ドイツ人の性格とボードゲーム
『びっくり先進国ドイツ』(熊谷徹著・新潮文庫)を読んだ。ドイツ人の性格として、次のような記述がある。日本から見れば、欧米一般に言えることのように見えるが、ヨーロッパの中でも、ドイツ人は特に際立っているそうだ。
・几帳面で、効率を追い求める精神から、せっかちで文句屋となる
・整理整頓が上手で、オフィスのデスクが散らかっていない
・個人の意思がもっとも尊重され、自分の意見や気持ちを正直に言うことが正しいとみなされる
・その一方で、知らない人でも困っていれば助ける精神が強い
・自我が強く、恋人に対しても妥協できない。離婚の際のトラブルを防ぐため、結婚契約書を作ることも
・可処分所得が低く、倹約家が多い。衣食は抑えるが、住宅と旅行には比較的お金をかける
・気に入らないことがあると、歯に衣を着せずに遠慮なく文句を言う。感受性よりも理屈が優先
・人々がみな他人をひじで押しのけて前へ進む社会(Ellenbogengesellschaft)。車の運転は攻撃的
・ナチスの反省が徹底的に教育されており、国粋主義と戦争を嫌う。徴兵制は廃止される可能性あり
もちろんこれは全てのドイツ人に当てはまるものではない。私の知り合いにも例外はたくさん思い当たる。ここでは一般的・典型的な傾向ととらえておく。
これらの性格が、ボードゲームが文化として定着した背景にあるとすれば、まず攻撃的である点が挙げられるだろう。「ひじで押しのける社会」を、家族の中でもやらずにはおれないので、それを解消するためにボードゲームが登場する。
次に効率性・理屈を重んじる態度は、ルール好きにつながる。お互いに攻撃的であるとき一定のルールが生まれ、それに則った戦いができるようになる。規則が先にあるのではない。攻撃的であればこそ、ルールの運用に几帳面になるのだろう。
日本で買えば輸入コストが上乗せされるが、現地で買えばボードゲームは安い。倹約家が安価で長く楽しめるものを探すとき、ボードゲームは有力な選択肢になるはずだ。
以上、攻撃的で、ルール好き、そして倹約家、この3つの性格がボードゲームが広がるもとになったのではないかと考えられる。
『ドミニオンへの招待』書評
3月中旬にホビージャパンから発売された『ドミニオンへの招待』を読み始めたところ、とても面白くて数日で読み終えてしまった。
『ドミニオン』はそれほどやりこんでいないので、カード名だけでは効果を思い出せないものも多い。基本セットはまだしも、『陰謀』『海辺』になるほど「そんなカードあったっけ?」という程度。なので攻略記事を読んでも激しく頷いたり首を捻ったりできない。
『ドミニオンへの招待』は、マンガによる紹介「はじめてのドミニオン」、基本セットからプロモカードまで解説する「オールカードレビュー」、いくつかの戦略を紹介する「サルでもわかるデッキ構築のススメ」、初手で何を買ったらいいかをアンケートする「ドミニオン版 何を取る?」、作者ヴァッカリーノのインタビュー、来月発売予定の新セット『錬金術』のイラストプレビューから構成されているが、全122ページのうち3分の2が「オールカードレビュー」に割かれている。ここの出来が全体を左右するわけだが、読んで実に楽しかった。
まず、全ページがフルカラーで、各カードがそっくり掲載されている。イラストをじっくり観賞し(ゲーム中にはあまり見ないものである)、カードの効果や値段を確認した上で、レビューを読めるのは嬉しい。
そしてレビューはクロスレビュー形式となっており、4人の評者が10点満点の得点と、評価の説明を掲載している。値段との割合、ほかのカードとの相性の良し悪し、そして好み。複数のレビュアーがいることで、偏った評価なのかどうかも分かり、皆が口を揃えて書いていることは、妥当性が高いという判断もできる。
でもそれ以上に読んで楽しかったのは、優れたコピーである。特に田中和彦氏のダジャレには、つい笑うことがしばしば。特に「探検家」(『海辺』)の「キンカーゲット・エクスプローラー」がツボにはまった。
このクロスレビュー形式は、多くの『ドミニオン』ユーザーが相乗りして、今ネットに次々と得点が掲載されている。本の評価点数と比べたり、自分自身で評価してみたりするのも面白いだろう。
そんなわけで、『ドミニオン』をやりこんでいる人にもそうでない人にも、この本はオススメ。海外では配布方法さえ決まっていないプロモーションカードの「へそくり」まで付録について1,680円。お得です。
・ホビージャパン:ドミニオン
・おひとりさまなめんな!:ドミニオンへの招待形式でレビューした人の評価を勝手にまとめてみた