シベリア(Siberia)
天然資源の獲得競争
モンゴルの北に広がるシベリアは、針葉樹林タイガやツンドラが広がる広大な地域である。東西も南北も北海道から沖縄以上の距離があり、面積は日本国土の14倍にもなる。決して地図の図法で大きく見えるだけではない。
日本では、戦後のシベリア抑留という苦い記憶があって必ずしもよいイメージをもたれていないが、近年、資源の宝庫として注目を浴びている。天然ガス、石油、石炭、金、ダイヤモンド。この5つの資源をめぐる資源獲得競争が、このゲームのテーマだ。
前年の『バンコクの運河』に続き、エッセン国際ゲーム祭でdlpゲームズが発表した作品。生産が間に合わず、エッセン後の発売となった。資源を掘って富豪を目指す。
資源を売るまでには周到な準備が必要だ。売りたい資源があるシベリアのエリアに労働者を送り、その資源が高く売れる取引所にセールスマンを送り、その資源のアクションを行なってはじめて、収入が入る。
これらのアクションを選ぶシステムは、ランダムに引いたチップをプロットする方式。やりたいアクションがあっても、そのチップを引けなければできない。引いたチップの中で、最良の選択肢を考える必要がある。ほかの人に先を越されないように気をつけて。
アクションチップは、2種類の絵柄がついており、そのうちどちらのアクションに振り分けてもよい。ただし、アクションを発動させるには、同じ種類のアクションチップが2枚必要だ。毎ラウンド、はじめに6枚のアクションチップを袋から引いて、自分のアクションボードに配置する。
アクションはどれから発動してもよい。労働者を新たにウラジオストクに送る、労働者を合計3歩まで移動する、セールスマンを取引所に送るか移動する、チップが足りないアクションにジョーカーを送る、改良チップを取ってこれ以降1枚だけでアクションできるようにする、ダイヤを取って売る、金を取って売る、石油を取って売る、石炭を取って売る、天然ガスを取って売るの10種類。アクションを行ったら、アクションチップは袋に戻す。
理想的なパターンは、複数の労働者をいくつかのエリアに送り、資源が高く売れる取引所にセールスマンを置いた上で一気に資源を売るというもの。これなら少ないアクション数で大儲けできるが、複数の労働者を配置するまで時間がかかれば、ほかの人に先に取られてしまうかもしれない。
シベリアの資源は無尽蔵ではない。取って売ってしまうと、調査して新たに生み出さない限り、そのエリアには資源がなくなってしまう。また終盤には調査しても、ストックの資源がなければもう生み出されない。高価なダイヤや金はなくなりやすく、競争率も高いので、まとめ売りは狙いにくい。
資源のないエリアが8つになるか、ストックのない資源が3つになるとゲーム終了。持ち金勝負。
ダイヤモンドに集中した鴉さんが序盤に大儲け。私は金を狙ったが、労働者を移動させるアクションが出なくて出遅れてしまう。鴉さんはその後も、調査して採掘という生産的な方法で確実に儲けるが、私は調査せずに採掘しまくるので資源が枯渇して、労働者が返ってきてしまう。乱獲のとばっちりを食う神尾さん。結局、ダイヤがなくなった後もコンスタントに資源を採掘できた鴉さんが1位。
アクション選択も実行もあまり迷わず、ゲームの終了条件が加速度的に早まっていくのでテンポのよさが気持ちいい。それでいて考えどころはところどころにしっかり用意されている。悩みどころを確保しつつ要素を絞るというドイツゲームのスタイルは近年あまり評価されなくなったが、今もこうして息づいているのがうれしい。
Siberia
R.シュトックハウゼン/dlpゲームズ(2011年)
2〜4人用/10歳以上/60分
ゲームストアバネスト:シベリア
バンコクの運河(Bangkok Klongs)
おとなりさん、サワディーカー
去年大規模な洪水に巻き込まれたバンコクは海抜2mくらいしかなく、市内を流れるチャオプラヤー川や運河の水運も盛んである。周辺には水上マーケットがあり、観光スポットにもなっている。船がお店になっており、おみやげから軽食までさまざまな買い物が楽しめる。
ボートがひしめきあい、賑やかに商売する様子が、このゲームでも伝わってくる。ボートがほとんど移動できない中で、自分の船をいい場所に配置して高得点を狙う。
新鋭のドイツメーカーdlpゲームズが発売したこの作品は、ベルギーのジョーカー賞を受賞している。『アグリコラ』のK.フレンツが手がけたイラストが美しく、またゲーム内容も船の位置取りと、得点計算のタイミングをじっくり考えさせられる。
自分の番には、手持ちの4枚の船から1枚をボード上に配置し、その船に自分の商人コマを置く。船はすでに置かれている船に接して置かなければならないが、桟橋で囲まれた1区画には3つしか置くことができない。来る得点計算で、自分が高得点できるパターンを多く用意しておくのだ。
ときどきパラソルのついた船があり、これを置くとボード端のパラソルが進む。パラソルがいくつか進むごとに得点計算。パラソルを進めた人は得点がもらえるが、だからといってむやみにパラソルを進めると自分の体勢が整う前に得点計算に突入してしまう。どこでパラソルの船を出すかも考えどころだ。
得点計算はゲーム中に3回しかない。順番に4つの船が固まっているところを指定し、そこにある船のバスケットの数×自分の商人コマの数で得点。このとき4つの船にほかの人の船が混じっていると、その人にも得点が入るところが面白い。共存共栄、Win-Winの関係をいろいろなところに作っておけば便乗できるだろう。
得点計算が終わったところからは、自分の船を1つ取り除いて手元に置く。船を1つ取り除くことで、そのとなりの4つ1組が崩れれば得点計算ができなくなる。取り除いて得点計算を阻止したほうがいいのか、残して別の得点計算に絡んだほうが得なのか、よく考えたい。また、手元に置いた船は、積んである商品によってゲーム終了時にボーナスが入る。
そのようなわけで得点計算の順序が勝敗を分ける。先手が有利なのはいうまでもない。2回目までの得点計算は、パラソルを進めた人が先だが、最後の得点計算は得点の低い人が先。トップで最終決算を迎えると、確実に叩かれる……いや、叩かれました。
2回の得点計算で2位以下に20点以上の差をつけてトップ。逃げ切れるかと思ったが、それまでに自分の商人コマを戻しすぎたこともあって最終決算は0点。船のボーナスも振るわず、一気に3位に下がってしまった。最後にぶっちぎりで優勝したのは、あちこちに一見無駄そうな商人コマをばらまいていたtomokさん。
直接攻撃色が強くトップを追い落とすゲームだが、「得点計算をさせない」というかたちの攻撃なのですさまない。それよりもどこに船を置けばより安全に、より高得点ができるかというパズル思考のウェイトが高い。じっくり考えて、混み混みの船の中に最良の一手が見つかったときのうれしさ。水上マーケットでお宝をゲットしたらこんな気分なのだろうか。
Bangkok Klongs
M.シュレーゲル/dlpゲームズ(2010年)
2〜4人用/10歳以上/60分
ボードゲームフリーク:バンコクの運河