4年ぶりのエッセン・シュピール参加
ドイツ・エッセンで10月5~8日に開催されるボードゲームイベント「シュピール」に参加することになった。2019年以来4年ぶりで、コロナ禍を機に変わったところもある。
飛行機代はトルコ航空イスタンブール経由で往復23万円。安いものを選んだが、4年前の14万円からかなり値上がりしている。原油代の値上がり、円安、物価高などが影響しているようだ。さらにロシアのウクライナ侵攻により、ロシア上空を通ることができなくなり、時間がかかるようになった。直行便でも14~16時間(だいたい+3時間)のフライトとなる。イスタンブール経由は乗り換えありでフライト時間の合計は16時間だが、空港の待ち時間(予定では2時間、飛行機が遅れて結局5時間)があったのでかなり長い。
宿は早い段階で予約が埋まるようになった。以前だと6月くらいの予約で間に合ったが、今年は6月上旬でもはや高いところ・遠いところしか残っていなかった。AirBnBなどの民泊規制がドイツでもあって、それまで民泊していた人がホテルに殺到したらしい。幸い、現地同行する方が取っておいてくれたので何とかなったものの、前入りして泊まる宿と、シュピールが始まって泊まる宿は別で、木曜日に移動しなければならない。
入場チケットはオンラインで、アプリも使えるようになったが、今ひとつ信用できずプリントアウトしてある(係員が穴を開けるのではなく、QRコードを読み取るみたい)。前日の記者会見は変わらず10:00からだが、ドイツゲーム賞の授賞式は夜ではなく、記者会見の直後になっていた。その後16時までプレビューが行われる。ドイツゲーム賞の授賞式を兼ねた夕食会がなくなったのは残念だが、早く宿に帰って体力を温存できるのはありがたい。
この4年のうちにガラケーからスマホに替えたので、電源とWi-Fiの重要度は上がった。モバイルバッテリーはもってきていないが、Wi-Fiルーターは空港でレンタル。空港でも機内でも充電スポットはいろいろなところにあるので、コンセント変換器とUSBケーブルさえ忘れなければあまり困らない。
日本からの参加は出展・来場ともに増えているのではないかと思う。同じ日本に住んでいてもゲームマーケットでしか会えず、会ってもあいさつくらいしかできない方も多いので、この機会にゆっくりお話できたらいいなと思っている。でも地ビールが飲める居酒屋「リュッテンシャイダー・ハウスブラウアライ」もますます混んでいるだろう。
シニアのボードゲーム
(月報司法書士2023年8月号掲載)
シニアも楽しめる
ボードゲームの知名度があがるにつれて、青少年や家族だけでなく、シニアの方に紹介する機会も出てきた。公民館などの身近な場所に集まる「ミニデイサービス」、社会福祉協議会のレクリエーションやイベント、文化交流施設でのお茶飲み会、お寺で行われる法話の会などである。参加者は70~80代前後が多い。
個人差はあるが、一般的にシニアの方はルール説明を聞いて理解することが難しく、視力、記憶力、反射神経、手先の器用さに不安のある方もいらっしゃるためボードゲーム選びにはことさらに気を遣う。比較的ウケが良いのは『スティッキー』『バウンスオフ』『ベルズ』『スティックスタック』などのアクションゲーム。いずれも片手で遊ぶことができ、手が少々震えても台無しにならない。一方、『ワードバスケット』『ひらがなポーカー』などのワードゲームや、『ウボンゴ』『ナインタイル』などのパズルゲームは得意不得意が出やすいので、簡易ルールにしたり協力ゲームにしたりする。遊ぶ人に合わせてルールを自由に変えられるのはボードゲームの良さである。結果的に小さいお子さんでも遊べるゲームが多くなるが、お孫さんと遊ぶ良いツールになるかもしれない。
長い老年期の過ごし方
戦後間もない頃の平均寿命は女性が63歳、男性が60歳だったが、現在は女性が87歳、男性が80歳と急激に伸びている。60~70歳の平均余命でいうとさらに長く、男性で80代後半、女性で90代ほどになる。「現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳は若返っていると想定される」(日本老年学会)のである。
それは大変結構なことだが、これまでにない長い老いの時間をどうやって過ごすかが現代人に問われている。働くことをリタイアし、子どももすっかり大人になり、身体が衰え、大なり小なり病気をもち、友人や配偶者が亡くなっていく中で、何を生き甲斐にして長い老年期を過ごすか。未曾有の時代であるために、自分たちで考えていくしかない。
再就職、孫の世話、地域組織の役員、「終活」など、するべきことはまだまだあるだろうが、遊びは子ども時代と同様、さまざまな義務から解放されたシニアの特権である。また遊びは、老いることによって衰えがちな気力や好奇心を取り戻し、人と関わることで孤独を解消できるという点で健康法でもある。
雨の日はボードゲームを
シニアの遊びとして人気のゲートボール、パークゴルフ、ボッチャ、ペタンク、モルックなどのスポーツは、激しい運動ではない分、戦略性があり、ボードゲームに近い。散歩や旅行、寺社巡りなども定番だが、選択肢のひとつとして、雨の日や冬の季節など、外に行けない日にはぜひボードゲームを試していただきたい。ボードゲームが盛んなドイツ、イギリス、北欧諸国は、年間日照時間が比較的短い。屋外に出られない日は、ボードゲーム日和なのである。
とはいえ、どんなボードゲームを遊んだらいいか、相手をどうやって探すかというところが一番のハードルかもしれない。手っ取り早いのは、知人や家族を誘ってボードゲームカフェに一緒に行くことである。ルール説明をしてもらい、気に入ったゲームを購入すれば次からは自宅で遊ぶことができる。近くにボードゲームカフェがなければ、ボードゲーム専門店に電話やメールで相談してもよい。専門店では、遊ぶ年齢や人数に合わせておすすめを教えてくれるから、そのまま注文すれば通販で届くので便利だ。買えば遊ぶ気になるもので、付き合ってくれそうな相手に声をかけるところまであと一歩だ。
老化防止に効果あり
埼玉県に8店舗を展開する「デイサービス ラスベガス」は、「楽しくなければ続かない」という理念でゲームを楽しみながらリハビリを行う介護施設である。黒色のワンボックスカーに迎えに来てもらい、機能訓練プログラムでもらえる施設内通貨で麻雀やブラックジャックなどテーブルゲームを遊ぶ。勝敗は「パスポート」に記入され、優勝者の表彰式もある。男性の利用者が多く、要介護度の維持・改善率が高いという。ほかにも訪問介護でボードゲームを遊ぶサービスを行っているところもあった。
定期的にボードゲームを遊ぶことが認知症や脳の老化防止にいいのは、計算やパズルなどの「脳トレ」よりも、対人コミュニケーションと、モチベーションの高さによるところが大きい。そばに生身の相手がいることで意識レベルが一段上がり、本気になって喜んだり悔しがったりすることが次につながる。だから遊ぶボードゲームは、さほど頭を使うものでなくてもよい。
このことは介護が必要なシニアだけでなく、40~50代の壮年期にも当てはまる。最近物忘れが多くなったり、気力の衰えを感じていたら、リハビリ感覚でボードゲームを試してみてはどうだろうか。「脳のエネルギー消費で体重が減る」というのは迷信らしいが、たくさん喋ったり笑ったりすると消費カロリーも高まり、実に健康的である。
社会の結束を強める
団塊の世代が70代以上になり、日本人口の約3割が65歳以上となった今、シニアがマーケットを牽引する側に回りつつある。同様に高齢化が進むドイツでも、普及団体が「全世代で遊べるボードゲーム(Generationenspiel)」の認証を進めている。この認証は子どもからシニアまで、さまざまな運動神経・認知能力・身体技能に応じてチャレンジでき、みんなが楽しめるボードゲームの普及を目指すもので、呼応するようにメーカー側もコマやタイルのサイズを大きくしたボードゲームを発売している。
「全世代で遊べるボードゲーム」のロゴ
この普及団体は2020年に社会活動コンテストでメルケル首相(当時)から表彰され、2022年にはバイエルン州家族・労働・社会問題担当大臣の後援を取り付けている。国も後押ししてボードゲームの普及を促す背景には、「ボードゲームは単なる娯楽ではない」「一緒にボードゲームを遊ぶことで社会の結束が強まる」という認識がある。
この認証を受けたボードゲームで、日本語版が発売されているのは『メモアァール!』『ラマ』『宝石の煌き』『探偵クラブ』『ヘックメック』『ジューシィフルーツ』『キャントストップ』『世界の七不思議:建築家たち』『さまよえる塔』。決して簡単なボードゲームばかりではないが、ゲーム名で検索して、興味が湧いたら試してみてほしい。