ゲームから人へ
たくさんのボードゲームを遊ぶのは、プラトンのイデアのように、面白いゲームを求め続けてのことであるが、逆説的に、遊べば遊ぶほど、面白いと思えるゲームの割合が減ってくるのではないかとこの頃思うことがある。
ボードゲームを本格的に遊び始めたのは大学4年の頃である。オーケストラの練習が終わってから、亀有のアパートに集まって月1回、サークルの友達や後輩と徹夜でゲーム会をした。最初から徹夜で遊ぶつもりではなかったが、あまりに面白いので徹夜になってしまうのである。
その頃遊んだゲームは、『ダイナマイト』、『グラス』、『エドカ』、『ジニー』、『大判小判』あたり。ほとんど東急ハンズで手に入れた。奥野かるた、メビウスを知るのはもう少し後になってからである。これらを毎回ローテーションして繰り返し繰り返し遊んだ。どれも面白かった。今、これほど遊んでいるゲームはない。
それから13年経った現在、ドイツにまで行くようになったのに、本当に面白いと思えるゲームは滅多に出会えなくなってしまった。「今年のエッセンでは、何がオススメですか?」という質問に、今年はまだ自信をもって答えられるタイトルがない。
これはもちろん私の個人的な心境にすぎないが、現在のドイツゲーム市場が置かれている状況もそれに近い。愛好者はどんどん新しいものを求め続け、タイトルは増え、寿命は縮まる。そのためロングセラーになりうるのは、今やほんの一握りに過ぎない。
そんな今日この頃であるが、必ずしも悪いことではないと思っている。個別のタイトルにこだわりがなくなってきた分、仲間と楽しむという面が強まっているからだ。新作をだしにして、気の合う仲間が集まる、しゃべる、笑う。初対面より2回目、2回目より3回目が楽しい。ゲームはノンリプレイ派でも、プレイヤーは超リプレイ派である。
何十年も続いているゲームサークルにいくと、ゲームをしないでおしゃべりだけで終わる人もいるという。まだそこまでの境地には至っていないが、その気持ちが何となく分かるような気がしてきた。ゲームマーケットはもちろんのこと、エッセンでさえも、新作を見に行くイベントというよりも、知り合いと会いにいくためのイベントになりつつある。
つまり一緒に遊んでくれる人々や、レビューを読んでくれる人々によって、私の今の趣味は続けられている。今年一緒に遊んで頂いた方々、当サイトをご愛読頂いている方々に感謝し、年末の挨拶といたします。
イラスト募集中(Einfalls-Pinsel)
強硬な意見がブラフに
ゲーム内容はこちら。絵を描くゲームというと不得意だからと尻込みする方も多いが、上手である必要は全くない。それどころか、何を描きたかったのか分からないくらい下手なほうがむしろよい。今回もたくさんの名作が登場して笑わせた。
みんなが描いたイラストを、ランダムに3枚ずつ出し、広告のコピーが発表される。コピーに合うイラストはどれか、自由に意見を述べる。その後で採点して、得点をイラストに記入しておく。それからイラストの作者が誰かを予想するフェイズがあり、また新しいイラストとコピーが出る。
一番笑え、そして考えるのは自由に意見を述べるところ。自分の作品を推して点数を稼ぎたいが、あからさまだったり我田引水だったりすればするほど怪しまれる。そこでほかの人の作品も適度にほめつつ、さりげなく自分の作品もアピールする。場合によってはマークを外すため、ほかの人の作品を強硬に推す場面も。何しろ最後まで自分の作品だと当てられなければ5点も入る。ブラフもしたくなるというもの。
tomokさんの描いたもじゃもじゃなキャラクター。1周目はドッグフードのイラストで「これは犬なんです」と説明されていたのに、2周目は政治ポスターのイラストで「これは政治家なんです。」ミステリーのイラストで円盤の絵をゾウリムシに見立てたり、ドラえもんをブルーマンだと言ったり、よくぞこれだけ想像性がはたらくものだとみんなで笑った。
Einfalls-Pinsel
K.トイバー/ASS(1990年)
3〜5人用/12歳以上/30分