仕組みだ。
手番は13枚のアクションカードから2枚ずつ使う。それぞれ0〜9番の番号がついており、2枚のカードでできる2桁の数字(番号の小さいほうが10の位、大きいほうが1の位)が小さいほうから先に手番を行うことができる。
できることならば手番は先がよい。お目当ての建物を先に建てられるというだけでなく、先手番のほうがものがたくさん手に入るアクションが多いからだ。でも、効果の大きいカードほど番号が大きく、後手番になりやすい。番号の小さいものと大きいものをうまく組み合わせて、先手を取りたい。
全員がアクションを終えると、手番順に2枚のうち1枚を新しいカードに差し替える。数字の高いカードを残しておきたいし、先手番も取りたいから悩ましい。さらに差し替えたカードは、手札が2枚だけになるか、回復アクションでないと回収できない。手札はどんどん減り、選択肢はなくなる。ここにほかの人の選択を見るという要素があり、悩みどころ満載である。
順調だったくさのまさんが急ブレーキ。後を追うcarlさんもあと一歩というところでストップした。場にお金で建てる建物しかないのに、お金を取るアクションカードも、それを回収するアクションカードも使い切ってしまっていたのが原因である。出遅れていた私は、回復アクションを使っていなかったので、1手番早く手札を回収できることになった。そこで場にたまったお金を一気に取って逆転。
手番数からいうと3人プレイの場合、たった10手番くらいしかない。でもその間に自分は何を建てられるのか、ほかの人が何を建てそうか、どのアクションがベストかをじっくり考えなければならない。たいへん濃密なゲームである。
Havana
R.シュタウペ作/エッガートシュピーレ(2009年)
2〜4人用/10歳以上/45分