バイエルンに死す(Lieber Bairisch Sterben)
自分が育てた軍隊に苦しめられ
1701年からヨーロッパ全体を巻き込んで起こったスペイン継承戦争。フランスのブルボン家出身のフェリペ5世が即位したことに反対し、オーストリアがイギリス・オランダと共に宣戦布告した。このときバイエルン選帝侯・マクシミリアン2世エマヌエル率いるフランス・バイエルン連合軍と、オーストリア・イギリス連合軍が戦ったブレンハイムの戦い(1704年)がこのゲームのもとになっている。
作者は今年『アラカルト』が年間ゲーム大賞にノミネートされたK.-H.シュミール。その『アラカルト』初版の1年前に発売されたレガシーゲームである。モスキートシュピーレの第1作としても記念すべき作品。しかし28ページというルール分量と、2〜5時間というプレイ時間が災いして、国内ではコレクターズアイテムという位置づけだった(一昨年のゲームマーケットで公開オークションに出ていたと思う)。それをこのたび、ストーンRさんの依頼によりルールを解読。カードを手書きで日本語化してのプレイとなった。
ゲームにはオーストリア皇帝軍、バイエルン選帝侯軍と、農民軍、修道僧軍が登場する。毎ラウンド、これらの軍勢で所定の都市を占領していれば得点になり、その合計で勝敗を競う。面白いのは、どの軍勢を担当するかが、毎ラウンド変わるところだ。昨日自分が育てた軍隊と、今日は戦わなくてはならない。
1ラウンドは15フェイズに分かれている。軍勢チップの獲得、各軍勢のリーダー決定、修道僧の競り、軍勢の順番決定、得点方法の選択、次ラウンド用の軍勢チップの記入、収入、軍隊の強化、給与の支払い、軍隊のリクルート、アクションカードの獲得、軍隊の移動、戦争、得点計算、修道僧の帰還。おおまかに言えば、このラウンドに誰がどの軍勢を担当するか決めて、それぞれ担当する軍勢を増強して、得点になる都市の攻防を繰り広げるという流れだ。
担当する軍勢は入札(毎ラウンド3〜4ポイントを各軍勢に配分する)で決まるが、戦争前に次のラウンドの入札額を決めるところがニクい。ミュンヘンなど、大都市を押さえている軍勢は入札の人気も高まるが、人気のない軍勢を取って増強し、大都市を落とすという手もある。どの軍勢を狙うかがとっても悩ましい。
戦闘方法は単純なダイス勝負ではない。まずコマ数によって基本防御力を計算する。そして3枚の戦略カードから1枚を選んで同時に公開。戦略カードには攻撃方法と防御方法の計算式(コマ数×(6D+1)とか、相手の攻撃力÷2とか)が書いてあり、攻撃力と防御力の差分だけコマが取り除かれるというシステムになっている。どちらも攻撃力が相手の防御力を上回っていると、両者全滅なんてことも。軍勢が劣っていても、いい戦略カードが来れば勝つこともある。また、アクションカードで追加の攻撃力を得ることもできる。
軍勢によって移動力や戦闘方法が異なるのも面白い。例えば農民は1コマの力が弱いが、結集すると基本防御力が急上昇し、戦略カードではなくダイス勝負を選ぶこともできる。
第1ラウンドは最初からミュンヘンを持っている皇帝軍を取りにいった。次のラウンドには康さんが農民軍を育てミュンヘンを落とす。さらに第3ラウンド、農民軍を奪った私が、ストーンRさんの猛攻を凌いで得点。その間に皇帝軍も選帝侯軍がほかで戦った結果、どちらもほとんどいなくなり、康さんがこのまま農民を取り続けることへの警戒感が広がる。そこで選帝侯軍率いるかゆかゆさんが皇帝軍と相打ちになり、両者全滅というドラマチックな幕切れでゲーム終了。皇帝軍と選帝侯軍の両方で稼いだかゆかゆさんと、農民軍の横取りで大量得点した私が同着1位。プレイ時間は3時間半くらい。
都市を落とされないよう絶妙な配置をした結果、次のラウンドでは自分が落とせなくなるというジレンマが悶えた。軍備を増強しすぎてもほかの人に取られたらおしまいなので、ほどほどに強くして、戦争でぎりぎり勝つくらいにするという匙加減の微妙さが必要なのだろう。ただ強くすればいいのではないというところが面白い。
Lieber Bairisch Sterben
K.-H.シュミール/モスキートシュピーレ(1988年)
3〜5人用/15歳以上/2〜5時間
絶版・入手難
ネット通販について
8月28日にサイコロランド、9月6日に猫のしっぽというボードゲームのネット通販ショップが相次いでオープンし、競争の激化が話題となった。現在ボードゲームのネット販売を行っているショップは全国に30店以上あり、そのうち店舗を持たない通販専門が10店ほどある。
これだけたくさんショップがある中でどのショップから買うか? まず第1に挙げられるのは品揃えの豊富さだろう。ほしいゲームが3タイトルあったとして、それが全部揃っているお店があればそこから買う。3つ揃っているお店がなければ1つは諦めて、2つはあるお店を探す。そのため、取り扱いタイトルが多ければ多いほど選ばれやすい。この点では、すごろくやとプレイスペース広島が突出している。
ショップ独自のタイトルがあるのも大きなメリットだ。マイナーなメーカー・ジャンルの作品や、ショップのオリジナル製品など、他所では買えないというものがあれば選ばれやすい。未知のゲームを常に探し続け、輸入ルートを模索し、そして和訳の手配までしなければならない上に、マイナーゆえにヒットしないリスクも抱え込むことになる。しかし未知のゲームを遊びたいという愛好者は少なくない。この点ではゲームストアバネストとテンデイズゲームズが強い。
そして注目タイトルの入荷スピードもものを言う。エッセンやニュルンベルクの新作にせよ、近年増えつつある日本語版にせよ、1日でも早く遊びたいと思っている愛好者は多い。そのため他店より早く販売すればするほど有利なのは間違いない。せっかく日本語版が出ても、すでにみんな外国語版をもっていたのでは、爆発的な売上を期待することはできないのである。
この3つはいずれも品揃えに関する事柄である。第2には価格と送料。同じものなら安く手に入るほどよい。あみあみ、といず広場、アマゾンでは、ホビージャパン系のものが格安で売られていることがある。またジョイゲームズのように、全商品を少しずつ割引販売したり、時期限定の割引セールを行ったりすることでも注目される。ほかのショップでは、送料無料ラインも気になるところだ。支払い方法も多様であることが望ましい(特にクレジットカード決済)。
第3にサイトの構成。豊富な写真や図と、ゲームの面白さが伝わる紹介文は、買うかどうか迷っているときに後押ししてくれる。あと切に要望したいのは在庫ありだけソートする機能。ほしいと思ってクリックしたら在庫切れだったり、在庫切ればかりが並んで探すのに時間がかかったりするのでは購買意欲が減退する。技術的に難しいのだろうか、在庫ありだけを表示できるところはアークライトくらいしかない。
第4に注文後の対応。これが次回も買いたいかどうかにつながる。対応の早さ、発送の連絡、梱包、欠品やエラッタの対応、ポイント制度、おまけなど。
私はそのような優先順位で購入するショップを選んでいるが、読者のみなさんはどんな基準で選んでいるだろうか?