シュピール’11:プレス日
午前11時から記者会見があり、その後別室でプレビュー。各メーカーがこぞって新作を紹介し、国内外から記者がつめかける。プレビューしていないメーカーについては、設営中のブースを回って実物を見ることもできる。
今年はどのメーカーも準備が遅いように思われた。その原因は2つあるようで、1つはシェア・シュピーレというボードゲーム製造会社の倒産、もう1つはメルツ社による前日購入の禁止通達である。
ドイツのボードゲームメーカーの多くは、自前で製造ラインを持っていない。ファイルを作ったら、あとは製造会社に外注する。ドイツ近辺でこれまでその仕事を受け持ってきたのが、カルタ・ムンディとルド・ファクトとシェア・シュピーレだったが、そのうちシェア社が今年倒産してしまったのである。『ドミニオン』を印刷していた会社で、日本語版が長らく品切れになっていたのは実はこのせいだった。これまでシェア社に頼んでいたところは全て残りの2社に集中し、その結果製造がぎりぎりになったという。
開催前日の会場は、出展者証かプレスパスがなければ入れないことになっているが、これまで入場チェックが甘かったため、割と自由に入ることができた。そのため限定品を購入してしまう人が増え、主催のメルツ社は、パスのない人の入場禁止と、前日購入の禁止を各ブースに通達した。これで前日にせっせと品物を並べる必要がなくなり、準備をのんびりとするようになったようだ。
そんなわけで荷物がほとんどない会場を回っていると、ホワッツユアゲームズ(イタリア)の社長を見つける。『ヴァスコ・ダ・ガマ』『ヴィニョス』と2年連続で話題をさらったが、今年はブース自体出していない。昨年『ヴィニョス』の印刷が間に合わなくて損失を被ったのかと思ったが、話を聞いてみるとベルリンに引っ越したという。デザイナーとのやり取りはメールでできるが、イタリア語か英語のできるテストプレイヤーが見つからなくて難航している。ゲーム作り自体を止めたわけではなくて、来年のニュルンベルクには新作を発表するという。
ドイツゲーム賞授賞式まで時間があったので、1ゲーム遊んでから会場へ。日本人以外でも結構知り合いが増えて、握手して再会を喜べるのが嬉しい。ドイツゲーム賞は、4タイトルも入賞したS.フェルト氏の独壇場。1位と3位が非ドイツゲームだったので、その分フェルト氏の活躍に期待を寄せているようだ。
プレス日は、新しい情報がたくさん得られてたいへん有意義な1日となった。
ケルンボードゲームショップめぐり
エッセンから快速で1時間、駅前にいきなり大聖堂がそびえ立つケルン(Köln)の街を歩く。ボードゲームショップめぐりが目的だったが、駅を出ると吸い寄せられるように大聖堂に入り、気がつくと2時間も経っていた。どんなに興味がなくても、ここを通過していくことはできないだろう。
1件目のボードゲームショップは「シュピールブレット(Spielbrett)」。アクセスは地下鉄「ケルン中央・大聖堂」駅から16号線か18号線で「ノイマークト」駅に行き、そこから地上に出て路面電車9号線で「ツルピッヒャープラッツ」までいくと、あとは1分ほどで着く。ケルン中央駅から歩いていけないこともないが、地下鉄と路面電車を乗り継いだほうが楽だ。
新作の品揃えが豊富なだけでなく、中古ゲームも扱っているところが特徴。価格はエッセンの中古屋さんよりずいぶん安い。『古代ローマの新ゲーム』が15ユーロだったのには驚いたが、荷物の都合であきらめ、『生きるか死ぬか(Sein oder Nichtsein, 1989)』を15ユーロで購入。
2件目はシュピールブレットからやや南、ケルン大学方面にいったところにある「ヴォルトシュピール(Wortspiel)。絵本屋さんだが、ハバやセレクタのキッズゲームのほか、アドルングなども少し置いてあった。神尾さんが『飴ちゃん工場(Drops & Co.)』を25ユーロの割引で購入。
3件目はシュピールブレットの北、路面電車9号線で1つ手前の駅にある「ハイヴワールド(hive world)」。フリーク向けのボードゲームが並び、奥にはプレイスペースがある。遊ばれているのはほとんど『ポケモン』や『マジック:ザ・ギャザリング』などのTCGだったが、『数エーカーの雪』が3箱並んでいるなど、品揃えは悪くない。
この3件はいずれも同じエリアにあり、まとめて回ることができる。ファッション店の多い中心街から外れ、飲食店が立ち並ぶくらいの立地が、ボードゲームショップにはちょうどよいのかもしれない。
4件目はデパート「ガレリア・カウフホフ(GALERIA Kaufhof)」。創業120年、全国80カ所に支店があるだけでなく、どの街でも中心街のど真ん中にあるので立ち寄りやすい。おもちゃ売り場にはボードゲームがたくさん置かれており、エッセンに行くボードゲーム愛好者が最初に見るものの一つとなっている。ケルンのガレリアは売り場が広く、フリークゲームもたくさん置かれていた。
そんなわけで今回は4件。もっと探せば本屋、おもちゃ屋などにも売り場を見つけることができるだろうが、のんびり途中ビールでも飲みながら回るのがよい。ボードゲームショップめぐりは、ドイツ観光の1つとしてなかなかよいものだと思う。